アザ
「どうした? 気分でも悪いのか?」
そうキースに声をかけられてクリスはハッとした。
「あっ、いや……」
「子爵との待ち合わせ場所までもうすぐだ」
彼らは大きな一枚の岩でできた<精霊岩>と呼ばれている古代遺跡を目指していた。
「はい」
そう言ってクリスは乗っていた馬の手綱を握りしめた。
(どうしたんだろう。なんだか体に力が入らない)
『……エネルギーを少量ずつ盗んでいく……』
(もしかしてこのアザのせい……?)
*
クリスからの伝書を受け取ったカインは、自ら馬を駆ってダンの家に来た。
「ついにエネルギーバンパイアが……」
ダンは深い息を吐いた。
その場に同席していた妻のヘラは「でも、なぜ今ごろ?」と聞いた。
「クリスが一人になるのを待ってたのかも。今までカインや他の弟子たちの傍にいたから、下手に印をつけて警戒されるのを避けたんだろう」
妻に向かってそう言ったダンは、すぐにカインの方に向き直った。
「どうする?」と聞くダンに、
「君に頼みがある。私の代わりに城に戻ってくれないか」 そうカインは言った。
「何言ってるんだ」
「君しか頼める者がいない」
「……」
「私はこれからクリスの元に向かう」
ダンはカインの肩に手を置いた。
「気持ちはわかるが、君は行っちゃいけない。これは罠かもしれない。城魔導士を城から引き離すため、もしくはおびき寄せるために」
「……」
「万が一、君が敵の手に落ちたら、国の情報が他国に渡る危険もある」
しかし、本当の所は、カインの力が闇の勢力に利用されるのを恐れていた。
「僕が行く。それならいいだろ?」
ダンの言葉に最終的にカインは折れた。
「すまない……」
すぐにでも出発しようとしたダンに、カインは自分が乗ってきた馬を貸す、と告げた。
「そうか。妻を同行していいか? 彼女もこの件のことを知ってる理解者だ」




