揺れ動く心
『……安心できるのはキースだけなのに……』
(あれって、どういう意味なんだろう)
キースは宿舎の自分の部屋のベッドに横たわりながら昼間の出来事を思い返していた。
(少なくとも俺、好かれてんだよな? 他の男よりも)
「でも、わかんねぇ……」
(俺以外の男に触れられたくない、って告白だろ? なのに、なんでそれが友情になるんだろう……)
いくら考えてもキースにはクリスの気持ちがわからなかった。
(クリスってなんか他の女の子と違うんだよな……まだ子供っていうか)
「……!!……」
(そうか……クリス、ひょっとして恋愛感情がわかってないのか……)
「15歳ってそんな幼かったかなぁ……」
キースは一人部屋だったので、独り言も多かった。
(じゃあ、じゃあ、チャンスあるのかな。いや、待て。期待してると裏切られるからな。でも……)
「待つしかねぇよなぁ……」
(あと何年待たされるんだろう)
*
「おはよ。今日もよろしく」
館の庭に現れたキースはいつも通りだった。
「……おはよう」
クリスは照れてキースの顔がまともに見れなかった。
「ごめんな、この前、変なこと言って。忘れていいから」
「えっ……」
「お前が安心するなら当分まだ友だちでいる。でも、俺あきらめないから。恋人候補」
キースは不敵に笑った。
「あっ……うん」
「なに、それ? いいってこと?」
「あっ……」
「フッ」
(しゃあない、待つとするか)
クリスは安心して涙が出そうだった。
「ありがと、キース」
「ん?」
「そばにいてくれて」
「……はぁ」
キースは頭をポリポリかいた。
「キース?」
「だから、そういうとこ。思わせぶり」
「……」
「俺、そういうの弱いから」
「……うん」
「でも、クリスの言葉は俺の力になるんだ。クリスのためなら……って思える」
「……」
顔を赤らめているクリスを見て、キースは内心(可愛いなぁ)と思った。
そのとき、館の中からヘンリーを注意するマギーの声が聞こえた。
キースとクリスは同時に笑った。
「……そういえば、マギーも一緒に暮らしてるんだって?」
「うん」
「良かった。その方が安心する。女の子がクリスだけってなんか嫌だったから」
「……」
「じゃあ、そろそろ練習するよ」
「うん」
クリスはキースが傍にいるだけで安心だった。
キースは気づいていないのかもしれなかったが、彼のオーラがいつでもクリスを守ってくれているのを感じていた。




