ある日の夢
その日、ホームセンターへ訪れた私は買い物途中、店の一角に足を踏み入れた。
「きゃあ!お願い、止めて!」
その叫び声に目を向けると、妊婦さんが男に注射器を向けられていた。
「何をしてるんですか!?」
「あんたは黙ってな!」
そう言って、男は注射した。
すると、妊婦さんは見る間に痙攣をし出した。
「ふ、ははは……」
男は痙攣する妊婦さんを見ながら、笑い出す。
異常な状況に恐くなり、私はホームセンターから逃げ出した。
ホームセンターを出て、落ち着く為に小さな喫茶店に入った。
暫くすると、外がざわめいていた。
「あんた、大変!逃げなきゃ!」
喫茶店の奥さんが、慌てて店に入って来た。
「何だ、おまえ。どうしたんだ?」
夫婦のやり取りを聞きながら、外に目を向けた私は愕然とした。
少し先に見えていた『くぐり』と、大きく書かれたホームセンターが消えていた!
逃げ惑う人たちを見て、私は慌てて喫茶店を飛び出し、家に向けて走り出した。
その間にも暴れている人。
信号は機能を無くし、車はクラクションを鳴らしながら、縦横無尽に走っていた。
私はそんな様子を横目に、姉と妹が待つ家へと急いだ。
家は貧しく四畳半に土間がある。頼りない鍵をかける。
焦る私に姉が声をかける。
「どうしたの?」
「姉さん、町がおかしいの!」
私は見て来た事を話した。
「家から出ない方がいいね」
「でも、姉さん。食べ物がないよ」
妹の声に、おそるおそる外へと三人で出て、店を向かう。
しかし、町の様子が変わり果てていた!
ホームセンターのあった方向から、町が消え失せていた。
私達は愕然として見ていたが、走り出す。
とにかく、ここにいては危ない。
人々の様子もおかしいが、逃げることが先だった。
暫くして周りを見ると逃げる人、それを追いかける人があちこちにいた。
それを見て更に恐怖心が募り、私たちは足を進める。廃屋を見つけ、三人で身を隠す。
何が起こっているのか、分からない。不安の中、身を寄せ合っていた。
カラ……
音がした。
呼吸を止めるように、気配を消そうとした。
が、それは顔を出した。
黒茶の色をした顔らしきもの、目は窪み暗い穴のよう。
「ひぃぃ……」
慌てて逃げようとしたが、遅かった。
妹の足を掴み、口のようなところへ持っていったそいつ。姉と二人で助けようと、妹を引っ張るが、力の差が圧倒的だった。
妹が噛まれたように見えた。
すると、見る間に妹が変わっていった。それはもう妹と呼べるものではなかった。
妹に噛みついたそいつは、姉をも捕まえた。
「あんなは逃げなさい!」
姉のその声に戸惑いながらも、走り出した。
しかし、周りは変わり果てていた。
たくさんの黒茶のものに、恐怖の中私は囲まれていくのだった。
そして、悪夢は繰り返す………
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