表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解けない魔法  作者: ともるん
77/183

お礼

 ウルヒ王子からの豪華な贈り物は、母マリアやキースの母スザンナと妹たち、そして長期滞在のお礼としてダンの妻ヘラに送った。


 ヘラからは定期的に魔導士の館宛てに美味しそうな食べ物が届けられていた。


 少し前に届いた母マリアからの手紙には、キースの母スザンナと妹からのお礼の手紙も同封されていた。


『クリスお姉ちゃんへ 綺麗な布と宝石をありがとう。お母さんにキャロルとお揃いのワンピースを作ってもらうつもりです。宝石はもう少し大きくなったときにつけていいって言われました。また遊びに来てね。楽しみにしてます。ジェインより』


 クリスは思わず微笑んだ。


 スザンナからの手紙には、キースの小さかったときのことも書いてあった。


 やんちゃなそのエピソードに親の愛情を感じたクリスはなぜか涙が出た。


(あの人にもこんな思い出があったら違ったのかな……)


 アクセルには二度と会いたくなかった。


 しかし、記憶の中の孤独な少年には手を差し伸べたくなる気持ちがあるのも事実だった。



          *



「ジャン、こっち向いて」


 町から帰ってくるなり、マギーはクリスの部屋に入ってきた。


 そして一着のドレスをクリスの体に当てた。


「えっ……」


 驚いているクリスの横で、マギーは満足気だった。


「やっぱり。ジャンに似合うと思ったんだ」


「なに、これ?」


「ジャンがくれたウルヒ王子からのプレゼントの生地よ。それでドレスを作ってもらったの」


「……」


 豪華な刺繍生地で作られた淡い水色のミニスカートのドレスだった。


「着てみてよ」


「でも……」


「たまには女の子らしい服も着てみたいでしょ?」


 マギーはすごく楽しそうだった。


 せっかくのマギーの好意を無駄にするのは……と思ったが。


「待ってるからね」


 そう言ってマギーは部屋を出て行った。


 クリスは着てみたものの、やっぱり恥ずかしくてなかなか部屋から出られなかった。


 やっと食堂に行ってみると、エズラやヘンリーの声が聞こえた。


 そのとたん、気持ちが萎えた。


 なぜなら、マギーが作ってもらったドレスは胸の辺りに透ける刺繍があしらってあって、とてもセクシーだったからだ。


(こんな服着たことないよ……)


 やっぱりやめよう、そう思って部屋に帰ろうとしたところをマギーに見つかった。


「や~ん、可愛い!!」


 とたんに、みんなの視線を感じた。


「見て~! 妖精みたい」


「……」


 エズラもヘンリーもポカーンとした顔をしていた。


 いつも少年のような恰好をしているクリスが、絵画から飛び出てきたような神秘的な天使のような雰囲気をまとっていた。


「は~い、あんたたちはここまで!」


 マギーはショールをクリスにかけた。


「本命に見てもらわないとね」


「……?」


 マギーは外にクリスを連れて行った。


「……!!……」


 扉を開けると外でカインの講義を受けているキースがいた。


「……」


 カインもキースもエズラたちと同じような反応を示した。


 特にキースはマギーがクリスにかけていたショールを外すと顔を真っ赤にした。


「可愛いでしょ」


「……」


 キースもクリスもお互い赤面した。


 マギーはそっとカインの腕をとって「ちょっと休憩しましょ」と連れて行った。



「あの……キース?」


「う……ん」


 キースは恥ずかしくてまともにクリスを見ることができないようだった。


「マギーが作ってくれて、このドレス……」


「そう……なんだ……」


 ミニのスカートからはクリスの足が見えて、キースはドキドキした。


「……キースのお母さんやジェインから手紙をもらったんだけど、見る?」


「あっ……ありがとな。なんか色々もらっちゃったみたいで」


「ジェインとキャロルのお揃いのワンピース、可愛いだろうね」


「……うん」


「キース? どうしたの?」


「まともに見れない」


「えっ……?」


「クリスのこと」


「……」


 キースは大きく息を吐いた。


「俺だけのためだったら嬉しいけどな」


「……」


「なんてね。待つって言ったのにな。こんなクリス見てると誰かにとられちゃいそうで、焦る」


「キース……」


「頭冷やしてくるわ」


 そう言ってキースは館の裏の井戸の方へと歩いて行った。


 クリスはその間に急いで着替えに行った。


 キースが戻ってくる頃にはいつもの魔導士のローブを身にまとっていた。


「えっ……もう着替えたの?」


「うん。キースに見てもらったからいいの」


「……なんだよそれ……。またそんなこと言って」


「キース……。人を好きになる気持ちはまだわからないけど、キース以外の人を好きになることなんてないよ」


「……」


「それだけはわかる」



 とっさに、なんであんなことを言ったのか、クリスは自分でもよくわからなかった。


 だけど、女の子のクリスも自分も、キース以外の人を好きになるなんて考えられなかった。


 クリスの言葉をどう捉えていいのかキースはわかりかねているようだったが、最後に笑って言った。


「……わかった」


(人を好きになる気持ちがまだわからない、か……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