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解けない魔法  作者: ともるん
43/183

正体

 クリスは気分が悪くて仕方がなかった。


(吐きそう……)


 手足に力が入らなかった。


 アクセルは何も言わずに、クリスがまとっていたローブを外して、そのまま床に落とした。


「魔導士が身につける物には力が宿り、その者を守るそうだ」


「……」


 フラフラになっているクリスを、アクセルは無理やり二階に連れて行った。


 アクセルが近づくと一つの部屋のドアが開き、中に入ると自然と閉まった。


「嫌だ……離して!」


 そうクリスが言ったとたん、アクセルは腕を離した。


 勢いでクリスは床に倒れ込んだ。


(何この模様……)



 そのとき初めて、クリスは床に描いてあるのが魔法陣であることに気づいた。


「……!!……」


(なぜ……。まさか……)


 次の瞬間、クリスの被っていたマスクは音もなく外れた。


 アクセルはそれを拾って言った。


「古代魔法か……。このマスクはどこで手に入れた? お前の物なのか?」


「……」


「そうか……あの城魔導士か。お前の師の名は何て言う?」


「……」


「まぁ、どうせ偽名だろうがな」


 アクセルは部屋のドアを開けて、マスクを外に放り投げた。


「この屋敷では古代魔法など役に立たないぞ、女魔導士よ」


「……!!……」


(アクセル子爵が黒魔導士……エネルギーバンパイア……)


「お前にはもっといいものをやろう」


 アクセルは胸ポケットから何かを取り出した。


「これを知ってるか?」


 手にしていたのは、装飾性の高い腕輪だった。


 鈍い光を放つ、緑や赤や青といった石がはめ込まれていた。


いにしえの時代に使われていた儀式用の物だ。これに俺がある術をかけた。はめたら最後、自分の意思では外せない。そして主が呼べばいつでも戻ってくる……どこにいてもな」


 そう言って、その腕輪をクリスにはめようとした。


「……!!……」


 クリスはとっさにアクセルの手を振り払った。


 カラン! ……カラカラカラ……


 腕輪は床に落ちて転がり、部屋の隅の壁に当たって止まった。


「……フッ」


 アクセルは笑みを漏らした。


「先にそのエネルギーをいただこうか。少しは大人しくなるかな」



          *



 屋敷の外で待機させられていた騎士たちは、マントをはためかせて恐ろしい勢いで馬を走らせてきたキースを見て驚いた。


「クリス……ジャンはどこに!?」


「あっ……中に……アクセル子爵と。どうしたキース?」


 キースはその問いには答えず、まっすぐ屋敷の入口に向かった。


「おい、キース! 待機してろって言われたろ!」


 キースは仲間の声を無視して進んだ。



 バーン!!



 もの凄い音がして玄関の扉が開いた。


「えっ……」


 屋敷の扉はキースが触れる前に勝手に開いたように見えた。


 キースが制止を振り切って中に入っていったので、見張りの騎士たちは(伝令か?)と勘違いをした。

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