First battle 砂漠の穴 【Ⅲ】
羽を広げた魔物の姿は先ほどまでとは大違いで、とても美しかった。
海〇コーポレーションの海〇社長が、「ふっ、、、ふつくしい、、、!」といってしまうくらいに美しかった。
蝶のような姿をしていて、羽を羽ばたかせるたび、光の粒のようなものが当たりに飛び散り地面すれすれのところで消えた。
しかし、鳴き声は変わらず、頭の中を切り裂くような恐ろしい声を発していた。
言葉による効果音で、その鳴き声を正確に表すことはできないと思う。が、あえて、あらわすというのなら、「ギャアアアアアア」とか「キェエエエエエ」とかだろう。
まあ、とにかくその魔物は美しくも恐ろしかった。
とりあえず、俺は考えた。この魔物にどうやって攻撃をするかを、、、
下手に近づくときっと羽ばたきによる風で吹き飛ばされるだろう。やつは大きい。
だから、遠距離攻撃でいくのが一番だが、、、この魔法の杖による魔法で、やつのところまで届くのか?
この魔法の、射程距離は大体5mくらいだと俺は思う。今までそうだったからだ。
俺の今いる位置は、やつから20mくらい離れている。だから、やつに近づかなければいけないが、そう簡単にはいけないだろう。なぜなら、俺が今いる位置でさえ、台風がきたときみたいな風が吹き付けてくる。ここが限界だろう。
とりあえず、やつはまだ移動をしてないから、風で吹き飛ばされる心配はないだろうけど、、、
どうやって攻撃するか、、、
とりあえず、リオルの武器に頼ってみる?
リオルの武器は、射程距離がきっと長いだろう。
しかし、リオルの武器の威力が高めでも、一人では倒せないはずだ。
「あっ、そうだ。」
俺は小声でつぶやいた。
もう二つの武器があったことを思い出した。
アイテムボックスから、馬鹿でかい十字手裏剣を取り出す。
と、同時に説明がながれる。
「十字手裏剣です。使い方は、ブーメランを飛ばすように投げ対象物にダメージを与えます。自分の周りでぐるぐると回すと、強い風が発生します。」
なるほどな。
ということは、コレをまわしながら進んでいけば、あいつの風にも負けないんじゃないか?
そう思い、自分の周りでぐるぐると手裏剣を回す。
その光景を、ボヌールとリオルとオルゼーが興味深そうにみている。
「やっぱり、日本人はみんな忍者って言うのは本当なんだ。」
「びっくり~。」
「いや、それはちがうぞ。ボヌール。オルゼー。日本人はみんな侍なんだ。彼も侍なんだよ。だから手裏剣を使ってるんだよ。」
「えっ?でも私、侍は手裏剣を使わないって聞きましたよ?」
「何を言ってるんだボヌール。忍者はしのぶだけだよ。武器は使わないよ。」
「えー?」
「私は、お姉ちゃんが言ってることが正しいと思う。」
「やっぱりそうだよねー。オルゼー。」
「いやいや、二人とも間違ってるって。侍しか武器は使わないのー。」
外国人って、侍のこととかあんまり知らないんだね。
「三人とも間違ってるよ。手裏剣を使うのは忍者だけど、僕は忍者じゃない。」
三人とも「?」な顔をしている。
まあいい、今はそんなことを説明してる場合じゃない。
俺は、手裏剣を大きく回す。するとほんとに強い風が吹き始めた。
よしこの調子なら、、、
そして、そのまま、前へ進む。
少しずつ、慎重に。
風が周りで強く吹いているため、やつからの風は当たらない。
「なるほど、そうやって近づいていき攻撃って訳か、、、」
リオルが納得の表情を浮かべている。
だんだん、距離が短くなってきた。
そして、俺はあることに気づいた。
-近づいて、どうする?
確かにこの方法なら、やつに近づけるが、両手がふさがってるじゃないか。どうやって攻撃するんだ?
後ろに回る?
回転されておしまいじゃないか?
いやでも、とりあえずそれで行こう。
どんどん近づく。
そして、やつとの距離がゼロになったとき、あることが分かった。
何も攻撃しなくてもいいことを。
やつが、俺の周りで吹いている強い風に巻き込まれて吹っ飛んだのだ。
魔物は、かなり遠くのほうへ飛び、地面にたたきつけられた。
ドスンという鈍い音が響きわたる。
そして、魔物が起き上がることはなかった。
「やったー!」
ボヌールが喜ぶ。
「倒したー!」
ボヌールがオルゼーより喜ぶ。
なんかオルゼーのセリフ奪われてる?
とりあえず、俺がみんなの近くに戻る。
「やったな!」
リオルが笑いながら言う。
すると、オルゼーが抱きついてきた。
「ママの仕返しをしてくれて、ありがとうおにいちゃん!」
そして、おでこにキスされた。
「おいおい、顔赤くなってるぞ」
リオルが笑いながら言う。
「べ、別に赤くなってなんか、、、」
「え?照れてるんですか?」
ボヌールまでからかってきた。
ちょっと、悔しい。
まあ、その後、一通り喜んでまた先に進むことになった。
べ、別に幼女に発情なんかしないんだからね!ゴホンゴホン