キースの気持ち
本格的な冬が来る前に、キースは騎士団の一員としてマイクローブズ城に出仕した。これからは定期的な休暇以外は城の寄宿舎で過ごすことになる。
彼は城へ向かう前にクリスに会いに来た。
「おばさんがここだって。薬草をとってるの?」
「うん……」
城下町からすこし南にある「はずれの森」と呼ばれている所だ。
「確かこの先の禁断の森でお前ってば溺れかけたんだよな」
「……」
クリスはあのことがあって以来、たびたび禁断の森の例の池を訪れていた。もしかしたら呪いを解いてくれるかもしれないと思って。しかし、あの老婆に会うことはなかった。
「俺お前に言いたいことがあって」
「……」
クリスはドキリとした。
「お前の気持ちはわかってる。だけど、俺はあきらめきれない。待ってるから。お前の気持ちが傾くまで」
「……」
「俺、お前以外は無理だから」
「……」
キースは深いため息をついた。
「2週間後に残りの荷物を取りに帰る。その次に会う時は早くて来年の春前かな。それまで……」
しばらく沈黙が続いた。
「あのおっさん、お前に手ぇ出したりしてないか?」
クリスの顔がみるみる赤くなった。
「えっ? なんかされたのか?!」
とっさにクリスの両肩をつかむキース。
「痛い!」
その衝撃でクリスは手に持っていた薬草籠を地面に落とした。キースはすぐに手を離した。
「ごめん……」
キースはそう言うと落ちていた籠を拾い、クリスに渡した。
「俺、もう行くわ。それと……」
「……?……」
「お前はもう覚えていないかもしれないけど、小さいころ、お前の方が俺のお嫁さんになるって言ってたんだからな」
(えっ……)
言うなり振り返りもせずにキースは町の方へと帰って行った。




