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Please speak!  作者: 長野原春
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頼れる人はすぐそばに

「この前行くって言ったでしょ?」

 そういえばそんなことを言っていた気がする。

「ミー子も同じこと言ってたから、ミー子が来たのかと思ってたよ。」

「私のことは忘れてたのー?」

「い、いや、忘れてはいないよ。」

 先に言われたからあんま覚えてなかっただけで。

「ご注文は?」

「そうだな~、おススメはある?」

 おすすめ、おすすめかぁ・・・。

 うちで人気なのはショコラケーキ、モンブランだが、期間限定のキウイタルトという選択肢もある。

 何を勧めようか・・・。

「さっさと注文取れアホ。いつまでもしゃべってんじゃねー。」

 べしっ、と頭を叩かれた。

「あだっ。え、えー、当店のお勧めは、ショコラケーキ、マロンモンブランです。」

「ほうほう。」

「加えて、春限定のキウイタルトもございます。」

「ほー・・・。」

 春女さんは下を向き、黙り込んでしまった。

「むー・・・。」

 早く決めてくれ。

 後ろから先輩が見てるから。

「じゃあ今日はキウイタルトで!」

「キウイタルトですね、コーヒーはいかかがなさいますか?」

「合うやつ!」

「か・・・、かしこまりました。」

 どうすりゃええねん。

「お前なあ・・・、合うやつとか言われてひきつってるようじゃ全然だめだぜ?ウエイター失格。」

「いや、俺厨房担当ですし。」

「うっせ。フルーツタルトなんだから苦みと酸味のきいたキリマンジャロでいいだろう。何が合うかとかは今度店長にでも聞いとけ。教えてくれっから。」

「ありがとうございます。」

 とりあえず、フルーツタルトとか酸味のあるものはキリマンジャロでいいのかな?

 メモしとこ。

「はーい、絢駒君、休憩終わり。もう焼き上がってたよ?」

「あっ・・・、すいません、店長。」

「まあいいけどね。マロンモンブランとキウイタルト、並べておくね?」

「よろしくお願いします。」

 コーヒー担当が淹れてくれたコーヒーを受け取り、春女さんの方へ持っていく。

「どうぞ。キウイタルトと、キリマンジャロになります。」

「わー!おいしそうだね!」

 早速春女さんがタルトを一口。

「んー!おいしい!」

 口にあったようだ。

「じゃあ、俺は厨房戻るね。」

「うん、お仕事がんばってね!これ、友だちにも広めておくね!」

「ああ、ありがとう。」

 さて、自分の仕事に戻ろうか。




 とはいえ、もうストックはたぶん大丈夫なので、あとは皿洗いしてればいいだろう。

 これ、結構真剣にやらないとな仕事だよね。

 ちゃんときれいに洗わずに客から苦情が来たなんて、恥さらしもいいとこだ。

 店の信頼にもかかわるし、夏場の場合、食中毒とか起きたら閉店まっしぐらだ。

 俺は全身全霊でこの仕事を・・・、完遂するッ!

