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女神の剣  作者: 蔵樹りん
第4章
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第126話『地下迷宮(ダンジョン)の一画で』

「当たれえぇーーーーーーーっ!! わわっ!?」

「お姉ちゃん!!」


 マナの威勢のいい叫び声が途中で素っ頓狂なものへと変わり、そしてミナの絶叫がそれを上書きする。


 いつものように力任せの戦いしか出来ない姉を、これまたいつものようにフォローした妹――ミナ。少女が持つ巨大な両手鎚モールの直撃を受けた蜥蜴の戦士ははるか彼方へと吹き飛ばされた。受身も取れずに倒れた魔物を、追いかけたエレンの剣が串刺しにする。冷気を纏った剣をその身に突き立てられ、眷属は呪詛の声を漏らしながら灰となった。


 ここは地下迷宮ダンジョンの地下三階。そしてどうやら玉座の間のようだ。


 敵はアンリ達にとってはすでに見慣れた相手である蜥蜴の戦士達。群れなす【蜥蜴剣士リザードマン】。雄たけびをあげる【蜥蜴精鋭リザードマンエリート】。そして一際巨大な体躯、【重装蜥蜴ヘヴィガードリザードマン】。


 かつてとある地下迷宮の最奥で、魔術を操る青髪の少女と共に鱗を持つ簒奪者達と死闘を繰り広げたアンリとエレンだったが、今はその時よりも戦力が多い。もちろん二人の実力もそのころとは比べものにならないほど成長している。


 眷属の数そのものはあの時よりも多かったが、今の彼らにとってはもはや困難と呼ぶほどのものではなかった。


「うおおおおおおお!! 【頭骨砕きスカルクラッシャー】!!」


 サイファが振るった片手鎚メイスがうなりをあげ、盾で受け流そうとした【蜥蜴精鋭リザードマンエリート】の肢体をよろめかせる。その二足の蜥蜴に向かって、再度サイファは同じ言葉と動きと共に【正六面体の鎚キュービックハンマー】を振り下ろした。


 精鋭の名を持つ蜥蜴の戦士も、今度はそれを避けることはあたわず、鼻頭を潰されて倒れ、やがて彼らの死を表す灰となって宙に消えた。


 【頭骨砕きスカルクラッシャー】。使用しても精神力を疲弊する割合は比較的少なく、威力と速度を兼ね備えた、片手鎚メイス武術ウェポンアーツ中でも一、二を争う人気の技だ。


 この輝石を先日、サイファは己の魂の器ソウルフレームから外すことを一時期考えたのだから……人の価値観とは恐ろしい、とエレンは目の前の敵を切り裂きながら考えていた。


 金髪の少女によって鎧ごと胸を切られた【蜥蜴剣士】は不快な感触に身をおぞけさせた。彼らが苦手とする冷気が、剣閃を受けた場所から全身を覆いつくさんとばかりに広がったからだ。


 我を忘れ、凍傷から逃れようと無意味なダンスを踊ろうとした【蜥蜴剣士】は、その舞踏を見せることなく先刻の少女によってとどめをさされた。


 素早く剣を引き戻したエレンは軽く刀身を振り、次の敵を求める。


「くらええええええっ!!」


 リーマドータによって成長を褒められた両手剣の使い手ツーハンドソードマスター、アンリは雄雄しい声と共に肉厚の刃を振るう。アンリが一薙ぎするごとに、確実に虚空を新たな灰が舞い散った。


 しかし、その快進撃も甲高い金属音と共に止められる。


 アンリの剣を正面から受け止めたその相手は【重装蜥蜴ヘヴィガードリザードマン】。彼ら蜥蜴の眷属達を統べる女王クイーン


 アンリを見据え、【重装蜥蜴ヘヴィガードリザードマン】は笑って剣を押し返す。しかし、アンリも剣を押し付け、後退することはなかった。【重装蜥蜴ヘヴィガードリザードマン】の顔から笑みが消える。逆にアンリの口元に小さな笑みが浮かんだ。


 両者はどちらからともなく離れ、間合いを取る。


 蜥蜴の女王が持つは、常人では持ち上げることも出来ないであろう形状と重量を備える片刃刀。その巨躯をもすっぽりと覆い隠せる長方形の盾。


 少年が掲げるは女神の力が宿りし両刃の剣。飾り気のない、敵を粉砕するためだけに生まれたかのような金属の塊、【打ち壊すものブロークン】。


 アンリは刃を簒奪者へと向け、吠えた。


「来るなら来いっ!!」


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