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Please speak!  作者: 長野原春
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友だちは大事だよね

「・・・もう、引きこもりになったりするなよな。」

 俺はまた、ミー子を強く抱きしめた。

 昔のことを思い出し、少し怖くなった。

 もしあの先生のせいでミー子がまた引きこもりになんてなったら、俺はあの人を許さない。

 ミー子はこちらを向き、ケータイの画面を見せてきた。

『大丈夫、今は、なっちがいるから。私を守ってくれるんでしょ?』

「ああ、もちろんだ。」

 俺は今まで以上に、ミー子を守る決意を固めた。

 今日みたいなことがないように。

 次は、絶対に守ってやるから。

 その日はミー子がさびしくないように、怖い思いをしないように、同じ布団で寝た。

 ミー子は疲れてしまっていたのか、すぐに寝てしまった。

 人の寝顔とは可愛いものだ。

 そうだよ、俺は今可愛いと思えたじゃないか。

 そう、それは、自分にとって大切な存在である証拠。

 俺にとって守るべき、いや、守ると誓った女の子。

 何があっても、この子のそばには俺がいてやるんだ。




 次の日、ミー子は風邪を引いてしまい、学校を休んだ。

 吉田が俺のところに来て、昨日のことを謝罪した。

 正直殴ってやりたい気分だったが、我慢した。

 まあ、教師に手をあげたら停学どころじゃすまされない危険もある。

 それに、この先生が本当に謝るべき相手は俺じゃない。

 俺は先生の謝罪には取り合わなかった。

 ミー子に直接謝るまで許さないとだけ伝え、先生を無視した。

 ちなみに、昨日のことは校長に揉み消されたらしい。

 さすがは偉い人の親戚だ。

 何でこういう人はクズが多いんだ。

 権力を盾に好き放題やりやがって。

 一応反省はしているらしいが、俺はあの先生をしばらく監視することにした。

 あんなこともうしないように。

「アヤ、顔が怖いよ。」

「あ、おお、すまん。」

「昨日あんなことがあったから仕方ないかもしれないけど、もしかしたら怪しまれるかもよ。あの先生だってキレて襲い掛かってくるかもしれないし。」

 そうだ、あの先生はすぐにキレるんだった。

 ちょっと失念していたな。

「んで、美衣ちゃんは大丈夫なのか?」

「まあ、今日は風邪引いただけだし、大丈夫だろ。」

「じゃあ、私となーみんで今日お見舞いに行こうよ!ね!どう?」

「ああ、それいいかもな。」

 それはいい考えかもしれない。

 ・・・いつもならな。

「あー、すまん、今日はやめておいてくれ。」

「はあ?なんでだよー。」

「私たちを遠ざけてかがみんを独り占めする気ー!?」

 京介も祈木も俺に文句を垂れてくる。

「昨日あんなことがあったんだ。ミー子も弱ってるし、そっとしておいてやってくれ。」

「いや、そういうときこそ友達の私たちが。」

「聞こえなかったか。」

「・・・分かった。」

 祈木の言葉を遮り、二人の提案を却下した。

 友達としての心遣いはうれしいが、今は放っておいてもらえると助かる。

「また、ミー子が戻ってきたら仲よくしてやってくれ。」

「アヤに言われなくてもそうするよ。なんたって高校で一番最初にできた友達だからね。」

「ああ、頼む。」

 大丈夫、祈木なら信じて大丈夫。

 それは京介にも言えることだ。

「いつか、京介ならミー子も昔のことを話してくれるかもしれない。俺からは何も言えないけど、できればこれからもミー子とよろしくしてくれ。」

「当たり前だろ?中学からつるんでるんだぜ?今さら見放さないぜ!」

