ヘラの考え
「まだうっすらと手首のアザが残ってるってことは、あきらめてないってことよね」
ヘラはキースがクリスの傍で眠ったのを見計らって、ダンに話しかけた。
「しかし、相手が貴族とあっちゃ、そうそう手が出せないな」
「そんなの簡単じゃない。要はクリスに手を出させなかったらいいのよ」
「というと?」
「クリスが誰かのものになればいいのよ」
「いや、それは……。まだ15だぞ。マリアにだって何て言えば……」
「魔導士なら肉体的な交わりなしでも交感ができるって、あなた言ってたじゃない」
「……」
「本で読んだけど、光の感応魔法なら、あいつらみたいに奪うだけじゃなくて、お互いのエネルギーを交感し合うんでしょ? それなら減らないし、疲れないし、逆に元気になるんじゃない? 闇のエネルギーを寄せつけないと思うわ」
「しかし……よっぽど信頼している相手でないとクリスの方が受け入れられないと思うぞ」
「そこなのよね……いい相手いないかしら。もちろん、あなた以外でね」
「……」
*
「先生、どうしたんですか、そんなため息をついて。何か心配ごとでも?」
「勝手に部屋に入ってくるな、マギー。ノックくらいしろ」
「あら、ノックはしました。……先生、悩みごと?」
「君には関係ないだろ」
カインの館に今日はマギーが通っていた。
「エズラもヘンリーもジャンもいないし、先生しか話相手がいないんですもの」
「だから弟子たちがいない間は休んでもいい、って言っただろ」
「だって……先生が寂しいかも、と思って」
「いや、大丈夫」
「ご飯を一人で食べるの寂しくないですか?」
「全然」
「……私は寂しいです!」
「……」
「そうだ! いいことを思いついたわ」
カインは嫌な予感がした。
「ランチだけでも一緒に食べません? それがいいわ」
「マギー、人の話を聞いてるのか?」
いちいち感情を乱してくるマギーにカインはイライラした。
「君がいると冷静でいられなくなる」
「あら良かった。カイン先生にも感情があって」
「……」
「エズラたちがいない間は私が一緒にランチのお供をしますね」
このところ、カインはこの20歳も年下の女性に振り回されっぱなしだった。
「じゃあ、さっそく今日から♪」




