告白
「マギー、実は隠してることがあるんだ」
カインは古代語の仕事の途中でマギーに話を始めた。
「えっ?」
(もしかして先生、本当は結婚されてるとか……)
「実は……」
ゴクリ……。
「ジャンは……女の子なんだ」
「えっ」
「今まで男性だと偽っていたけど」
「……」
「女性は魔導士になれないってこと君も知ってるだろ?」
「うそ」
「だから、彼女は男装して魔導士になってる」
(男装……)
そういえば、とマギーは思った。
ジャンがずっと仮面を被っていたこと。
あまりしゃべらなかったこと。
15歳の男の子にしては華奢な感じがしたことなど。
すべて合点がいった。
「……すごい。そんなこと本当にあるのね」
「もう一つ、言ってないことがある」
(えっ、まさかカイン先生の結婚相手がジャン……ってことないわよね?)
「……ジャンは……」
「……」
「クリスなんだ」
「……」
「ジャンはクリスなんだ。君もよく知ってる」
「あの……」
「女医見習いのクリスを覚えてるだろ?」
「……」
「あのクリスがジャンなんだ」
「えっ……はぁ?」
「混乱するのはよくわかる」
「ちょっと待って先生。だって……。その、あの……えっ!?」
「すまない、混乱させて」
「だって、先生いいの? クリスってウルヒ王子のお手つけ……」
「いや、それなんだが」
マギーの頭の中ではウルヒ王子に寵愛されているクリスの姿が思い浮かんだ。
「先生……可哀そうに」
「ん?」
「ウルヒ王子に奥さんを寝取られたってことでしょ?」
「……」
「こんな悲劇ってある? こんな……」
「マギー……」
「クリスもクリスだわ、先生って人がありながらウルヒ王子と毎晩……」
「人の話を聞いてるか、マギー?」
*
「魔導士って隠密的な仕事もするのね~。知らなかった」
マギーは帰り支度をしながら、さっきカインから知らされた重大な事実について、エズラとヘンリーに感想を語っていた。
ジャンが女の子で、しかも自分が知ってるクリスだったなんて!
それを何度も何度も反芻しながら、最終的には魔導士たちの隠密行動に興味を持ったようだった。
「まぁね。主君に仕えてる城つき魔導士だから俺たち」
ヘンリーはマギーが用意した食事をつまみ食いしながらしゃべった。
「でも、私なら耐えられないな……ここじゃ、お風呂もまともには入れないんでしょ?」
マギーは首を振った。
「いや、それがさ。なんか作るらしいんだ。カイン先生が言ってた」
エズラは浴槽をどこに置くか迷ってると話しだした。
「へぇ……。それなら、台所横の物置部屋を掃除したらいけるんじゃない? たいしたもの入ってないもの」
「あそこかぁ……」
「クリスが帰ってくるまでに作ってあげたら喜ぶと思うわ」