「二人とも、ありがとう。」

 いい友達を持てて、ミー子は幸せだな。

 ・・・本当の幸せには程遠いのだろうけど。




「お邪魔しまーす。」

「いらっしゃい、夏央くん。」

 学校が終わり、早々に帰ってきた俺はミー子の家に向かった。

 ミー子の家にはこの時間には珍しくミー子の母親がいた。

「こんにちは、那空(なあ)さん。仕事は休みっすか?」

「これから仕事なのよ~。新しいプロジェクトのプレゼンをしに行くの。」

「まじっすか。」

「まあ、夏央くんが店長さんに新しいメニューを提案するようなものよね。」

「俺そんな話しましたっけ。」

「美衣が嬉しそうに話してくれたわ。夏央くんが私を頼ってくれたって。」

 ミー子、那空さんにそんな話してたのか。

「夏央くんが来てくれたら安心ね。じゃあ、私行ってくるわ。」

「頑張ってくださいね。」

「ありがとね。」

 那空さんは家を出た。

「さて・・・。」

 鏡崎家に着たら、まずやることがある。

「こんにちは、(あきら)さん、風羽(ふう)ちゃん。」

 ミー子以外家には誰もいない。

 でも、ここに人がいたという証が残っている。

 俺は、お仏壇にあいさつした。

 昭さんと風羽ちゃんは、ミー子がいじめで大けがを負い、入院している最中に交通事故で亡くなった。

 心が弱っていたミー子はそのショックにより何かが壊れ、声と表情を失った。

 あの時の、ミー子が絶望した顔を、俺は忘れることはないだろう。

 お仏壇の前で手を合わせ、心の中でつぶやく。

 昭さん、風羽ちゃん、ミー子は俺が守ります。

 だから、いつかミー子がしゃべれる時まで、見守っててください。

 昨日みたいなことをもう繰り返すものか。

 まあ、先生は反省してると思うし、2度目はないだろう。

 今回のことで俺らのクラスからの先生への評価は最悪だ。

 次やったらどういったことになるかわからない。

 それに、2度目はさすがに校長も揉み消すことはしないだろう。

 さて、ミー子は寝てるだろうか。

 まあ、風邪引いてるし大人しくしてるだろう。

「ミー子、入るぞ。」

 部屋を開けると、ミー子はゲームをやっていた。

 いつも通りパラロスをやっている。

「何やってんのミー子。」

『パラロス。』

「いやそういう問題じゃなく。」

『熱下がったよ。』

「いやいや、病人なんだから大人しくしてろよ。」

 寝てるかと思ったのに。

「ちゃんと寝てるいい子にはプリン買ってきたのになー。」

「・・・。」

 そう言うと、ミー子は布団にもぐった。

 そして顔と手だけ出し、ケータイをこちらに向けてきた。

『プリン食べたい。』

「お前なあ・・・。」

 まったくこいつは・・・。




『おいしい。』

「それはよかったな。それ、俺の店で売ってるやつだぜ。」

『今度買いに行くよ。』

「そうか。」

 うちの店のプリンはうまい。

 ケーキが一番だけどね。

「んで、明日はちゃんと学校来れんのか?」

「・・・(こくり)。」

「これ、今日の授業分のノートな。ちゃんと写しておけよ。」

『(°Д°)』

 ミー子が驚いている。

「なんだ、どうかしたのか?」

『なっち、今日の授業寝なかったの?』

「ん?そうだけど?」

「・・・。」

 ミー子がこちらを見つめてくる。

 なんですか。

『なっち、優しいね。』

「え?・・・ああ、別に、今日は眠くなかっただけだよ。」

『はいはい。』

 なんだ、本当に眠くなかったんだぞ。

 理由は知らないけど。




「おはようミー子。体調は大丈夫か?」

「・・・(こくり)。」

「んじゃ、学校行くか。」

「・・・(こくり)。」

 次の日、ミー子はすっかり回復していた。

