救出
クリスの上半身ははだけ、白い首すじからは血が流れていた。
牙のあとがくっきり残っていた。
「クリス! クリスしっかりしろ!」
「キース……」
(頭がクラクラする……。力のコントロールができない)
クリスを抱きとめるキースは苦しそうな表情をしていた。
クリスは感応魔法によって無防備な状態になっていた。
何をされてもかまわない……そんな気持ちにさえなっていた。
しかしキースは自分のマントをクリスの上半身に巻くと、抱き上げた。
クリスを大事そうに抱え、乗ってきた馬にまたがった。
クリスは薄れゆく意識の中で、キースが必至に我慢してくれているのを感じていた。
「キース……ありがとう……」
キースの腕に抱かれ、うるんだ目で彼を見上げるクリス。
「そんな目で俺を見るな……」
キースのそんな言葉でさえ、なぜかホッとした。
「……キース……怖かったよ……」
クリスは震える手で必死にキースの服をつかんでいた。
キースは深い息を吸って、クリスを抱く腕に力をこめた。
「………」
急に静かになったので、見るとクリスは眠っていた。
自分の腕の中で安心して眠るクリスを見て、キースは切ない表情をした。
「キース! 間に合ったか!」
そこへダン夫妻が馬に乗って現れた。
「クリスは……クリスは大丈夫か!」
「それが……」
キースは腕の中で眠っているクリスを心配そうに見つめた。
ダンは慌ててクリスの元に近寄った。
「致命傷ではない、大丈夫だ」
ダンはクリスの傷を見て言い、近くの猟師小屋の場所を教えた。
「そこにいて。後で合流する。僕たちには他にやらなきゃいけないことがある」
そう言って屋敷に向かおうとするダンに、キースは言葉をかけた。
「騎士を二人置いてきてしまった。まだあの屋敷の近くに奴がいるかもしれない。足を負傷してるはずだから遠くへは行けないはず」
「わかった。騎士たちのことは心配するな」
*
別邸に無理やり入っていった同僚のキースに、唖然としていた二人の騎士はどうすべきか迷っていた。
しかし、中からとんでもない音がしたので、さすがに心配になり、屋敷内に入ろうとした。
そのときキースが腕に負傷者を抱えて出てきた。
「えっ……女の子?……」
二人の騎士は目の前で何が起こっているのかわからなかった。
キースがあっという間に乗ってきた馬に、抱きかかえている少女とともに去ったので、中で何が起こったのか確かめるためにも屋敷内に突入した。
「なんだ、これは……」
彼らは二階の部屋に入ったとたん、言葉を失った。
悪魔的な儀式に使われている屋敷だというのは一目瞭然だった。