「んで、さっきの人は誰だ?彼女か?」

「なんてひどいタイミングで来るんですかせっかく全力でいこうとしたのに。」

「何に行くんだよ・・・。あとそんなに力込めんな。皿割れっから。」

 まったくひどい先輩である。

「んで、あれはお前の彼女か?だとしたらなんかもったいねーな。」

「何がもったいないんですか何が。」

「結構・・・美人じゃね?」

「もしかして、ひとめぼれ?」

「んなわけあるかよ!ただきれいな人だなって思っただけだよ!」

 ははーん。

 そうかそうか、ひとめぼれしちゃったかー。

 まあわからなくもないよ。春女さん優しいしキレイだもんね。

 放浪癖に振り回されそうだけどね。

「安心してください先輩。彼女じゃないです。」

「何を安心すんだよ何を。」

「狙ってるんですよね?春女さんの事、気になってるんですよね?」

「バカ言うな。」

 そういう先輩の顔は赤い。

「あの人は俺の・・・姉です。」

 なんだろう、今、姉と言うのに違和感があった。

 なぜだろう。

 やっぱりまだ、義理というところが引っ掛かっているんだろうか。

「姉か・・・。あれ?お前姉二人いたの?」

「そうですよ。あの人は2年前にできた姉ですが。」

「あー・・・、そういうことか。」

 先輩が察してくれたのか、急に静かになる。

「だからお前、少しよそよそしいんだな。」

「え?なんで?」

「だってお前、姉さんとか呼んであげてもいいだろうに、名前にさん付けとか、家族なのによそよそしいだろ。」

 そうだろうか。

「夏央くんと春女さん、じゃあまだまだ距離感感じるぜ。」

「そうっすかね。」

「そうだよ。姉さん呼ぶみたいに、もっと近づいてやればいいんだよ。」

 そうか。そういうことか。

 春女さんを姉というのに違和感があった理由。

 俺にはもう一人姉がいる。

 義姉ではなく、姉が。

 今でも、俺の姉は一人だけとどこかで思っているのかもしれない。

 そういえば前に・・・。

「俺から話振ったとこ悪いが、仕事しろ仕事。」

「あ、すいません。」

「次からは気を付けるようにな。」

「わかりました。」

 考えることはやめて、俺は皿を洗い始めた。




 バイトを終え、ケータイを確認すると、ミー子からラインが入っていた。

『明日もバイト?』

『そうだよ。11時から。』

 既読はすぐにつかなかったので、ケータイをしまい家に帰ることにした。

「お疲れ様でーす。」

「はーいお疲れー。また明日もよろしくね!」

「わかりましたー。」

 4月とはいえ、夜はまだ寒い。

 コートを着て、俺は家に帰った。




「ただいまー。あれ?」

 家に帰ると、いつもは家にない靴が置いてある。

 ・・・噂をすれば、って言うけどそれに似たもんかな。

「おー!夏央お帰りー。お疲れ!」

 リビングから出てきたのは、俺の姉だった。

「冬姉、久しぶりだな。どうしたの?」

「仕事で疲れたから実家に帰ってきた。」

「結局いつもの理由か。」

 俺の実の姉、絢駒冬華(ふゆか)は今ゲーム会社に就職している。

 一人暮らしをしているが、仕事で疲れたりするとこんな風に家に帰ってくる。

 事前に言ってくれれば夕飯とかも用意してあげられるんだけど。

「なーにぃ?お姉ちゃんが彼氏でも作って家に連れてきたかと思った?」

「冬姉に限ってそれはないんじゃないかな。」

「ないね。攻めて夏央以上の男じゃないと。」

 そしてこの姉、ブラコンである。

「ほらほら、姉ちゃん夏央の夕食作っといたから、食べちゃいな。」

