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3 ライバル?

雪村霙ゆきむらみぞれです。よろしくお願いします。」


雪のように白い肌。真っ黒でツヤツヤ輝く長い髪。伏せ目がちの細い目。

日本人形という形容詞がぴったりくる。うわさのユキちゃんだ。


火曜日の放課後、囲碁部での待ちに待った自己紹介。


たなかくんのハッピーボイスを聞けた喜びと、その視線の先のユキちゃん。

一年生の間でもう、人気がある。普通、目はパッチリ二重が美少女のお約束。

でも、ユキちゃんは一重。そこがいいんだって。クラスのみんなが言ってたっけ。

でも、少し休みがち。彼女が席に着いているのを見れた日はいいことがあるとかなんとか・・・・。たぶんガセ。でも、それぐらい彼女は学校に来ない。じゃなかったら、早退、保健室の常習。体が弱いといわれたら信じるしかないくらい、色白で華奢なんだから。

とうぜん、ユキちゃんの声を聞くことも珍しく、だから今、囲碁部全員が注目している。たなかくんがユキちゃんを見てるのも、それが理由としておきたい。見とれちゃってるなんてことないよね。


「入部の理由は私が引っ張り込んだから、よね。」


佐竹先生がユキちゃんに笑いかけると、ほんの少し頭を動かしてうなずいて見せた。サラサラの髪が光に反射してきれい。

先生はどうやら余計なことをしてくれたらしい。

あたしの自己紹介の間中、たなかくんがこっちをみることはなかった。


話題の中心はユキちゃん。それはいい。でも、たなかくんの視線を独占しているのはまずい。とりあえず、その輪の中に入ってみるか。


「雪村さんが学校に来るなんてめずらしいよね。」


「あたし、今日ツイてるのかも。」


薫くんとレイがうれしそうに話しかけるのをきっかけに先輩方から質問が飛ぶ。


「めずらしいってなに?先生に引っ張り込まれたってことは、わけアリだ。」


斉藤先輩、目じりさがってませんか?それなら、先輩、がんばってものにしちゃってください。


「体、弱いので。」


そっけないユキちゃん。佐東君が替わり?に説明している。至れり尽くせりだ。うらやましい。


「雪村さん、めったに席にいないんです。欠席も多いけど、早退や保健室の住人と化してることもしばしば。でも、人目を引くので存在感はある。そんな雪村さんが席に着いているのを目撃したら、いいことがあるってうわさです。」


「そう、男子人気も高いけど、女子の間でも人気あるんですよ。だって見たいし。今日、きっといいことある気がする。」


レイがあたしに同意を求めてきた。うん。とうなずいて、たなかくんをみるとやっぱりまだみとれてる?無口だ。


「そうね、みんな雪村のこと見れてよかったわね。田中もそのうわさしってるわね?」


佐竹先生に聞かれて振り向くとあたしじゃなく、たなかくんにだったみたい。


「ああ、田中がふたりね。どうしようかな。彼方とみなみね。田中、あなた、カナタでいいわね。」


どうやら、先生はあたしを田中、たなかくんをカナタと呼ぶことにしたみたいだ。あたしも調子に乗ってかなたくんと呼んだら・・・いや、やめておこう。まだ、しっかり名前と顔をおぼえてもらえてなさそうだ。


「いや、おれ、田中がいい。」


「あらそう。じゃあ、あなたは田中、でこっちは田中さんにしておこうかな。」


「「はい。」」


ふたり同時に返事をして顔を見合わせた。でも、すぐそらされた。そこ、普通、はにかんだり照れ笑いとかしませんか。


「うわさって、席に着いてるところをみたら、だろ?今日のはただ目撃したってだけじゃないか。」



そのうえ、この言いようは・・・みんな休みがちのユキちゃんに気を使ってることに気づいてないんだろうか。たなかくんって結構さめてるのかも。



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