マギー
こうして、マギーはカインの館で働くことになった。
(うわっ……なんだかカビくさそうな館……)
カインの館を初めて見たときのマギーの感想である。
縁談の話や、貴族の館で働く話もあったがどれも断った。
(ウルヒ王子が15歳。私も同じ年に王子の後宮に女官として入って、あっという間に10年。なんだかんだ楽しかったな……)
マギーは城内に響く騎士たちの練習の声にハッとした。
(私、けっきょく城で働くのが好きなのよね。騎士たちとの恋愛の妄想や、王宮内のゴシップも楽しいけど、でも一番は……)
マギーは城内の緑溢れる木々や建物の装飾が好きだった。
古い時代の王がデザインした庭や、建物がそのまま残っていた。
(ここの雰囲気が好き。よその土地へ行ったらきっとホームシックになるだろうな)
後宮では帽子を被っていたのであまり目立たなかったが、日に当たるとマギーの赤毛が燃えるように透けてみえた。
肌は対照的に恐ろしく白かった。
*
マギーはカインの館に来てそうそう、全部の部屋の窓を開けた。
「なるべく天気がいいなら一日一回は全部の部屋の窓を開けること。カイン先生も含めて個室は自分たちで掃除してください。私は主にキッチンと食卓と居間と貯蔵庫を管理します」
そう言い放ったので、カインの館の住人たちは押し黙ってしまった。
「あと、替えのシーツを洗っておきますから、自分で替えてくださいね。枕も天気のいい日には部屋の窓からでいいから干して……」
「なんかすごいのが来たな……」
エズラはマギーが帰るなり言った。
「でもさ、食事も用意してくれるって。週三回だけど」ヘンリーが言った。
マギーは料理も得意だったので、その日に在宅する者のために昼食と夕食の用意をしていってくれることになった。
『買い物リストを記入しておいてくれたら、それを預かって、今度来るときまでに買い物を済ませておくわ。そしたら、時間が短縮できるでしょ?』
掃除や買い物や色々な用事の手間が省けるので、弟子たちは助かったと思った。
「ちょっとうるさいけどさ、いい人だよな」
ヘンリーは自身の料理を食べる機会が減ってホッとしているようだった。
カインは、マギーが館に来ない日にも買い物を行ってくれるというので、(給金を増やすべきか)と考えた。