「冬姉の夕食か・・・。」

「あっ!もしかして料理できないと疑ってるな!?これでも一人暮らしだぞー?」

 俺の記憶では、冬姉が料理できたなんて聞いたことないんだけど。

 まあ、渋るのも作ってくれた姉に申し訳ないし、リビングに行くことにした。


「普通においしい・・・。」

「だしょー!?見直した?」

「まあ、ちょっと。」

「ちょっとって何だー!」

 冬姉、24歳になってもうるさい。

 社会人なんだし、もうちょっと落ち着きがあってもいいんじゃ・・・。

「冬華、今日は泊まってくの?」

「そうだねー。じゃあ泊まってこうかな。」

「じゃあ、母さん準備しとくわね。」

「夏央の部屋に布団敷いといてね。」

「やめてくれ。」

 高2にまでなって姉と一緒の部屋で寝るとか、嫌すぎる。

「まあ、あとでちょっとお話を聞きたいから夏央の部屋に行くけどね。」

「また仕事の話?」

「そうそう。よろしくね。」

「あー、分かった。」

 何時に寝れるかな・・・。

 ぴろん♪

 ラインにメッセージが入った。

 ミー子からだ。

『夜、私の部屋に来れる?』

『なんだ?勉強、分からないところでもあるの?』

『なにいってんの。』

『日本語。』

『しょ、小学生がここにおる・・・(;・∀・)』

『うっせ。で、なにすんの。』

『早くメタトロンを解禁したいんだよね。』

 あっ・・・完全に忘れてた。

 パラロスのメタトロンは二人プレイじゃないと解禁できないから、この前そのために手伝ってたんだ。

 結局、あの先生のせいで解禁できなかったけど・・・。

 まあ、明日は土曜日だし、ちょうどいいか。

『りょーかい。明日の8時からでいい?』

『く(”>▽<”)了解!!!』

「んー?美衣ちゃん?」

「そうだよ。」

「相変わらず仲いいねえ。付き合ってんの?」

「いや、付き合ってはいないけど。」

「もったいなっ。」

 冬姉がちょっと引いたような動作をする。

「絶対もったいないでしょー。朝学校行くのに迎えに来て、いっつも帰るのも一緒で家も隣の幼なじみでしょ?安定攻略キャラでしょ。」

「ゲームに例えんな・・・。」

 安定って。安定って。

 いや、だからと言って別に他の女の子に気があるわけではないけど。

「お風呂空いたよー。夏央くん、入っちゃって。」

「はーい。」

「んじゃ、あとで夏央の部屋お邪魔するね。」

「はいはい。」

 リビングを後にして、風呂に向かった。




「ふぅ・・・。」

 風呂に入った時独特の声が漏れる。

 あー、とかなんかいろいろな声でるよね。

『さー、姉ちゃんも一緒にはいろっかなー。』

 風呂の外からそんな声が聞こえた。

「え?やめて!?」

『大丈夫大丈夫、ちゃんとタオル巻くから。』

「そう言う問題じゃなくね!?」

 俺タオルとか巻いてないんですけど!?

『何年一緒に入ったと思ってんのー今さら何でもないでしょー。』

 風呂のドアが開き、冬姉が入ってきてしまった。

「それともあれ?夏央は姉ちゃんに発情しちゃう感じなの?」

「んなわけあるか!!」

 とはいうものの、冬姉は胸がでかい。

 バスタオルの上から結構分かるくらいに。

 見ないようにしよう。

「そういうのは美衣ちゃんにぶちまけなさい。」

「なに言ってんだアンタ!?」

「日本語。」

「小学生かよぉ・・・。」

 俺はミー子をそんな目で見ていません!

 もしそんな目で見ていたらあいつの部屋に遊びに行けません!