『プリンが回復の決め手。』

「んなわけあるか。」

 プリンで風邪が治ったらみんなプリン食ってるわ。

『今日、日本史あるよね。』

「ああ、それなんだけど、祈木たちが説得してくれたみたいだから、大丈夫だそうだ。あの人もミー子にちゃんと謝るって言ってた。」

『信じられない。』

「そりゃそうだわな。」

 ミー子の表情が少し硬くなった気がした。

 普段から硬いけど。


「かーがーみーんっ!!」

 クラスに入るなり、ミー子に祈木が抱きついた。

「よかったー!このまま不登校とかならなくて!」

『くるしい』

 なんというか、いつも通りな感じだった。

「今日も日本史あるけど大丈夫?フラッシュバックとかしない?」

『そんなにショックだったら学校来てないよ。』

「ほんとに大丈夫?」

『大丈夫だよ。』

 そう言う(?)と、ミー子は俺の背中に隠れた。

「え?なに?」

 俺の後ろでケータイをいじり始めるミー子。

 何がしたいんだ。

 そう思っていると、ミー子が手だけ出して、祈木にケータイを見せた。

『だって、なっちが守ってくれるから。』

「ほ~~~う??」

 祈木がニヤニヤしだした。

「いやあ、ずいぶんと信頼しておりますなあ。のう王子様?」

「誰が王子様だ。あとその喋りはなんだ。」

「ちゃんと何があっても守ってあげるんだよ?」

「言われなくてもわかってるよ。」

「おはよー・・・って、美衣ちゃん何してんの。」

 京介が俺の後ろで隠れているミー子を不思議そうに見ていた。




「おう、鏡崎。風邪は大丈夫か。」

『ばっちりです。』

「何で先生の目の前でケータイを出してるんだ?」

『Σ(・ω・ノ)ノ!』

「いや驚く前にしまえよ。」

「・・・(こくり)。」

 よく先生も没収しないなこれで。

 さすがにケータイの特別扱いはしなくていいと思うんだが。

 まあ、まだ朝のHRだし問題ないか。

「いやー、おとといはすまなかったな、俺からも謝っておくよ。」

 そういって、茎野先生は頭を下げた。

『え、先生が謝ることじゃないです。』

 スケッチブック片手に、ミー子はあわてている。

 なんとなくその仕草はかわいかった。


「今日は一時間目から日本史か。」

「んまー、多分もう大丈夫っしょ。あの後クラスからめっちゃ責められてたし。」

「そうなの?」

「うん。先生がキレてるからみんなで団結して大バッシングよ。みんなに言われてさすがに大人しくなったよね。」

「そんなことが・・・。ありがとな、祈木。」

「いやいや、かがみんのためだからね。」

 あの先生、本当に改心していてくれたら助かるけど・・・。

「授業を始めまーす・・・。」

 ボソボソ声の気持ち悪いやつが入ってきた。

「・・・!」

 ミー子がそれに気づき、俺の後ろに隠れた。

「あ・・・。」

 それに先生が気付き、ゆっくりこちらに近づいてきた。

「・・・(ふるふる)!」

 俺の後ろでミー子が震えている。

 そして、俺の目の前まで来た先生は、

「申し訳ありませんでした!」

 いきなり土下座した。

「しゃべれないのは甘えとか言ってすみませんでした!」

「・・・。」

 ミー子は依然俺の後ろから出てこない。

「も、もうこんなことしないから!許してくれ!い、いや、許してください!」

 情けない声を出し、許しを請う先生。

「・・・。」

 ミー子は顔だけ出し、先生を見た。

 なんとなく、ゴミを見るような目で。

『私、とても怖かったです。だから、もうこんなことがないように、本当にお願いします。私もなるべくしゃべることができるように頑張ります。』

 ミー子のスケッチブックにはそう書いてあった。

 ということは、この先生を許すということか。

