クリスの気持ち
「おめでとう、ダンから聞いたわ。合格したんですって。さすが我が子」
家に帰ると母マリアはウキウキしていた。
「名誉よね……偽名と男装なのが残念だけど」
マリアは花の香りのするお茶を座っているクリスの前に置いた。
「ダンがね、さっそくカイン先生にあなたのことをお話したそうよ」
「えっ……」
「これからお城のカイン先生のところで寝起きするでしょ? さすがに先生には打ち明けておかないとって」
「……」
「カイン先生はあなたが実は女の子だってこと知ってびっくりしたみたい。そりゃそうよね。だけど、実力は認めてくれているの。女性魔導士には障害があるからカイン先生も男装は仕方ないって。だから仮面や偽名のことについても理解をしてくれたわ。もしキースに会う機会があったら仮面を被ればいいわ。他の2人の弟子にも説明しておくって。ただ女の子ってことは内緒にしておくから気をつけて生活をして、って。これでもしキースに会っても大丈夫。あとキースのお母さんにはあなたが親戚の家にお手伝いに行ってるって話すわね」
「母さん……」
「なに?」
「ダン先生に、僕……クリスはキースのことが好きだって言ったみたいだけど、それって……」
マリアは持っていたティーカップを机の上に置いた。
「本当のことよ」
「えっ……」
「元のクリスはキースのことが好きだったわ」
「……」
「女の子だからね。幼なじみで二人はなかなか素直になれなかったけど。クリスがキースを好きなのは本当よ」
「……」
「どうして?」
クリスはしばらく黙っていたが、思い切って言ってみた。
「もし、急に元に戻ったら、元のクリスに不利なことを僕はしてたんじゃないかって……」
マリアはクスっと笑った。
「キースに冷たい態度とったり、焼きもち妬かせてたり? キースはあなたがダンのところへ行くのをすごく嫌がってたものね」
クリスは顔を赤らめた。
「まぁ、それくらい大丈夫じゃない? キースはそれくらいであきらめるような子じゃないでしょ」
マリアの言葉に少しホッとした。
「問題は、早く元に戻らないとね。手遅れになっちゃう。あなたがキースを受け入れることはないでしょ?」




