↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/70

26

第26話 狙われた公爵家


王都に戻ると。


街は騒然としていた。


「アストレア公爵邸が襲撃された!」


「魔物まで出たらしいぞ!」


「王都の結界も一部消えてる!」


人々の声が飛び交っている。


エリスは馬車の中で黙っていた。


「エリス……」


「大丈夫」


そう言う声は。


明らかに震えていた。


「お父様は……大丈夫だよね」


「きっと大丈夫」


俺はそう答えた。


でも。


確信なんてない。


馬車が公爵邸へ近づく。


遠くからでも分かった。


屋敷を囲む結界が。


大きく破壊されている。


門は吹き飛び。


庭には黒い跡がいくつも残っていた。


「これは……」


アルベルトが絶句する。


「誰がこんな……」


リナが呟く。


フェンリオスが唸った。


「グルルル……」


「危険?」


フェンリオスは低く唸り続ける。


俺は構造解析を使った。


【対象:結界】


【状態:破損】


【破損原因:外部干渉】


【使用者:不明】


「……黒い糸が残ってる」


「第三封印の時と同じか?」


アルベルトが聞く。


「たぶん」


俺は地面に手を触れる。


すると。


黒い糸の残骸が。


一本ずつ浮かび上がった。


その先は。


屋敷の中へ続いている。


「まだ誰かいる」


俺たちは屋敷へ走った。


廊下には誰もいない。


使用人も。


兵士も。


誰一人として。


「静かすぎる……」


エリスが呟く。


そのとき。


奥から声が聞こえた。


「エリス……?」


「お父様!」


エリスが走り出す。


俺たちも続く。


広間には。


一人の男性が倒れていた。


銀髪。


厳しい顔。


胸元には黒い亀裂のようなものが刻まれている。


「お父様!」


エリスが駆け寄る。


「……エリスか」


「大丈夫?」


「ああ……まだ死んではいない」


その言葉に。


エリスの目から涙が落ちた。


「よかった……」


俺は男性を見る。


【対象:アストレア公爵】


【生命活動:低下】


【外部干渉:あり】


【魔力回路:損傷】


【記憶構造:正常】


「治せる」


「本当?」


エリスが顔を上げる。


俺は公爵の胸に手を置いた。


「整理」


黒い糸が。


ゆっくりと抜けていく。


公爵が苦しそうに息を吐く。


「……っ!」


そして。


黒い欠片が床に落ちた。


【外部干渉:除去】


【魔力回路:一部修復】


「これで大丈夫」


「ありがとう……」


公爵は俺を見た。


しばらく黙って。


「君が……レンか」


「はい」


「娘を助けてくれたそうだな」


「助けたというか……一緒に旅してるだけです」


「そうか」


公爵は少しだけ笑った。


だが。


その表情はすぐに険しくなった。


「ならば、話しておかねばならない」


「何を?」


公爵はエリスを見る。


「我が家が狙われた理由だ」


エリスが息を呑む。


「……私のせい?」


「違う」


公爵は首を振った。


「正確には――」


彼は胸元を押さえながら言った。


「アストレア家そのものが、あるものを守ってきたからだ」


「あるもの?」


俺が聞く。


公爵は立ち上がる。


そして。


広間の奥にある巨大な肖像画へ近づいた。


「この家が公爵家になったのは、数百年前だ」


肖像画に描かれているのは。


初代アストレア公爵。


その手には。


見覚えのある白い箱が描かれていた。


「……それ」


俺は自分が持っている箱を見る。


「同じだ」


公爵は頷いた。


「その箱は代々、当主だけが受け継いできた」


「中には何が?」


「本来ならば」


公爵が答える。


「誰にも開けてはいけないものだった」


俺は箱を見る。


「でも、もう開いてます」


「……そうか」


公爵は驚いた顔をした。


そして。


俺の手の中にある紙を見る。


「その文章を見たのか」


「はい」


公爵の顔色が変わる。


「ならば……もう隠す意味はないな」


「何を?」


公爵はエリスを見た。


「アストレア家は」


「代々――」


「世界核の器を守る一族だ」


「……!」


エリスが固まる。


「じゃあ」


俺はエリスを見る。


「ずっと昔から……」


「そうだ」


公爵が答える。


「我々は、器を守るために存在してきた」


「でも」


俺は疑問を口にする。


「だったら、どうしてエリスの魔力を封印したんですか?」


公爵は黙った。


「……」


「それも、世界核を守るため?」


「違う」


公爵の声が低くなる。


「封印したのは」


「エリスを守るためだ」


「……え?」


公爵は苦しそうに目を伏せる。


「世界核が目覚めれば、器は世界の魔力を受け続ける」


「それは知ってます」


「だが」


公爵は拳を握った。


「器が完全に目覚めた場合」


「器自身が――」


「世界核そのものになる」


エリスが青ざめる。


「……私が?」


「そうだ」


公爵は静かに頷いた。


「だから私は」


「娘のお前を普通の人間として生きさせるために、魔力を封じた」


「……」


「落ちこぼれと呼ばせたのも」


エリスが顔を上げる。


「わざとだったんですか?」


「そうだ」


エリスの瞳に。


涙が浮かぶ。


「どうして……」


「力がない娘なら」


公爵は苦しそうに笑った。


「誰も器だとは思わない」


「だから私は、お前を守るために」


「ずっと――」


そのとき。


窓ガラスが。


突然、粉々に砕けた。


黒い刃が飛んでくる。


「危ない!」


俺はエリスを抱き寄せる。


刃は俺の背後の壁に突き刺さった。


そこに。


黒い文字が浮かび上がる。


『器の封印を解け』


『さもなくば――』


文字が変わる。


『この国から順番に消していく』


俺は刃を抜く。


そして。


構造解析を使った。


【対象:黒刃】


【構成:魔力・外部構造】


【発信元:不明】


【追跡可能】


「……逃がさない」


俺は黒刃に手をかざす。


「整理する」


黒い刃が。


光へ変わる。


そして。


一本の線が。


王都の外へ伸びた。


その先にあるのは。


北。


かつて。


第三封印が存在していた場所だった。


俺は拳を握る。


「……あいつだ」


黒衣の男。


【分解】を使う。


世界を壊している敵。


でも。


今回の目的は。


エリスを殺すことじゃない。


封印を解くこと。


俺は気づいた。


「あいつ……エリスを利用して、世界核そのものを奪うつもりだ」


そして。


公爵邸の地下から。


ドクン。


巨大な鼓動が聞こえた。


エリスの胸元の紋章が。


ゆっくりと。


赤く光り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。