禊
「クリス、ちょっといいかしら?」
ヘラが部屋に入ってきた。
「あら、それちょうど良かったわね」
ヘラはダンの家に置いてある自分の服の中から、小さくなって着られなくなった服をクリスの体に合わせて縫い直していた。
淡い色の柔らかい生地でできたワンピースはとてもクリスに似合っていた。
(私とダンにも子供がいたら、こんな感じだったのかしら?)
ヘラはそんな風に思った。
「これ、伸縮性のある生地を輪にして縫ってみたの。あなたに合わせてあるから使ってみて」
ヘラはクリスがいつも胸に巻いてある布は着脱が面倒ではないかと思い、試作してみたのだと言う。
「城に帰ったら、また男の子のフリをし続けるんでしょ? それだと、上から被るだけだから楽よ」
「ありがとう、ヘラ」
「それと、カイン先生が来られたときに相談してみたんだけど、お城の魔導士の館にも浴槽を設置したらどう?って」
「えっ……」
「井戸が裏にあるんでしょ? ダンが水源が近くなら、魔法で浴槽に水を溜めることができるって。もちろんお湯に変えることもできるわ。ダンが禊の感覚でお湯に浸かる方がいいって」
ダンはヘラに詳しくは伝えていなかったが、クリスにアザが残ってる以上、アクセルとの繋がりは絶たれていないのを心配していた。
その影響力を弱めるには日々の心身の浄化に頼るしかない、そう考えたのだった。
*
キースは平日の何日か、数時間から半日ほどカインの指導を受けることになった。
同じ城内なので騎士団の宿舎から通うことになっている。
「今日からときどき、こちらでお世話になります。キースと言います」
キースはカインの紹介を受けて、兄弟子たちに挨拶をした。
「よろしく、エズラだ。ジャンの幼なじみなんだって?」
「ヘンリーだ。君デカいな。まだ10代だろ?」
エズラとヘンリーは黒魔導士からジャンを救った新入りを興味深く見つめた。
彼らはお互いに握手を交わした。
「……(こいつらがクリスと一つ屋根の下で)」
「……?……」
ヘンリーもエズラも、キースがクリス絡みになると豹変することを知らなかった。
「……よろしく……お願いします……(クリスに何かしたら許さねぇ)」
「……ハハッ……(なんだろ、この殺気みたいのは)」
エズラとヘンリーはキースの気迫を感じて顔を見合わせた。




