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女神の剣  作者: 蔵樹りん
第1章
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第14話『オークション』

「ほら、ここよ。オークションにかけられた輝石が並んでるわ」

「うわ……凄いね! まるで輝石の宝物庫だ!」


 アンリの言い回しにエレンが微笑して同意する。


 神殿のある区画に入った二人を出迎えたのは、アンリが口にしたようにまるで宝物庫と見間違えるような大部屋であった。


 天人達の技術によってか、宙には数多の輝石が浮いている。それら各種各色の輝石は武器やアーツなどの系列ごとに分けられ、並べられていた。広間の中は管理者である天人と、利用者である執行者達とでごったがえしていた。


「人が多いね」

「そりゃそうよ。輝石を売りたい人も、輝石を買いたい人も、皆ここにちょくちょく顔を出すからね」


 エレンは白い輝石が並ぶ区画へと歩を進める。その中での両手斧の系列の、さらに三角形の石が並ぶ場所で足を止めた。


「ここには両手斧の三角輝石トライが並んでいるわ。ほら、そこ見て。【真っ二つインハーフ】があるわ」

「本当だ」


 空中で光る神の文字の筆跡を読んだアンリ。【真っ二つ】と書かれたその場所には合わせて五個の輝石が虚空に浮いていた。


 エレンは石の一つに手を伸ばし、輝石を鑑定する為の言葉を発した。たちまち石から光が溢れ、巨大な斧の画像がこの場を占有する。


「この五つが全て【真っ二つ】よ。つまり今は五個売りに出てるってわけ」

「それは分かるんだけど……何だかすごく無用心だね?」


 エレンが並んだ輝石を手に取れたことを言っているのだろう。しかしエレンは小さい笑みと共に首を振る。


「大丈夫よ。一定以上の距離は動かせないようになってるわ。もちろん泥棒対策でね」


 そういうとエレンは触れていた輝石から手を離す。するとたちまち白の石は元の場所に戻り、整列した。


「取引のやり方は簡単よ。売る側はいくらで売りたいかを天人に申告してこの場に輝石を並べてもらう。そして輝石を買いたい人が天人に買値を申告する。ほら、それぞれの輝石のそばに小さく売値と買値が書かれているでしょう?」


 エレンが手近な輝石の下部を指し示す。そこには確かに二種類の数字が光る文字によって描かれていた。一つは400。もう一つは480と記されている。


「この石は400で売りに出されているわ。そして、今現在480の値で買おうとしている人がいるってこと。ちなみに売買の結果が出るのは翌日以降になるわ。つまり、今あたしがここでこれを500で買いたいと申告したら、あたしが買う権利を得ることになるわ。もちろん、もっと高い値をつける人がいたらそれで終わりだけどね」


 エレンの言葉にふんふんと頷くアンリ。


「まあ、このまま480でこの輝石が売れたとしましょう。その場合、買い手は480を支払ってこの輝石を手に入れる。売り手は最初に付けた値段の400に加えて差額の半分を手に入れることが出来るの。残りの差額の半分は仲介料として天人の懐に入るわ。まったく、がめついんだから」


 エレンの言葉に胸中で同意しながら、他の【真っ二つ】の輝石に目を配るアンリ。それぞれが400から420の間で売値が設定され、その全てに買い手がついているようだ。


「この人達と同じくらいの値段で売りに出せばいいのかな?」

「そうね。言い忘れてたけど、オークションを利用するのにはさっきの仲介料以外にも手数料がかかるの。手数料は売り買いするものの値段に比例してあがっていくから、まだ大した額じゃないけどね。だから可能なら一回の利用で売買を成立されたほうがいいわ」

「結構難しいんだね」

「まあ、慣れるしかないわね。今回は買い手もちゃんといるみたいだし、400くらいで問題ないと思うわ。もう少し欲張ってもいいかもしれないけど、ま、最初だからね。順当にやりましょ」


 アンリとエレンは近くにいた一人の天人に話しかけ、白の輝石を400で売りに出した。


「ふふ、きっと明日には売れるはずよ。楽しみね」

「うん!」

「じゃあ、他のところも見てまわろっか?」


 二人は数多の輝石によって彩られた広間をゆっくりと歩き出した。




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