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ダン
クリスは母から託された手紙を持って町はずれの一軒家にやってきた。
(古い家だな……)
あまり手入れが行き届いていないその家は今にも崩れそうだった。
(ほんとにここ?)
「あの……」
ドアノブに手をかけたら力も入れていないのに勝手に扉が開いた。
(入っていいのかな)
「何も盗むもんはないぞ」
「……!!……」
「ハハッ、驚いて声も出ない感じだな」
現れたのは髭が伸び放題のおじさんだった。
「あのっ、母からこれを……」
クリスは恐る恐る手紙を渡した。
男は手紙を受け取るとすぐに開封した。
「ん? マリアの娘か」
じろじろとクリスを眺めた。
「どうりで美人さんだと思った」
男は手紙の内容を理解するとニヤニヤした。
「修行ねぇ……。男装してまで魔導士になりたいってどういう理由があるんだい」
「それは……」
「まぁ、いいや。条件として家の仕事もやってもらうがいいかい? 見ての通り、荒れてるもんでね」
「はい」
「僕の名前は聞いてるだろうが、ダンだ。よろしく」
「ぼ……私はクリスです。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
「じゃあさっそく、掃除してもらえる?」