帰還方法
「なるほど……洞窟にいたが気付いたら、ダンジョンだったと」
「状況だけを抜き取ると、そうなりますね」
「そうなんです!光と音がぶわぁ――ってなって!と思ったら、薄暗い上に悲鳴聞こえるし、駆け付けたらお兄さんピンチ!みたいな感じでした!」
「話聞く限り、謎だらけだがそのお陰で俺は助かったってわけだ。改めて、二人ともありがとう」
悠馬は後部座席の二人に振り向き、頭を下げる。
「ふふん!もっと褒めてくれてもいいのですよ!エッヘン!」
「貴族たるもの民を守るものです、仕える私めも同じです。ですので礼には及びません。ただアリスリアお嬢様はもう少し淑女らしく……」
「も~、いまはお説教なしです!民の感謝をただ受け入れるのです!」
「はぁ……なんと嘆かわしい」
「むうっ!」
「……んふっ!んははっ」
「小栗 悠馬様、気でもふれましたか」
「お兄さん、顔真っ赤ですよ!大丈夫ですか?」
「ふははっ!はははっ!……あ――あんたら、いつもこんな感じなのか?堪えてたんだが、我慢できず吹き出してしまったよ。あははっ」
少し濡れた目尻を、指で拭いながら二人を見る。
「もう!笑うなんてお兄さんは失礼な人なのです!私は常に真面目全力です!」
「私は……いえ多くは語らない方がよろしいでしょう」
「あ~!ノーラまで!何か失礼な事考えてる気がします!」
「いや~、悪かった。悪気はないんだすまんすまん。それよりあんたらの事なんだが少し心当たりがある」
「是非、お聞かせください」
一拍置いて、悠馬は自身の考えを口にする。
「さっきまでいたダンジョンなんだが、十年前に突然現れたんだ。当初は謎だらけだったんだけ、少しずつだが分かったことがある」
「内部には、何というか魔物みたいなのが住んでいる。魔物を倒すと、魔石とたまに物品を残して消える、魔石は新たなエネルギー源となる」
「そのエネルギー源は画期的なもので、資源不足を解消すべく、国家はダンジョン管理局を設立し、魔石を買い取るシステムを構築した」
「その魔石を収集する仕事に従事する者を、探索者と名付け資格章を発行し管理している」
「なるほど、そうなると悠馬様は探索者というわけですね」
「そうだ、そしてこっからが大事なんだが」
アリスリアとノーラは真剣なまなざしで悠馬を見る、そして言葉を待つ。
「ダンジョン内の気候、生物、植物はどれもこの世界の理に反する。というか準ずるものがないんだ」
「よってダンジョン内は違う世界、すなわち異世界に通じているのではないか?という話が議論されている。もちろんこんな話は非公式な与太話だ」
「ただ、あんたらの状況を真面目に受け止めるとすると、あながち間違ってないんじゃないかとも俺は思う」
「なるほど……ローレライ帝国、いや黒の森の洞窟を介して、こちらの世界に移動した。と」
「この場合は転移だな、いや次元移動に近いかもしれない。多分だが文明とか発展具合も違うはずだ」
「たしかに、このクルマもそうですが、先ほどみた光景の中に、見慣れたものはありませんでした」
「やはりか……」
「うん……うん、やっぱりそれしか考えられない……かな、思うのです」
ここまで聞き役に徹していたアリスリアが、顎に手をあてて呟く。
「アリスお嬢様どうされました?」
「ノーラ!私わかっちゃった!」
「何でしょうか?あまり期待はしてませんがお聞かせください」
「ふっふ~ん!聞きたいですか?仕方ないですねぇ」
少しもったいぶったよう言い、アリスリアは胸を張って言葉を重ねる。
「あれです!洞窟にあった紋章!あれが私たちを連れてきたのです!なので、もう一度あの紋章の前に行けば帝国に帰れるはずです」
「さすがはアリスリアお嬢様、ご慧眼です!」
「でしょ~、褒めていいんですよ!もっと褒・め・て・いいんですよ!エッヘン!」
「で、その紋章はどちらに行けばあるのでしょうか?目的地はどちらにありますか?ア・リ・ス・お嬢様」
「えっ!……いや~それは何というか、そこまでは考えてなかったといいますか……ほら、着いた場所!ダンジョンに行ってみるとか」
「相変わらず浅慮と申しますか、推論、思考、結論までたどり着き、かつ整合性や合理性がある場合のみ、ご提案下さい」
「ふえ~、ノーラのいじわるぅ」
「いや、あながち間違ってないぞ!」
涙目のアリスリアを横目に、悠馬が目を見開いて声を上げる。
「もちろんノーラさんの言う通り、目的地なんてわからない。ただ、一旦の目標地点として、ダンジョンに入るというのはいいかも知れない。いや、むしろそこから何かわかるかも知れない」
「ほらっ!お兄さんもそう言ってるし、とりあえず行動するっていうのは大事だと思います!ノーラもそう思いませんか?」
「はぁ、悠馬様まで。まぁ正直申しまして現状手がかりとしては、ダンジョンと洞窟が唯一なのは間違いないので……行くしかありませんね」
「そうと決まれば、とりあえず今からどうするかだな。今日はもう遅いし俺は家に帰るが、あんたらはどうする?」
そろそろ宵の口だろうか、気が付けば辺りは薄暗くなっていた。
「どうするも何も、私どもは拠り所もない身です、クルマを出て野宿でもしましょう。私はいいのです、ただ……辺境伯様の一人娘でもあるアリスリアお嬢様が野宿など。考えただけでも身が焦がれてしまいそうです……およよ」
「えっ!なんか怖いんですけど。ノーラさん!なんかキャラ変わってません?」
「あ――――!お兄さんノーラ泣かせたー!ダメなんだよぉ、お父様が『男子たるもの女子に涙を流させるなど言語道断!涙の数だけ斬する』っていってたもん!」
「なにそれ怖い!と、とりあえず俺の家に向かうからそれから考えよう!」
慌ててエンジンをかけ車を発進させる悠馬、その額には大量の汗が滴っていた。
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