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ため息
クリスは毎日、ダンの家に通うことになった。
それを聞きつけたのかキースがしつこくクリスの行く手に現れた。
「なぁ、何しに行ってるんだよ。あんなおっさんのとこに」
「……」
キースの言い方がいやらしいので黙っていると。
「なに怒ってるんだよ。怒りたいのはこっちだよ。人の気も知らないで」
完全に女性を口説きにかかってる時のキースだ。
クリスは思わずため息を漏らした。
「なんだよ。俺、もうすぐ城に行くんだぜ。会えなくなるっていうのに。なぁ」
「キース。ねぇ。友だち、だよね?」
「なんだよ急に。友だちって」
「だって、小さいときから」
「そんな顔して言うなよ。俺にどうしろって」
思わずクリスの腕をつかんだキースはそのまま自分の体に引き寄せた。
「やめてってば!」
今度はキースがため息をついた。
そしてそのままクリスを置いて去って行った。
(どうしよう。どうしたら)
残されたクリスは途方に暮れた。