帰宅
クリスはダンの家の帰りに、自分の家にも少しだけ寄った。
マークもマリアも久しぶりの我が子との対面に喜んだ。
「休憩の看板を出してくるよ」
マークは嬉しそうにそう言って、店に戻った。
「話は聞いてるわ」
マリアは静かな声でそう言い、クリスのことを見つめた。
「心配だけど、カイン先生たちが守ってくださるわ」
不安そうな表情のクリスを見て、マリアは笑顔を見せた。
「そうそう、あなたは今ね、『ダンの古書店』に手伝いに行ってることになってるの」
「えっ……」
「ダンがね、詳しく聞いてくる者がいれば、クリスは親戚の『ダンの古書店』を手伝ってるって言えばいいって。奥さんのヘラが話を合わせてくれるって」
(ダン先生……)
マリアはキースの母スザンナと話していて気付いたことがある、と言った。
キースは実家にクリスが後宮で働いていたことを黙っている、と。
スザンナは今もクリスが親戚の家に手伝いに行ってると思っている。
「キースもあなたのことを守ってくれているわ」
「……」
「小さい村じゃない? キースはあなたを守るためにそうしたのよ」
マリアはフフッと笑った。
「キースはやっぱりあなたのこと、あきらめてないでしょ? どっちかっていうと彼の方が解けない魔法にかかってるみたいね」
キースのことを考えるとクリスにも笑顔が戻った。
なんであんなに女の子のクリスのことが好きなんだろう。
女性にはだらしないくせに、幼なじみで友だち関係のようなクリスに、キースはずっと叶わない恋をしてる。
(早く元に戻ってあげないと……)
友のことを思うと、クリスはいつもそんな気持ちになった。




