表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解けない魔法  作者: ともるん
31/183

夜祭り


「おい、出かけないのか?」


 そう言われてキースはため息をつきながら重い腰をあげた。


「ハァ……」


「キース、お前その帽子似合ってないぞ」


「うるせぇ」


 その帽子は以前、伯母が手作りしてくれたものだった。


 同僚の言う通り、男っぽいキースには似合わない可愛い帽子だったので今まで被ることはなかった。


 その伯母が遠征中に亡くなり、実家に戻ったときにその帽子を持って来た。




 城下町は各所に灯りが燈されていた。


 出店もあちこちに出て賑わっている。


「そこのお兄さん、お花はいかが? 彼女へのプレゼントとか」


 キースは首を振って、仲間と共に噴水広場にやってきた。


 そこでは音楽が奏でられ、男女が楽しそうに踊っている。


 キースの連れはみんなそこで初めて会った女性たちに話しかけて、一緒に踊る者もいた。


 キースは「ここから見てる」と言って噴水のへりに腰かけた。


 小さな男の子がはしゃぎまわって転倒して、親らしき人が手を差し伸べていた。


(あれくらいの頃、よく伯母さんに可愛がられてたな……)


 城へ旅立つ前、会いに来た伯母さんは少し痩せたように見えた。


『次の休みには必ず遊びに来てね!』そう言ってた。


 でも、その約束は果たされなかった……。




 どのくらい経っただろうか。


 ボーっと眺めていたら、パタパタと足音が近づいてきた。


(えっ……)


「ごめん、手紙が遅れて届いて……返事が間に合わないと思って」


 コートをまとった少女が息せき切らして立っていた。


 キースは思わず赤面した。


「クリス……」


「ここだって、騎士の人たちに聞いて」


「ああ……」


 キースは言葉に詰まった。


「もしかして誰かを待ってるの?」


 クリスはひょっとして待ち合わせの最中かと思って焦った。


 次の瞬間、キースは笑った。


「まさか……来てくれるとは思わなかった」


「……」


 あまりのキースの笑顔にクリスはドキリとした。


(いいよね、今日くらい。元のクリスなら、きっとキースを喜ばせてた)


 途中、へべれけに酔ったヘンリーとすれ違ったので、クリスは心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。


 しかしヘンリーは少女姿のクリスには気づいていなかった。


(エズラも彼女とどっかにいるんだよね……気をつけないと)



 夜が更けてくると、あちこちで恋人たちがイチャつき始めた。


「……」

「……」


 クリスはキースが手をつないできたらどうしようと思っていた。


(変な雰囲気になったらヤダな……)


 緊張していたそのとき。


「……!……」


 キースは自分の帽子をクリスに被せた。


「寒そうだ」


「えっ、でも……」


 伯母の帽子はクリスにとても似合った。


 そのとき、花火が上がった。


「今日はありがとな。明日からまた頑張れる」


「……」


「あ~弟や妹たちにも見せてやりたかったな、花火」


「……」


 クリスは「来て」と言って、キースの手をとった。


「……!……」


 クリスはキースを花火がよく見える場所に連れて来た。


「来年、ここにみんなを連れて来たら?」


 そのとき、まだ手をつないでいたことに気づいて離そうとしたクリスだったが。


「キース……?」


 突然、彼に引き寄せられたクリスは身構えた。


(えっ……)


 キースはクリスのおでこに軽くキスをした。


「……」


「もう帰ろっか。家まで送ってくよ」


「あっ、ううん。大丈夫。馬車が迎えに来てくれることになってるから」


 とっさに嘘をついた。


 キースがあまりにも嬉しそうにしてるので、クリスは手を離すことをあきらめた。


(いいよね……今夜くらい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