別邸
別邸ではなぜか門の前にアクセル一人が立っていた。
「子爵様お一人……?」
同行の二人の騎士も当惑を隠せないようだった。
アクセルを見たとたん、クリスはヘビに睨まれたカエルのような気持ちに襲われた。
(やっぱり、なんだか苦手だな)
マスクごしにそう思った瞬間、アクセルがクリスを見たので心臓が高鳴った。
(まるで心を見透かされてるみたい)
アクセルと騎士たちの間で言葉による挨拶を交わしたとき、アクセルはクリスにだけ手を差し出してきた。
(えっ……)
しょうがなく、握手を交わそうとするクリス。
「あっ、申し訳ありません」
しかも、アクセルが左手を出したので、慌てて右手から左手にかえて握手をした。
「……!!……」
ぞっとするほどアクセルの手は冷たかった。
(どうしたんだろ。強く握られたわけでもないのに、手がじんじんする……)
*
「どうなってるんだ!!」
何がなんだかよくわからないまま、クリスが危険だと言われてキースは勢い馬を駆けさせてクリスの後を追った。
ダンに言われたことが頭の中をグルグルしていた。
『クリスは男装してジャンと名乗ってた』
『女は魔導士になれないからだ』
(なんでクリス……魔導士になんか……)
『カインからクリスが黒魔導士に狙われていると』
『クリスが危険だ!』
(……黒魔導士……)
キースはさらに馬を飛ばした。
(ジャンがクリスだったなんて……なんで俺は気づかなかったんだろう)
(なぜクリス……男装なんか)
「……」
そのとき、これまでのクリスの言動がよみがえった。
『友としては見てくれないの?』
『キースみたいに強くなれたら認めてくれる?』
(クリス……なんでそんなこと!)