「わ、分かった。約束しよう。」

「・・・(ぺこり)。」

 先生の謝罪によって、その件に関しては落ち着いた。

 しかし、俺は気づいていた。気づいてしまっていた。

 土下座をしている先生の顔が、下卑た笑みを浮かべていたことに。

 ・・・この先生がいる間は、ミー子を俺のそばから離れないようにさせておこう。

 なんだか嫌な予感がする。


「・・・と、いうわけで、じゃあ・・・、絢駒君。1867年11月9日に徳川15代将軍が行ったことはなんでしょう?」

「大政奉還です。」

「正解・・・。じゃあ、祈木さん・・・。その徳川15代将軍は?」

「・・・へっ!?」

「・・・寝てんじゃねーよ。」

「はっ、はいすいません!えっと、もう一度お願いします!」

「徳川15代将軍だよ早く答えろよ。」

「と、徳川慶喜です。」

「チッ・・・。」

 先生の機嫌が一気に悪くなった。

 祈木に注意したいところだったが、今喋ったら何されるかわからない。

 黙ってるしかないか・・・。

「じゃあ上野辺・・・。大政奉還は何をしたんだ?」

「あっ・・・、えっと、政権を朝廷に返上しました。」

「江上、辞官納地の説明。」

「はい・・・。官位官職を辞して領地を返納することです。」

「簡単でいい説明だ。」

 先生が生徒を褒めた。

 この人普通に褒められるのか。

 褒められた当の本人はびくびくしてたけど。

 静かで、嫌な時間がゆっくり過ぎていった。


「あれだな、教え方は悪くないんだろうけどつまんねーな授業。」

「ああ、京介もそう思う?」

「説明も悪くないし暗記だけじゃないぞってのもわかるんだけど、いかんせん静かすぎる。」

「誰もしゃべらないからな。」

 みんな怖がって喋らない。

 いつキレるかわからないからな。

「とりあえず、祈木は次寝たらどうなるかわからねえな。」

「一回だけで先生かなり機嫌悪かったしな・・・。」

 多分、あの先生のことだから女子生徒にだって容赦はしないだろう。

 まあ、手なんか出したら先生のお先がやばいだろうけど。

「あ、そうそう、京介。ちょっといいか。」

「ん?なんだ?」

 大事な話だと感づいたのか、俺に近づき、京介が耳を貸してきた。

「実はさ、あの先生ミー子に謝ったんだけど、ちょっと怪しい感じなんだ。」

「怪しい?どこが?」

 京介には、さっき俺が見たことを話しておこう。

 俺がもしミー子から目を離したスキに、とかそういうことがないように、京介にも協力してもらおう。

「さっきな、ミー子に先生が謝ってたじゃん?土下座でさ。」

「うん。」

「そん時な、あの先生、下向きながらにやにや笑ってたんだよ。」

「あー、確かに怪しいな。」

「だからさ、京介も、一応でいいからちょっと先生のこと見ててくれないか?」

「わかった。一応警戒しとくよ。」

「頼む。」

 そう、ちょっと危ない。

 帰り道とか、俺がトイレ行ってるときとか。

 さすがに、放課後追っかけてくるとかは・・・ないよな。




「じゃあ、俺は今日バイトだから。」

『頑張ってね。』

「おう。じゃ、またな。」

「・・・(こくり)。」

 家の前までミー子を送っていき、バイトの用意を始める。

 制服は店だし、特に用意するものなんてないことに気付いた。

 ・・・そういえば、あの新メニューの売り上げはどうなっているんだろう。

 最近いろいろあって忘れてたけど、あれは俺のメニューだ。

 売り上げが気になる。

「あ、今からバイト?」

 春女さんが部屋から出てきた。

「そうだよ。行ってくるね。」

「頑張ってね!」

「ありがとう。」

 春女さんに見送られ、バイトに向かおうとしたら、なんか視線を感じた。

 なんだ、だれだ?

