First battle 砂漠の穴 【Ⅱ】
オルゼーを仲間に加え、先に進む。
だんだん、周りの木々が減ってきた。
そしてこの砂漠がどれほど広いのかを見渡せるようになってきたところで、オルゼーが叫んだ。
「待って!」
「どうしたの?オルゼー?」
オルゼーが小刻みに震えていた。
「さっきの穴、このあたりにあったの。」
あたりを見渡してみる。
すると、少し先の方に小さな穴が見えた。いや、実際は大きな穴なのかもしれないが、ここからだと小さく見える。
「あの、穴のこと?」
ボヌールが指を指して聞く。
「うん。でも、あれ?あの穴、さっきより遠いところにあるよ。」
穴が、さっきよりも遠いところにある?
普通、生物が獲物を待ち構えて穴を用意していたのなら、同じところに穴があるはず。それにもしその生物が移動していたとしても、きっと何か跡があるはず、、、それなのに何にも痕跡が見当たらない。
どうして?
少し奇妙に思ったがあえて気にしないで、穴のほうへ向かう。
いずれにせよ、戦わなくてはいけないと思うから。
この穴を掘ってる魔物は、どうやら穴ごと動くことができるようだ。だから、きっと俺たちが回り道をして回避したとしても、きっと、追いかけられる羽目になるだろう。
そして、オルゼーのためにも敵を討たなければならない。
ボヌールもリオルもどうやら同じ気持ちらしく、何も言わず僕についてきてくれた。
穴に近づくにつれて、穴がどれくらいの大きさなのか分かってきた。
それは、とてつもなく巨大だった。
どれくらいおおきいかというと、六本木ヒルズを横にして入りそうなくらいだ。
そして、穴まであと数十歩というところで立ち止まる。
何か音がする。
ずずず、ずずずと何かがうごめくような音が。
ごくりとつばを飲み込み、武器を用意する。
リオルは予想通り、どっかのSFででてきそうな銃を用意した。
ボヌールは、ファンタジーで出てくるような剣を用意した。
そして俺は、、、とりあえず魔法の杖を出してみる。
『えっ?杖?』
ボヌールとリオルがこの緊張感たっぷりの状況で、二度見をした。
ちょっとシュールな光景だ。
「うん、魔法の杖だけど、なにか?」
ほかの人が驚くようなことができてちょっとうれしくなった俺、、、変わってるかな?
「へ、へえ~」
驚きが隠せない二人は軽く動揺しながらも、穴のほうに向き直る。
「じゃあ、いきますか。」
リオルが軽い感じで言った。
オルゼーが震えている。
「安心して。俺たち絶対死なないから。そこで待ってて。」
オルゼーを安心させるために、軽く笑顔で言う。
オルゼーがこくりとうなずく。
そして、俺が手始めに、呪文を唱える。
砂の中にいるんだから、、、
「ドロップ!」
水玉が中に浮く。
それが急にとげのようになり穴の中に向かっていく。
ずと音がなる。
そして急に音が鳴り止んだ。
とたん、穴から足が大量に飛び出てきた。
たこの足のようなかんじだ。
その足をめがけ、リオルが銃を撃つ。
その銃はすごい威力だった。反動だけで、そこら辺の砂が一気に舞い上がった。
砂から出てる足の一本がちぎれる。
キグアアアアアア
この世のものとは思えない鳴き声が響き渡る。
「くっ」
思わず耳をふさいでしまった。
その瞬間、一気に地面が盛り上がった。
そして、魔物の本体が現れた。
それは、すごくでかかった。
さっきの穴がなくなってた理由はそれだった。
この魔物がこの砂漠だったからだ。
この砂漠はもともと、低い土地だったが、この魔物が居座るようになったせいで、一気に土地が高くなっていた。しかし、魔物の口の部分は砂がなくなってないと、呼吸ができない。というわけで、魔物の口の部分だけ、ぽっかりと穴が開いていた。そして、この魔物が動くと、この砂漠はすべて魔物の身体のうえなのだから、砂漠全体が動き、まるで穴が移動したように見えていたのだ。
すべての地面が一気に盛り上がる。
ムカデのように長い身体だ。
「ドロップ!ドロップ!ドロップ!」
大量に水玉ができ、大量に魔物にとげ状になって襲い掛かる。
その水玉が魔物に当たるたび、すごい悲鳴が響き渡る。
そして、地面がグネグネと動く。
下手をすれば、バランスを崩して倒れてしまいそうだ。
リオルは、銃を魔物の口にめがけ撃っている。のどをつぶしてこの魔物の声をどうにかするのと、歯や、さっき出ていた、足ではなく、食べるために動く、、、なんと言ったらいいんだろう、、、ひげ、、、そうだ、ひげを破壊する気なのだろう。
ボヌールはオルゼーが魔物から落ちないように、守っている。
とりあえずこのままダメージを与え続けよう。
しばらくそうやって戦闘を続けていると、魔物の様子がだんだん変わっていった。
そろそろ、倒れるか?
そう思っていたら、その期待を完全に裏切る展開となった。
魔物は倒れるどころか強化しだしたのだ。
そう、魔物は脱皮を始めた。
今、いる場所がどんどん下がっていく。
「おおっと」
みんながそれぞれに転びそうになりながら、必死で立っている状態を維持する。
オルゼーは今にも泣き出しそうだ。
魔物が脱皮を終えると、魔物の全体像が見渡せるようになった。
魔物が脱皮したせいで、今までいた位置の高度が一気に下がり、魔物の大きさが分かるようになったのだ。
しかし、このままでは魔物につぶされてしまう。
あわてて、どんどん魔法を放つ。
リオルも銃をがんがん撃つ。
すると、魔物が動かなくなった。
やったか?と思うと、魔物が飛び出した。
羽を広げたのだ。
そう、さっきのは脱皮ではなく、羽化だったのだ。
魔物の生態はよく分からないが、きっとさなぎの過程がないのだろう。
「くっ、これはまずいか?」