母マリア
「おかえりクリス、遅かったじゃないか」
キースは城下町にあるクリスの家、薬草専門店に彼女(?)を送ってきた。
父は女の子になってしまったクリスに驚いた様子もなかった。
それはキースの態度を見てうすうす予想していたことだったが。
「マークおじさん、お久しぶりです」
「やぁ、キースか。またでかくなったな。マリア、キースが来てるぞ」
「あらキース……に、クリス……?」
「マリアおばさん、こんにちは」
薬草棚の整理をしていたクリスの母は我が子を見て目を丸くした。
「ちょっといらっしゃい」
クリスはそのまま店の奥に連れられて行った。
「じゃあ俺はこのへんで」
キースはあっさりと店を出て行った。
店の奥では親子が無言で対面していた。
マリアはため息をついてまじまじとクリスを見つめている。
「あの……母さん……」
「あの森に行ったのね」
「……」
「そしてあの池で何かあったのね」
「……」
もう一度、マリアは深いため息をついた。
「一目見て呪いをかけられているのはわかったわ。でも、どんな呪いを受けてるの? そしてそれを解く方法は教わった?」
母にも娘だと思われているのか。
クリスは一部始終を母に語った。
「……そう」
「……」
「友情……そして、あなたを女の子にした、と」
その時、店の方から「おーい、手伝ってくれ」というマークの声がした。
「元に戻る方法はわかったけど、かなり手強いわね。彼はあなたを女の子としてしか見てないわ」
「……」
「いいわ。なんとかいい方法を考えましょう」