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滅亡国の大魔術師(笑)

懐かしきあの日の風景

どうしよう、何かを書きたいけど週一で投稿しないとスタックが切れちゃう…そして僕はとある手段に出た。

まだ三話しか投稿していない連載小説の外伝を出すという手段に……!

ごめんなさい。しかし反省はしていても後悔はしていない(`・ω・)キリッ

ぼんやりと病室のベッドで寝転がる俺は、何かする事はないかと暇を持て余していた。ゲームは持ち込めないし雑誌を読むのは趣味じゃない。本を読もうにも持っている本は全て読んでしまった。購買に行けば本の一冊や二冊はあると思われるがそこまでして読もうとは思わないし、購買まで行くのが先ず面倒だ。


「見舞客も来ないし…」


悲しきかな、通院や入院が日常茶飯事な俺を態々入院する度に見舞いに来てくれる人物などいない。居たとしても、厄介事を持ち込んで来る幼馴染み(仮)だけだ。

彼女でも作ればまた違ったのかもしれないが、生憎と素の俺がモテた事など一度もなく、毎年のクリスマスやバレンタインデーは虚しく一人で過ごしている。

暇だ……暇だーー!

点滴の針が打ってあり激しくは動けないので、動ける範囲でのたうち回り悶えるも誰も来ない。


「……え?誰も来ないとか本当寂しいんですけど!?看護師さん来ようよ!担当医もいつになったら俺を診察するんですかー!?」


白い病室に響き渡るその声に反応する者はいない。つまりは静寂。


「えぇー…今の俺めっちゃ恥ずかしい奴じゃん。一人で悶えて叫んで…」


思わず後悔と少しの羞恥心から頭を抱える。

しかし俺はいつまで入院してればいいんだろう。今回の入院は確か……。


「あれ?いつから入院してたっけ?」


あれ?ヤバくね?俺もうボケ始めて来た!?

大丈夫だ、落ち着け。そして昨日食べた料理の献立を思い出すんだ。

昨日は…あれ?思い出せないぞ?

やだー、本当にボケ始めて来てるじゃないですかー。え?本気と書いてマジで?


「……もういいや。寝てしまえっ!」


勢い良く布団を被り縮こまる俺。

べ、べべ別に不貞寝とかじゃねぇし!

誰に言うでもなく言い訳をして瞼を閉じた。



木々のざわめきに自然の懐かしい匂い。


「我らが守護者、その身に宿るは大いなる力。我らは讃えようこの地を、我らは敬意しよう精霊を。そして歓喜するここに生を受けた事を。我らが守護者よ、今歌を捧げそして願う。この国に守護の力を与えんとせんことを」


そして何処からともなく聞こえてくる歌声。その声は透き通っていてとても美しいが故に儚く感じるものだった。

ぼんやりと霞む脳でそれを聞き流しつつ思う。

あぁ、あの日もこれを聞いたな…と。

雨が降ったある日、俺は丘で体づくりをしていた。小さくあまり筋肉の付いていないこの体は大人のそれに大きく及ばないけど、他の同年代の子供と比べたら確実に強いと言う自覚がある。だからこそもっと強くなれるようにと頑張った。


「おーい、***!雨だから帰ろうぜ!」


上着を雨除けに駆け寄って来る友人はそう言って俺の腕を掴み帰らせようとする。

って待てよ、俺はまだ体づくりしたいんだって!


「俺の母ちゃんが言ってたぞ。それで風邪引いたら元も子もないってな!」


お前それの意味知ってて言ってるのか?


「ぅ……うるせーやぃ!兎に角帰ろうぜ、お前の母ちゃんに叱られちまう!」


それを聞いて俺は戦慄した。なんせ俺の母さんは怒ると途轍もなく怖いのだ。まるで女神のような穏やかな笑みを浮かべつつ、周りに漂う冷気は真冬並み…いや、雪山の如く冷たく恐ろしい。そんな母さんが怒ればたちまち比喩ではなく雷が落ちる。実際母さんが怒っている時に偶然だろうが雷が近くに落ちた事があった。あれは本気に恐ろしかったし、今でも身震いしてしまう。

お、おお。そうだな早く帰ろう!

先程までの威勢は何処へやら急ぎ足で慌ただしく帰る。俺と友人の家は丘を下りて少し歩いたところにあるので近いのがまだ救いだ。

ズボンの裾に泥が跳ねるのも気にせず歩くと、やがて夕食を作っているのか煙突から煙を吹いた家やこじんまりとした店々が見えてくる。

此処まで来ると帰って来たって感じがするなぁ。

そんな事を呑気に考えて足を動かしていた時だった。ふと声が聞こえた気がしてそちらを見る。


「我らが守護者、その身に宿るは大いなる力。我らは讃えようこの地を、我らは敬意しよう精霊を。そして歓喜するここに生を受けた事を。我らが守護者よ、今歌を捧げそして願う。この国に守護の力を与えんとせんことを」


やはりだ。歌声が聞こえてくる。けれど歌っていると思われる人物は見当たらない。

暫く俺がそちらを見つめていると友人は首を傾げた。


「おいどうしたよ?」


んー、いやなぁ。声が聞こえた気がしてさ。

そう言えば友人は寒気がしたのか若干青ざめた表情で腕をさすった。


「ば、馬鹿言うなよっ!そんな事ある訳ないだろ!」


何だよ怖いのか?


