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1.転生喪女


それは、雲ひとつない青空がいっぱいに広がるさわやかな春の日のこと。

朝いつも通り目覚めた私は、ベッド脇のカーテンを開ける侍女に朝の挨拶をするより前に、こう口にしていた。



「あ、これ人生2回目だわ」



と。



何言ってんだって思われるかもしれない、現に侍女も困惑していたし、私も自分で言ったくせに(こいつ何言ってんだ?)って思った。

でも見た夢を覚えてて、とか、寝ぼけてて、とか、そんなんじゃなくて。

とにかく、私は私の前に私として生きていた記憶があって、その記憶が今まさに蘇ってきたらしいのだ。

私の名前はリリシア・カテリン、16歳、弱小貴族の次女、レベルは5。

これまでカテリン家の次女として生きてきた16年は、物心つく前はともかくとしてちゃんと覚えてる。

でも、リリシアの「前」は萎びた喪女OL萩野 由理だったのだ。



その事実は濁流のように私を襲い、混乱した、混乱しすぎて動けなかった。

突然よくわからないことを口走ったと思ったら微塵も動かなくなってしまった私を不審に思った侍女がいくら声をかけても返事はなく、天井を見つめて瞬きすら怪しい様に慌てふためき、すわなにかの病かと侍医を呼んできた辺りで硬直していた私ははたと気付いたのだ。



「今世も喪女だし関係ないわね」



と。








さて、突然ですが私が暮らすフィロジーア王国でのモテる基準を発表しましょう。

まずさらさらストレートの髪の毛。色は王族にちなんで金が望ましい。若い子の間では空色とか桃色なんかのやわらかなパステルカラーも人気で染色剤が飛ぶように売れている。ただし白は不吉なのでだめ。

次にすらりと伸びた手足。細身でかつ出るとこは出てたほうがよろしい。(まあこれは前世でもそういうとこあった。)さらに言えば身長は高めがいい。目線が近い方がいいということらしい。

そして、いつでも前向き明るく笑顔が絶えないこと。(まーーーー、これも前世でもわりとそうよね。)

最後に一番大事なこと、それは、魔力を有してないこと。魔力は災いをもたらす呪われた力だから。



これらが、前世に比べたらずっと整った顔をしてる(……と思う)私が、今世でも変わらず喪女な理由である。



「リリシア様、いっそのことお染めになったらいかがでしょう」

仕えるお嬢様の婚期を心配した侍女が私のふわふわくるくるあちこちへ逃げる真っ白な髪を梳いて言う。


「大丈夫ですよリリシア様、これからぐんと育ちますって」

年の割にずっと小さな背のせいで上げるべき新しいドレスの裾の長さを確認していた仕立て屋が言う。


「リリシアはその物静かなところがいいと思うわ」

同じ親から出てきたとは思えないほどからりと明るい姉が言う。


「ごめんねリリシア、母を恨んでね」

突然変異で魔力を持って生まれた私に、何も悪くないのに、お母様が何度も何度も言う。




くせ毛の白髪、低身長、根暗、魔力持ち


モテない要素全てを持ち合わせた私は、婚約者の1人でもいておかしくないお年頃でありながら、立派な喪女であった。

前世を思い出す前でもまあこれだけ要素があればねと諦めて自分の世界で楽しく生きていたけれど、前世を思い出してからは「前世だって喪女だったけど楽しく生きてたじゃん!」と振り切り、「1人で生きていくには安定した職よね!」と多種多様な勉強に励むようになった。

この国で生涯独身はほとんどいないけれど、きっとなんとかなると信じてる!

私は1人でも楽しく生きてやるわ!!


両親には悪いけれど、私1人結婚できなくとも幸い優秀な兄弟姉妹がいる。

安心して1人でも生きていけるのだ。どうしようもなく寂しくなったら猫ちゃんでも飼おうそうしよう。





そうして私は2度目の喪女ライフを謳歌していた。






はずであった。


はずなのに。




「あの、魔王さま?私になにか…」




どうしてこうなった。




「リリシアがあまりに可愛らしいので観察していた」




にっこりと笑いかける姿に悪寒がする。


楽しく生きていたはずなのに、どうしてこうなったのだろう。

私は喪女らしく1人楽しく生きていたいのに!だから、




魔王さま!気付いて!それは目の錯覚です!!




と、そう強く申し上げます!

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