実戦
依頼主の商船は国内のさまざまな加工品の材料を他国で調達していた。
その材料がないと作れないものがたくさんあったからだ。
今回もたくさんの積み荷を積んで近海まで帰ってきている。
迎えに出た二隻の護衛船は、本船の前と後ろについた。
ヘンリーは前の船に、エズラとクリスは後ろの船に乗船しており、三人は仮面をつけていた。
「海賊だー!!」
噂の海峡にさしかかったとき、どこから現れたのか、本船の左舷側に向かってくるように黒い船が何隻も現れた。
護衛船はすぐさま本船の前に移動する。
「海賊を乗り込ませるな! 船を近づけるな!」
ドーン! ドーン!
いきなり海賊船が撃ってきた。
「主砲がやられた!!」
エズラとクリスの船のへさきに砲撃があたり、船がかなり揺れる。
「あっ!」
倒れてきた船の柱がクリスを直撃するかと思われた。
が、なぜか発光がその場を包み、気づいたときはクリスたちを避けるように柱が倒れていた。
(助かった……?)
その拍子でクリスの仮面がはがれ、どこかへ飛んでいった。
「仮面なんていいから、身を守れ!」
エズラはクリスをかばうように防御魔法を使った。
エズラたちの船が攻撃されたのを見て、ヘンリーが火炎魔法で海賊船を次々と攻撃する。
ものすごい轟音と硝煙の中、クリスの心臓はバクバク言いっぱなしだった。
(これが実戦……。キースが体験していること……)
体が震えた。しかし……
(悔しい……このままじゃ足手まといだ)
(怖くなんか……ない!)
エズラとヘンリーはそれぞれ得意な回復魔法と攻撃魔法を次々と繰り出して味方を援護していた。
(すごい二人とも……息ぴったりだ)
「ジャン、怖いなら後ろに下がってろ!」
エズラが叫ぶ。
クリスは防御してくれているエズラの気持ちはありがたかったが、自分もなんとか役に立ちたかった。
(どうしたんだろ、魔法の効きが悪い……)
いつもなら、もっと効力のある魔法が敵に効いていないように見える。
海賊船の方からも爆弾が雨あられと飛んできたが、いずれもエズラとヘンリー、クリスが魔法でふせいだため、本船に届く前に海に落下した。
戦況は商船に有利だった。
「火薬を無駄にするな! あっちには魔導士が三人いる! いったん退却だ!」
急に海賊船は攻撃をやめて、来たときと同じように恐ろしいスピードで去っていった。
商船からは歓声が上がる。
「やった! あいつら逃げてくぜ!」
「深追いするな! とにかく荷物を港に届けるんだ!」




