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解けない魔法  作者: ともるん
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贈り物

「これらの品々が、元女医見習いクリス宛に届いた」


「えっ……」


 豪華な色合いのたくさんの生地や、キラキラ光るネックレスやブローチなどの装身具……それらには、「末永くお幸せに」というウルヒ王子からのお祝いの言葉が添えられていた。


「……」


 どう見ても、ウルヒ王子が「クリスのお里下がり=お嫁に行った」と勘違いしているような内容の品物だった。


「もらっておけばいい」とカインは言った。


 お礼状はカインが送ってくれるというので、クリスも短いメッセージを添えた。


『ウルヒ様。素敵なお祝いをありがとうございます。大切に使わせていただきます。ラビニアさんと楽しい家庭を築いてくださいね。あなたの幸せをお祈りしています。クリスより』


 クリスは知り合いの女性たちに配ろうかな?と考えていた。


 母マリア、キースの母スザンナや妹たち、ダンの奥さんのヘラ、そしてマギー。


 でも一つくらいは王子の気持ちを汲んで、もらうことにした。


 クリスは深い緑色のブローチを選んだ。


 翡翠を手にしているクリスを見てカインは、「それは魔除けにいいから身につけておくといい」と言った。




          *




「その服、いい加減に洗ってください!」


 弟子たちが食事用のテーブルで休憩していると、そこにカインが現れた。


 すると待ってましたとばかりにマギーが放った言葉だった。


 マギーのその言葉にカインは「まだ着れる」と答えた。


「まだ着れるとかそういう問題じゃなくて、嫌なんです!」


「……」


 その場はシーンとなった。


(カイン先生にそんなこと言えるマギー……強い)


 そう思ったクリスだった。



          *



「薬草についてはジャンが詳しいから聞くといい」


 カインは魔導士の館の庭で、キースに魔導書を使っての講義を行っていた。


 クリスはカインの許可をもらってキースと一緒にその講義を受けていた。


 ダンの家では実践が主だったので、魔導書の講義に興味があったからだ。


 講義が終わると、クリスはカインから魔導書を受け取り、それを本棚に直した。


(あっ、これも鍵を開けられるんだ)


 はじめは魔導書の本の鍵は先生にしか開けられないと思っていた。


 しかし、時おりヘンリーが本棚から魔導書を取り出して触っているのを見て、魔導士のレベルに合わせて本が開くことを知った。


 クリスはヘンリーのようにカインの許可なく魔導書を勝手に見る勇気はなかった。


 だから、この講義で1冊1冊元に戻すときに本の帯の鍵を触って開くかどうか試していた。


 今のところ、すべての魔導書の鍵は開いた。


「クリス、時間のあるときに薬草について教えてよ」


 キースは宿舎へ帰る前にそうクリスに声をかけた。


「うん、いいよ。実際にどのように生えてるかも見た方がいいでしょ?」


 クリスは冬の薬草についてキースのために伝授しようと思っていた。

 

「ありがと、助かる」


 そこへマギーが通りかかった。


「ねぇ、宿舎へ帰る前にちょっと寄らない? ジャンのお母さんからまたお茶が届いたの。ケーキを焼いたから一緒にお茶しましょう。カイン先生もエズラもヘンリーもいないけど」


 カインは王宮に呼ばれ、エズラとヘンリーは遠征で不在だった。


 マギーに誘われて、キースは初めてじっくりと魔導士の館に足を踏み入れた。


「意外と広いのよ。お風呂まであるんだから」


 そのマギーの言葉にキースの表情は強張った。


「風呂……?」


 クリスは蒼白になった。


「あっ、ねぇキース。こっち座りなよ」


 クリスはキースに椅子に座るようすすめた。


「風呂って……クリスも入ってるのか?」


「……」


「当たり前じゃない。女の子なんだから。毎日入るわよね」


 マギーが言った。


 クリスはキースを見るのが怖かった。


 黙っているのがさらに怖かった。


「……そっか」


 キースがショックを受けているのがわかった。


 だからクリスは慌てて言った。


「でもね、ほら。カイン先生は王宮に行くこと多いでしょ? エズラもヘンリーも遠征が多いから、基本留守番が多くて……。入らないことも多いよ」


 お茶を飲んでいる間もマギーばかりしゃべって、キースは聞いていることが多かった。


 そんな様子を見てクリスは気になったので、帰りがけキースに声をかけた。


「キース……。あのね、ダン先生がカイン先生に、浄化のために禊感覚でお風呂に入る方がいいってアドバイスしたみたい。あのことがあったから……」


 そう伝えた。


 キースは少し考えたあと、「わかった」と言った。


「ごめん、気にしすぎだよな。小さい男だと思っただろ?」


「……」


「じゃ、またな」


 キースの後ろ姿をクリスは複雑な気持ちで見つめた。


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