 ・・・と、思ったら、ミー子の部屋のカーテンが開いてることに気づいた。

 ミー子がそこから顔を出して、手を振っている。

 俺も手を振りかえした。




「お、絢駒君、おはよう。」

「おはようございます、店長。」

「おお、絢駒。風邪は治ったのか?」

「ああ先輩。はい、おかげさまで。」

 治りました、ミー子の風邪が。

「今度からは気を付けてねー?」

「はい、気を付けます。」

 俺は風邪引いてないけど。

「じゃあ、着替えてすぐ出てきますね。」

「よろしくねー。」

 一週間も経っていないはずなのに、なんだかここが久しぶりな感じがした。

 大方、原因はおとといのせいだろう。

 あとは、ミー子と一緒に風呂入ったりとかミー子と一緒に寝たりとか。

 うん、あれは、普通に緊張したな。

 って、そんなこと考えてる場合じゃない。

 着替えよう。


 俺の仕事は基本的に厨房での調理だ。

 ホールスタッフはあまり経験がない。

 今からホルダー内のストックを確認しておく必要があるな。

 ・・・自分のメニューの売り上げが気になったわけではない。

 確認すると、モンブランが減っていた。

「先輩、モンブランいくつ作っておきます?」

「あー、とりあえず5つで。」

「わかりました。」

 早速作業にかかる。

 うちの喫茶店は店長が衛生面にとても厳しいため、常に厨房がとてもきれいだ。すごく助かる。

 モンブランが残り5つ、作る量が5つだとして、最低でも80分はかかる。

 ・・・80分でモンブランは5つ消えるだろうか。

 うちにはほかのメニューだっていっぱいある。

 いくらモンブランが人気だからと言って、そんなピンポイントで無くならないだろう。

 最悪間に合わなければ待ってもらうか、他のメニューを頼んでもらうしかない。

 そういえばホルダー内にキウイタルトがなかったな。

 ・・・あれ?メニューにキウイタルトは入ってたっけ。

 もしかして、不人気でやめちゃったとかか?

「店長、キウイタルト、やめたんすか?」

「あー、あれねー。ごめん。」

 店長が急に申し訳なさそうな顔をする。

 あー、今回はダメだったか。

「午前中で全部売り切れちゃったんだ。」

「まあ、人気不人気は・・・え?今なんと。」

「午前中で全部売り切れたよ。いやー、すごい人気でさ。」

 え?人気でもうすでに全部売り切れたって?

 ま、マジか。

「んで、これじゃあ学生さん達が食べれないし、午前と午後で2回作ることにしたよ!」

「マジっすか!俺超嬉しいっす!」

「いやー、いいね。売り上げも好調ですよ。黒字黒字ぃ♪」

 店長が嬉しそうに言う。

 ああ、店長が今やってるその作業、タルトを作ってたのか。

 さて、俺もモンブランを作らないと。


「絢駒君、モンブラン作るのすごく上手になったよね。」

「そうですか?」

「うんうん、私のやつよりおいしいって常連さんに言われちゃったよ。」

「え、えーと・・・。」

 なんだか返答に困るな。

 こういう時は何て言えばいいんだ。

「褒めてるんだよ?その調子でほかのも頑張ってね!」

「あ、ありがとうございます。」

「よし、じゃあこれ焼き上がるまで休憩ね。」

「わかりました。」

 バイトに入ってから割と早く休憩に入れた。

 多分厨房の仕事って、慣れればホールスタッフよりだいぶ楽なんじゃないだろうか。

 焼き上がりまであと20分、何しようかな。

 今の時間は・・・、7時40分。

 今日のバイトはラストまでだし、8時まで休めばあとは10時まで働くだけだ。

 じゃあこれで作るのは終わりかな?

「おーい、絢駒。」

 先輩が厨房まで入ってきた。

 めずらしいな、先輩はホールスタッフ一筋の人だ。

「なんですか?厨房入りするんですか?」

「違うわアホ。お客さんからお前にご指名だぜ。」

 俺に指名?

 誰だろう。

 祈木だろうか。いや、俺はあいつにバイト先を教えていない。

 そういえば、ミー子がこの前店に来るって言ってたな。

 じゃあミー子か。

「ご指名ありがとうございます、ミー・・・。」

「美衣ちゃんじゃなくてごめんね?」

 席の一角に座っていたのは、俺の義姉、春女さんだった。

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