「こ、こここ怖くなんかねぇ!」


ニワトリみたいになっている友人を横目に気の所為だったのかと周りを見渡す。すると一本だけある木の根元に誰かが蹲っているのを見つけた。大きさ的に多分俺達と同年齢の子供だ。

おい、あそこ見てみろよ。人がいる。


「人……?」


チラリとそちらを見た友人はその子供を見つけると益々顔を青くして、まるで魚のように口を開閉する。

おーい、どうした?


「で、ででで出たーーーっ!!?」


踵を返して走り出した友人は俺を置いて素晴らしい速度で逃げて行った。ある意味尊敬する。しかしまぁ、俺はああ言うのを放っておけるタチではないので子供に近寄り目線を合わすべくしゃがむ。

子供はそんな俺に気が付いたのか伏せていた顔を上げ、その美しすぎる姿に俺は見惚れてしまった。


「……何か用?」


ポツリと囁くように呟かれた声は、確かに俺が聞いた声だ。

俺これから丘のふもとにある家に帰るんだけどさ、お前は帰らないのか?


「帰れない…」


どうしてだ?親と喧嘩でもした?


「僕は要らない子なんだ…だから、帰れないよ……」


顔を苦しそうに歪めた少女に俺の旨も締め付けられて、苦しくなる。だから俺は立ち上がって手を差し出した。

なら俺ん家来いよ。母さんも父さんもきっと歓迎してくれるよ!


「ほ、本当に?」


ああ、本当だ!

俺の手と顔を交互に見て迷った末、少女が選んだのは俺の手を取る選択肢だった。少女の手の冷たさと柔らかさに一瞬ピクリと体を揺らすも、その手を引っ張って丘を下りる。

雨に濡れても特に気にした様子のない少女を連れて歩けば、何故か体がほんのりと暖かくなった。


「あんた…ついに女の子を連れて来たのね……そんな気がしてたんだよ、あの人と同じで色男だからさ……」


帰った俺達を出迎えた母さんの一言に顔が赤くなるのを感じる。

ち、違うって!そんなんじゃねぇから!


「なぁにが違うだよ。一丁前に手なんか繋いじゃってさ。母さんにはお見通しなんだよ!」


見通さないで!てか恥ずかしいからそれ止めてくれよ!

グイグイと少女の背を押して母さんから逃すように自分の部屋へ連れて行こうとすると、いきなり母さんからストップが掛かった。


「あんた濡れた女の子をそのままにして置くつもり?…ほら、こっちおいで。お風呂に入れてあげるから」

「…はい、マダム」

「あら!マダムだなんて固っ苦しいね。お母さんってお呼びよ」

「お、お母さん…」

「まーっ可愛い子だよ!」


そんな陽気な母さんと困惑した様子の少女を見送って、はたと気が付いた。

あれ?服持ってってないじゃん!

幼馴染みと結婚して今はいない姉さんの部屋へと行き適当に服を見繕うと、急いで風呂場へ向かって扉を開ける。するとそこには真っ裸で股間に一物が付いた少女と対面する母さんの姿があった。

……え?股間の……え?


「…まぁ、あんたが困惑するのも分かるよ。……この子は男の子だ」


な、何だって!!?

唖然として思わず持って来た姉さんの服を落とすと、その音で我に帰り絶望した。

お、男……俺の初恋は男……!

困ったように眉を下げる少女….否少年を再度見ても、やはりその美しすぎる顔立ちは変わらない。ついでに言えば一物が存在しているのも変わらない。


「まぁまぁよく言うだろう?初恋はほろ苦いってね」

「……な、なんかごめんなさい」


申し訳なさそうに頭を下げる少年に、苦笑いする母さん。

ああ、どうして……。


「俺の初恋ぃぃいいいいい!!」


ガバリと勢い良く起き上がり目を見開くと、そこは病室だった。辺りを見渡して誰も居ない事を確認し頭を捻る。

あれ?俺なんの夢見てたんだっけ?なんかこう……悲しい感じと言うか、ほろ苦い感じと言うか…。

どんなに唸って考えても思い出せない夢だが、そんなに覚えていないという事は大したものではないのだろう。まぁいいかと諦めてもう一度横になる。

それにしても。


「見舞客来ねぇな……」


これに尽きる。


感想待ってます。投石も待ってます……

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