マリアの推察
「ただいま」
クリスは薬草でいっぱいになった籠を店内にいる母親に渡した。
「母さん、話があるんだけど」
クリスは店に客がいないのを見て言った。
「いいわよ。ちょっと休憩にしましょう」
マリアは店の奥へ入ってお茶の準備を始めた。
クリスはその間、店のドアの外に「休憩中」という札をかけた。
「どうぞ」
マリアは小さいテーブルにお茶を2つ置いた。
二人は小さい丸椅子に腰をおろした。
「なぁに、話って?」
「うん……」
マリアは入れたてのお茶をすすって「美味しい」と呟いた。
「なんかおかしいんだ。女の子になってるのはもちろんだけど、それ以外にも記憶にないことがたくさんあって……」
自分が体験していないはずの女の子の記憶が自分以外の人にあることが不思議だった。
クリスが話す違和感を聞いて、マリアはしばらく考えこんだ。
「もしかしたら……」
マリアは自分が小さい時に祖母から聞いた話を思い出した。
「あの禁断の森にある池は、別の世界とも繋がってるという古い言い伝えがあるの。池の主はその扉の番人だって」
(別の世界……)
「そっくりだけど、少し違った世界があるって。自分と同じ人間がいるって」
「……」
「だとしたら辻褄が合うでしょ?」
「それって……この世界は元いた世界とは違うってこと?」
「可能性はあるわ」
「……」
クリスって女の子がいた別の世界……。
「じゃあ、その女の子は?」
「あなたがいたはずの世界にいるのかも」
「……」
目の前にいるのは母さんだけど、母さんじゃないのか……。
「どうして、そんなに平気でいられるの? あなたの娘は僕がいた世界にいるかもしれないのに」
「う~ん」
マリアは首を傾げた。
「そうね、たぶん……。だとしてもあなたのお母さんがいるわけでしょ? もう一人の私。だったら大丈夫だと思うの」
少なくともマリアにいたってはこっちの世界もあっちの世界も瓜二つなのかもしれない。と思ったクリスだった。