「ほーらほら、姉ちゃんが背中流してあげる。」

「自分でできるから・・・。」

「いーのいーの。」

 まったく話を聞いてくれない。

 まあ、帰ってくるのが久しぶりだから寂しかったんだろうか。

 最後に冬姉が家に帰ってきたのいつだっけ。

「―――いああぁぁっ!?」

 なんか背中をぬるっとしたものがなぞった。

 思わず変な声が出る。

 冬姉が手にボディーソープをつけて、俺の背中に触れる。

「何でボディースポンジを使わないんだよっ!?」

「昔はこうやって洗ってたでしょー。」

「今と昔は違ぁぁぁぁぁう!!」

 ぬるぬるして、めちゃめちゃくすぐったい。

 変な声が出そうになるが、ぐっと我慢する。

「はい終わりー。」

「疲れた・・・。」

「あ、前も洗う?」

「いい、絶対にいい。」

 誰がそんな恥ずかしいことするか。

 ミー子にも前は洗わせなかったぞ。

「気持ちよかった?」

 ・・・変な気分だった、なんて口が滑っても言えない。

「顔が赤いな?」

「うっさい。俺はもう上がるからな。」

「えー、姉ちゃんのことは洗ってくれないの?」

「自分で洗ってくれ・・・。」

 あんまり温まることはできなかったが、俺は風呂を出た。




「疲れた・・・。」

 部屋に戻り、ベッドに寝っころがった。

 バイトの疲れと、風呂の出来事で2倍疲れた。

「寝れるなコレ・・・。」

 明日は土曜日だし、いいよな・・・。




 つんつん。


「・・・。」

 誰だ、俺の安眠を邪魔するやつは。

 ・・・いや、俺の経験上、つついておこしに来るやつはミー子と京介しかいない。

 京介が俺の事を起こしに来るとは考えがたい。

 つまり導き出される答えは・・・。

「おはよう、ミー子。」

「美衣ちゃんじゃないよ?」

「!?」

 がばっ、と体を起こすと、俺のベッドの横に立っていたのは冬姉だった。

 時計を見ると、現在時刻0時。

 まだ夜だった。

「あとで夏央の部屋行くって言ったでしょ?」

「ああ、そうだったね。」

「にしても、美衣ちゃんと間違えるくらいには起こされてんのね。」

「別にそんなんじゃ。」

「隠す必要ないって。あんた低血圧だもんね。」

 冬姉が笑う。

「で、何の用?」

「次のゲームの話なんだけどねー・・・。」

 冬姉はゲームの原画担当、つまりイラストレーターである。

 おもにギャルゲーを担当していて、確かラノベのイラストもやってたはずだ。

 その話となると、キャラクター関連か。

「メインヒロインの一人の名前と立ち絵、私が考えるんだって。」

 それは普通にある話なんだろうか。

「普通はシナリオ担当とかがあれこれ言うんだけどさ、一人だけ完全に何でもいいって言われちゃってさ。なんかね、絢駒さんに趣味全開でいいですって言われたのよ。」

 キャラクターを作るって、簡単なことではないと思うけど・・・。

「そこで夏央にお願い!一緒に考えて!」

「キャラクターをか・・・。」

 どう考えればいいんですかね・・・。

「あたしが夏央に質問するから、夏央はどっちがいいか答えて!選んだ方使って絵描くから!」

「わかった。」

 案外簡単そうだな。

「じゃあまずは・・・、長い髪と短い髪、どっちが好き?」

 髪型の問題か・・・似合っていればなんでもいいと思うけど、強いて言えば・・・。

「短い方かなあ。」

「ほうほう。じゃあ、目はきりっとした感じか、ふわっとした感じ、もしくはジト目。どれが好き?」

 正直、あんまりきりっとした感じは好きじゃない。

 俺が二次元に求めるのは、ふわっとした感じか・・・、

「ジト目、かな・・・。」

「ふむふむ、・・・ん?」

 髪型と目を描いたところで、冬姉は頭をひねった。

「どうかした?」

「いや、なんでもないよ。じゃあ、顔が描けたから・・・身長は?高いのと低いの、どっちが好き?」

 これは考えるまでもない。

「低い方がいい。」

「おっけ。じゃあ、体型は?細身?むちむち?」

「細身。」

「りょーかい。」

 冬姉がどんどん描いていく。

 さすがは絵を仕事にしている人。落書きなのに上手だ。

「じゃあ。胸の大きさは?小さいの?大きいの?」

「うーん・・・。」

 大きいのでも小さいのでも、おっぱいは等しいんだよなあ・・・。

 正直甲乙つけがたい。

「それに関しては、冬姉の好みで。」

「んー、おーけー。」

 胸のふくらみが少し足された。

 なるほど、Cカップくらいか。

 標準的にバランスの取れている感じとなった。

 身長からしたら、少し大きく見えるが。

「服装はどうする?制服なんだけどさ。」

「黒タイツだけは着用で。」

「ああ、うんうん。わかった。」

 絵は、あっという間に完成した。

 そして、出来上がった絵を見て、

「ぷっ、あっははは!」

 冬姉は笑った。

「え、どうしたの?」

「いやいや、これおもしろいよ。」

 笑いながら、冬姉がその絵を見せてくる。

「自然と考えてる子が、どんな子だかわかったよ。」

 出来上がったその絵は、ミー子に似ていた。

「ふふふ。夏央はいつでも美衣ちゃんだねえ。」

「い、いや!違う!そうじゃない!」

 違う!別にミー子はジト目じゃない!

 それにこんな胸大きくない!

「じゃあ髪はこんな感じがいいかな?」

 そういって、冬姉はミー子が使ってるものに似たヘアピンと、ハネを足した。

 ・・・よりミー子っぽくなった。

「いいから!やめてくれ!」

「えー、でも描いちゃったしー。それに、夏央だって美衣ちゃんのこと好きなんだし、いいじゃん。」

「すっ・・・!?」

 す、好き!?

