待つ時間。
「この辺かな。やっぱナビ入れないと忘れてるな。」
やっぱ、平日は車少ないな。
有給なんていつぶりだろう。
車を走らせていると、目当ての神社の近くまでやってきた。
ん、止まった。
対向車がゆっくり速度を緩めて、停車した。
駐車場か?
俺も停められるかな。
対向車に近づいた時、止まっていた車の前には、横断歩道。
と思ったら、横からゆっくりと歩行者。
お年寄りの夫婦か。
足の悪い妻に寄り添って、夫が手を引いている。
対向車の前をゆっくり通り過ぎた後も、車はまだ停止したまま。
自分の車もちょうど横断歩道に差し掛かったので、ゆっくり停車した。
夫婦が横断歩道を渡り切った時、対向車もゆっくり動き出した。
駐車場じゃ、なかったんだな。
自分もゆっくり、アクセルを踏み、車を発進させた。
そのまま車を走らせていると、駐車場を見つけて、停めることができた。
神社に向かう道を歩いていたら、喫茶店を見つけた。
喉も乾いていたので、コーヒーでも飲んでゆっくりしよう。
テラス席に座り、のんびりと辺りを見回す。
観光地でもある場所のはずなのに、今日は人もまばらだ。
すると車も少ない道に、
向き合う2台がゆっくり停車した。
気になって、思わず立ち上がって様子を見ると、
横断歩道を挟んでいる形になっている。
小学生の男の子が2人、手を上げてゆっくり、
横断歩道を渡っているところだった。
二人が横断歩道を渡り切るまで、車は動かなかった。
待つ……。
俺は、誰かを待ってたこと、あったかな。
わざわざ、会社まで書類の確認に来てくれた。
打ち合わせがあったわけじゃない。
それでも話をしにきてくれた、あの人のことも——
「お疲れさまです。わざわざありがとうございます。」
「いやいや、お互い様ですから……」
今、急ぎなんだよな……。
「すいません、少し立て込んでまして、……」
——俺は、相手の声を聞いていたか。
あの時、時計を確認してた。
それだけ、だったかもな。
相手の時間も動いてるんだよな。
待つ時間には、何ができるんだろう。
ゆっくり腰を下ろして、コーヒーを一口飲む。
熱いな。
少し、歩くか。
時計を見ると、もう昼を過ぎている。
小学生が増えてきた。
子供の騒いでいる声が聞こえて、目を向けると、幼稚園もある。
ここも、人の時間が流れてるな。
神社でお参りの後は、お土産屋を見て回った。
「すいません、これ。50個入りのやつ、一つ下さい。」
「はーい、ありがとうございます。」
「今日は、人が少ない方ですか?」
「そうですね、土日よりは。
でもね、平日しか来ない人もいるんですよ。」
「あぁ、そうなんですね。」
「いつでもあんまり変わらないですね。私たちには。」
「そう、ですか。」
「はい、どうぞ。お待たせしました。」
「ありがとうございました。」
いつでも、変わらない……か。
帰り道、車を走らせていると、
俺の視線は、自然と横断歩道を確認していた。
「癖になってるな。」
当たり前、なんだよな。
次の日の休み時間、
取引先にお土産を持って行くことにした。
「こんにちはぁ。」
「あれ?今日なんかありましたっけ。」
「あ、いえ、ちょっとお土産持ってきたんで、
お渡ししたかったんです。
よかったら、皆さんで召し上がってください。」
「え?
あぁ、お気遣い頂いて恐縮です。」
「あの、先日は、ゆっくりお話しできなかったので。
少し、視野が狭くなっていたのかもしれません。」
「んん……それは私も同じですよ。
お互い様ですから、そういう時もありますよ。
お昼、よかったらご一緒しませんか。」
「ありがとうございます。」




