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第55話 世界の外側へ
『世界が完成したなら』
『次は、世界の外側を整理しよう』
紙に書かれた文字を。
俺は何度も読み返した。
「……外側を整理する?」
リナが首を傾げる。
「世界の外に行くってこと?」
「たぶん」
アルベルトが腕を組む。
「しかし」
「世界の外など」
「どうやって行く?」
「それを今から探す」
俺は。
紙を裏返した。
何もない。
だが。
【始原整理】を発動すると。
紙の中に隠れていた構造が浮かび上がった。
【外部接続手順】
【第一段階】
【世界境界の外側へ接続】
【第二段階】
【観測者による座標固定】
【第三段階】
【始原整理による通路構築】
「……」
俺は。
顔を上げた。
「できる」
ミラが。
驚く。
「本当に?」
「ああ」
「でも」
「問題がある」
「何?」
「誰かが」
「この世界に残らないといけない」
エリスが。
すぐに言った。
「私が残る」
「え?」
「私は」
「世界との接続が強いから」
「外に出るより」
「ここにいたほうがいい」
俺は。
首を横に振る。
「駄目だ」
「どうして?」
「また」
「誰か一人に負担を押し付けることになる」
エリスが。
少し黙る。
「でも」
「世界を守るなら」
「必要じゃない?」
「必要なら」
「方法を変える」
俺は。
世界の構造を見る。
今の世界は。
外側との境界を持っている。
その境界を。
一本の線として考えれば。
「境界そのものを」
「二重にすればいい」
アルベルトが。
首を傾げる。
「二重?」
「外へ出るための境界と」
「戻ってくるための境界」
「二つを同時に作る」
【境界整理】
【新規構造】
【往復境界】
構築開始。
しかし。
すぐに。
【失敗】
【観測者の座標固定が必要】
「やっぱり」
俺は。
新しく生まれた少女を見る。
「名前は?」
少女は。
まだ少し恥ずかしそうにしている。
「……ノア」
「ノア?」
「うん」
「それがいい」
ミラが笑う。
「ノア」
「あなたが」
「世界を見ていてくれる?」
ノアは。
小さく頷いた。
「うん」
【観測者:ノア】
【座標固定開始】
世界の周囲に。
淡い光が広がる。
【固定率】
12%
31%
54%
「順調……」
だが。
その瞬間。
空が。
大きく揺れた。
「また来た?」
リナが構える。
違う。
今度は。
来訪者ではない。
世界の外側から。
巨大な影が。
こちらを見ている。
【未知干渉】
【接続試行】
【対象:世界】
「……誰だ?」
俺が叫ぶ。
返事は。
なかった。
代わりに。
世界の境界へ。
一本の黒い線が走った。
俺は。
すぐに整理する。
だが。
その線は。
俺の権能を避けた。
「……」
【対象:世界外構造】
【始原整理との干渉を回避】
「逃げた?」
ノアが。
静かに言った。
「違う」
「え?」
「見てる」
「……」
「私たちが」
「どうするのか」
俺は。
空を見上げる。
「観測者だから分かるのか?」
「うん」
ノアは。
頷く。
「外側にも」
「たくさんいる」
「どのくらい?」
「分からない」
「……」
「でも」
ノアは。
空を指差す。
「一つだけ」
「今」
「こっちに来てる」
「誰?」
ノアが。
答える。
「名前は」
「知らない」
「でも」
「さっきから」
「ずっと」
「あなたを見てる」
俺は。
空を見る。
何もない。
でも。
【始原整理】には。
はっきりと見えた。
一つの構造。
それは。
人間の形をしている。
白い髪。
黒い服。
そして。
胸元に。
俺と同じ紋様。
「……また」
「俺と同じ?」
エリスが。
俺を見る。
「蓮」
「何?」
「その人」
「私たちを見てるんじゃない」
「……?」
エリスが。
空を指差す。
「蓮だけを」
俺は。
息を呑む。
その瞬間。
声が響いた。
『ようやく』
『外へ出る気になったか』
「……!」
聞き覚えのない声。
でも。
どこか。
懐かしい。
『なら』
『迎えに行こう』
空に。
巨大な扉が現れた。
扉には。
俺が最初に見た。
【整理整頓】
その文字が刻まれていた。
「……」
俺は。
言葉を失った。
「なんで」
「俺のスキル名が」
扉の向こうから。
声がする。
『それが』
『お前が最初に』
『私から借りた名前だからだ』
そして。
扉が。
ゆっくり開いた。
その向こうには。
この世界より。
さらに巨大な世界が。
無数に広がっていた。




