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女神の剣  作者: 蔵樹りん
第3章
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第109話『戦いの終わりへと。カウントダウン、開始』

「【氷強化アイスエンハンス】!!」


 起き上がってきたサイファがもう一枚のカードを用い、アンリの両手剣を氷の魔術で包み込む。


 翼の抉れた竜はもはや飛翔するのも難しいだろう。ここが決め時だ。破壊力ならアンリとマナの二人がこのメンバーの中で頭一つ抜けている。


 アンリは剣を握り直す。全ての気力を注いで戦いに挑むべき時が来たことを、アンリ以外のメンバーも理解した。


 【尾長竜ワイバーン】は吠え、先ほど己の身体に致命的な一撃を加えた人間に向けて右脚を振り上げた。マナはお腹の辺りをしたたかに蹴られ、重い武器を手にしたまま跳ね飛ばされる。


「やあっ!!」


 アンリは力強く踏み込み、一本だけで身体を支えている左の脚へ刃を振るう。氷の魔力による青い光の残像を従え、冷たい刃が簒奪者の大腿部を両断せんと襲い掛かった。


 しかし【尾長竜】は折れかかった翼をもはためかせ、自分を跳躍させた。もはや竜とはよべず、ろくに空を舞うこともできない鶏のような飛び方であったが、それでもアンリの剣撃をかわしてのけた。


 ほとんど滞空出来ずに着地した【尾長竜】の元へとアンリは再び剣を構えて駆け寄った。エレンもそれに続く。ミナは一瞬姉の下へ行こうか思案していたものの、今の自分に出来ることを考え、アンリとエレンを追いかけた。


 その間に先ほど竜の打撃を浴びたマナもふらふらと起き上がる。


「ぐっ……ちっくじょっ……」


 痛みに顔をしかめ、罵声を吐きながらなんとか両の足で地に立つマナ。少女は己の身体を見下ろす。


 竜の蹴りによって【可愛い強兵鎧リトルブリガンダイン】の腹部を覆う金属片は無残にもへしゃげ、もしくははじけ飛んでいた。いつぞや受けた重装蜥蜴ヘヴィガードリザードマンの刀の一撃が可愛く思えるほどの威力。神々の作りし防具でなければ確実に致命傷となっていただろう。


 そんな少女の側へと駆け寄る鎧の塊。


「マナ、これを使え」

「あ、ありがとうサイファ……でもいいの?」


 サイファの手には液体の入った瓶が握られている。執行者の必需品たる【回復薬ポーション】だ。マナはサイファを見上げるがその表情は兜に包まれており分からない。


「なに、あの時の借りだと思え。それに仲間なのだから助け合うのが当然だ」

「……うん」


 あの時の借りとはアンリ達が【飽食の不定形ブロブ】を倒し、マナとミナによってサイファが助け起こされた時のことを指していた。この際、ミナが持つ【回復薬】によってサイファの傷の手当が行われている。


 サイファの手からマナへと【回復薬】が手渡されると、その空いた手に新たな瓶が呼び出された。こちらは自分用の【回復薬】である。いくら頑丈な鎧に包まれているとはいえ、サイファは【尾長竜】の猛攻を何度も受けているのだ。傷を癒しておかないと足手まといになりかねない。


 マナは蓋を親指一本で開けると、中身をこくこくと飲み干した。たちまちマナの全身を苛んでいた痛みが少しずつ引いていく。マナはいつものように八重歯をむき出しにした笑みを浮かべ、巨大な斧を握りなおす。サイファも傷を癒す秘薬を飲み終えた。


「ふう、これで行けるわ」

「ああ、頼りにしてるぞ、マナ!! オマエとアンリの破壊力が決め手だからな!!」


 サイファは兜の面頬を下ろす。狭くなった視界に映るのは仲間達と死闘を繰り広げる【尾長竜】。


 皆、持てる力を最大限にまで引き出し、回復の手段ももう残り少ない。しかしそれを代償にして【尾長竜】の生命力を削り、最大の武器である飛行能力をも半ば封じることが出来た。決着の時は近い。


 マナとサイファはまだ乱戦の続く戦場へと駆け出した。


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