騒ぎ
クリスが家に戻ると小さな村ではちょっとした騒ぎがあった。
「キースの子供……?」
マリアはちょっと言いにくそうだった。
「昨日、キースの実家にね、子供が置き去りにされていたの」
なんでも、キースの家族が彼を迎えに出て一緒に家に帰ってみると、庭に1歳くらいの女の子がちょこんと座っていたのだそうだ。
荷物と一緒に手紙があり、文面には「キースの子」だとあった。
もちろんキースは身に覚えがないと否定したが、村の人たちの中には疑っている人もいた。
「まぁ、たぶん騎士団に入団した噂でも聞いたんでしょ」
マリアは信じていない風だった。
クリスがキースの実家を訪ねると彼の幼い兄弟たちが見知らぬ女の子と遊んでいた。
「あっ、クリスお姉ちゃん!」
クリスはキースの兄弟たちに囲まれた。
1歳くらいの女の子はキョトンとしてクリスを見つめていた。
黒髪の巻き毛はキースとそっくりだった。
キースの庭の柵の外から近所の女性たちが興味深そうにこっちをのぞいていた。
「まぁまぁ、どうしたの、そんなに髪の毛をバッサリ切って」
キースの母スザンナはびっくりして言った。
「あんなに綺麗な長かった髪を……。まさかうちの子のせい?」
「えっ……」
「まさか、こんなことになるなんて」
「あの……」
そのとき、奥からキースの声がした。
「だから俺、知らないってば!」
キースはムスッとした顔をして現れた。
「なんで親まで俺を疑ってるんだよ」
「だって、あんた……」
そのとき例の女の子が泣き出した。
クリスは自然とその子を抱っこしてあやした。
「あっちに牛がいるよ」
そう言ってクリスは女の子を抱っこしたまま庭の柵ごしに道を横切っていく牛を見せてあげていた。
女の子は泣くのをやめて、牛飼いに連れられてのんびり歩いて行く牛に笑顔を見せた。
柵のそばにいた近所の女性がそれを見て呆れたように言った。
「クリスったらよく平気ね。キースが他の女に産ませた子かもしれないのに」
その声はキース当人にも聞こえていた。
否定しようとしたそのとき。
クリスは怒った表情でこう答えた。
「誰の子であっても、子供は守らなきゃ」
キースは何も言えなくなって、ただ小さい女の子に笑顔を見せているクリスを見つめるだけだった。
後日、子供の親はキースではないことがわかった。
「あの子を連れた女性を見かけた人がいて、この地へきたのは半年前なのよ。だからキースに会っていたとしても子供はキースの子じゃないわ」
誰よりも情報が早い近所のおばさんがマリアのところにも来て、それはクリスにも伝わった。
「スザンナは一人増えても変わらないって言って養子にしたの」
そうマリアはクリスへの手紙に書いていた。
あの女の子はキャロルという名前でキースの一番下の妹になった。
*
クリスより先に城に戻ることになったキースだが、そのあと城に忘れ物を届けに来た弟のウェインが妙なことを言っていた。
「クリスって親戚の家にお手伝いに行ってるんでしょ? なのに変だな。迎えの馬車に王室のマークがあったんだ。城から馬車が迎えに来るって変じゃない?」
「……」