 い、いやいや、そんなことはない。

 あいつと一緒にいるのはその、昔の負い目で!

 昔俺が約束したからであって・・・なんだか気分が重くなってきた。

「んまあ、否定するなら構わないけど、あんまり冷たくして離れて行っても知らないよ?」

「冷たくなんてしてないよ。」

「そうねー、夏央と美衣ちゃん、ラブラブだもんねー。」

「ラブっ・・・!?」

 だからなんなんだこの姉は!

 俺を困らせたいのか!?

「まー、そうだねー、夏央は全国の男どもに美衣ちゃんを攻略されるのが嫌みたいだし、ちょっと変えようか。」

 いや、ゲームだし、全国のみんなとか関係ないけど・・・。

 一瞬、京介に攻略されるミー子が頭に浮かんだ。

「何で窓から飛び降りようとしてるの!?」

「ちょっと京介殺してくる。」

「なんで!?」

 俺寝取りとか好きじゃないんで・・・。

 って、それじゃあ俺とミー子が付き合ってる前提じゃねえか。

 俺たちは別に付き合ってるんじゃないんだ。

 長い縁であって、守る守られるの関係。

 そこに恋愛感情はない。

 それが許されるのは・・・、ミー子が声と、表情を取り戻した時だろう。

 今の俺に、そんな資格はない。

 ただ、なんでだろう。

 最近、そのことを考えると少し・・・モヤモヤする。




「んじゃ、名前を決めようか。」

 ミー子にのキャラはパーツをちょっとずつ変えただけで別人になった。

 パーツでずいぶん印象が変わるんだなあ・・・。

「ちょっと大人しめの子っぽいね。じゃあ、イメージカラーは青っぽい感じで。」

「それに沿って名前を考えるんだね?」

「そうそう。夏央は名前を考えてね。」

「分かった。」

 大人しめで、イメージカラーは青・・・。

 そうだな、念のため、2パターンくらい考えよう。

 ・・・よし。

「夏央、決まった?」

「おう。冬姉は?」

「ちょっと待ってね・・・。」

 下を向いて考え込む姉。

「あ、そういえば苗字に色が入るから、そこよろしく。」

 まじか。色、一応名前に入れておいたんだけど・・・。

「うん、よし。決まったよ。」

「じゃあ、苗字から先で。」

「はいはーい。この子の名字は・・・青森です!」

 青森・・・ゲームだからもっと奇抜な苗字かと思ったら、そんなでもないんだな。

 この名前・・・ちゃんと合うだろうか。

「はいじゃあ夏央くん、発表してください。」

「えーと、水音(みずね)か、蒼葉(あおば)って考えてたんだけど・・・。」

「あおばは、どうだろう。」

「無理だよね。」

「みずねなら、漢字は瑞音とかでもいいんじゃない?」

「水の方が大人しそうな感じはするんだけどなあ・・・。」

「よし、じゃあ間を取って水葉(みずは)で。」

 なにがよしなんだ。

 勝手に変わったんですが。

 これ俺が手伝う必要あったんだろうか。

「この子の名前は青森水葉でけってー!」

 瞬間的に頭にジャングルが浮かんだが、気のせいだろうか。

「ありがとう。これで決まったよ。んじゃああたし寝るね。」

「明日バイトだから早く寝たかったんだけど・・・。」

「じゃあ明日は姉ちゃんが起こしてあげよう。」

 なんだか嫌な予感がする。

「おやすみ、夏央。」

「おやすみ冬姉。」

 冬姉が部屋を出た後すぐに、隣の部屋から大声が響いた。

 春女さんの声だ。

 冬姉、春女さんと一緒に寝るつもりか・・・。

 まあ、あの二人仲良いし大丈夫だろう。

 さ、早く寝ないと明日の仕事に影響が出る。

 時計はもう2時を回っていた。

 布団についた俺は、名前について考えていた。

 俺もいつか結婚して、子どもが生まれて、名前を考えなきゃいけないんだろう。

 ・・・女の子だったら、水葉にしようかな。

 その時、俺の隣に誰がいるかはまだわからないけど。

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