9:情報共有
「リリカ様、帰ってこられたのですね。おかえりなさい」
私達がアンクさんの屋敷に帰ってくると、
既に実家から帰ってきていたエディーが出迎えてくれた
「うん、ただいま。エディー」
「……なにか、あったのですか?」
顔に出ていたのか、エディーに何かあったかを
聞かれてしまい、つい苦笑いが出る
「……エディーは鋭いね。
うん、実はちょっと…色々あって」
「そうですか…実は私のほうでも、
少し不穏な情報がありまして。
…まずはお互い、何があったのかを話しましょうか」
「うん、そうだね。実は…」
そして私は、アリーヴェルナさんの
サロンであった出来事を、エディーに伝えた
「そんな…まさかカーロが、リリカ様に干渉していたなんて……
大丈夫でしたか?お怪我などはありませんでしたか?」
「うん、私は大丈夫。コチェールはちょっと危なかったけど、無事だよ」
「………申し訳ありません、リリカ様。つい、彼を前にして、
感情が抑えられませんでした…これでは執事失格です」
「いや、そんなことは…」
「いいえ、リリカ様。この世界での軽率な行為は、
従者であろうと、いえ、従者だからこそ、主たる者に
責任がいくのです」
コチェールを励まそうとするも、途中で
エディーにピシリと言われてしまう
(そういえばそうか…そういう世界だもんね…)
アンクさんの記憶を見たとはいえ、
私は前世普通の一般人。
未だに、こういうところは慣れなかった
「…ですのでコチェール。気持ち自体は私もわかりますが、
2度目はありませんよ」
「……重々、承知しております」
「よろしい。
…話を戻しますが、その前に… 私のほうからも、
報告しておかなければならないような情報があります」
「情報…?」
「はい。
…実は、両親がなにか、よからぬ事を企んでいるようでして。
詳しくはあまり聞けませんでしたが……
『実は最近、契約を結んでね。これが上手いこといけば、
我がラティア家は安泰だ』と…
それからこれは、聞き耳を立てて聞けた単語なのですが…」
そう前置きに置いて、エディーが単語を挙げ始める
『あのアルドゥマシア商会と』
『この機会を逃してはならん』
『噂を』
『上手く行けば』
『エディーを利用して』
「…とまあ、かなり危ない感じでして……
というより、アルドゥマシア…カーロの名が出てる時点で
ろくなものではありません。カーロが関わっていることと、
それから、リリカ様のほうで、カーロがわざわざリリカ様に
“警告”をしたこと、噂という単語……
そして、私を利用するという言葉。
ここまで揃って、リリカ様が無関係なわけがありません。
充分、気をつけてください」
「う、うん。わかった」
実際、エディーが言ってくれた情報だけでもかなり黒いし、
エディーの考察も当たっている可能性が高い。
充分気をつけないと……
「……それにしても、生前のリリカ様と同じ姿をした方ですか……
私はこの目で見れていないので、なんとも言えませんが…
もし本当にその方がリリカ様と同じ存在だとしたら、確実に由々しき事態です。
とにかく、できるだけ早くユースティア神殿に行きましょう。
一刻も早く、ティタ様に伝えたほうがいいと思います」
「…やっぱりそう思うよね。
コチェール、たしか今日はもう予定無かったよね?」
「はい、本日の予定はもうありません」
「じゃあ、最低限の準備だけしてユースティア神殿に行こう。
私がどうなるかはわかんないけど、ティタに相談しなくちゃ」
そう思い、必要最低限の支度を済ませ、
転送装置を使い、三人でユースティア神殿に行こうとする
「あ、あれ…?転送されない……」
ティタから借りた、ユースティア神殿へと転送してくれる魔道具は、
私の魔力を流すと転送される仕組みなのだが……
なぜか何度魔力を流しても転送されず、首を傾げる
「少し、見せてください」
コチェールが転送魔道具に近付き、隅々まで見る。
調べるために魔道具まで持ってきて、念入りに転送魔道具を調べてくれた
「……原因がわかりました。原因は、魔力障害です」
「魔力障害……たしか、電波ジャック…じゃなくて、
魔力の壁みたいなものだっけ」
「はい。
……ユースティア神殿の魔道具は、どれも最高品質の物です。
神聖なる神殿への転送魔道具ともなれば、更に厳重な仕組みとなっているはず。
……それなのに、魔力障害の状態となっている状態です」
「……おそらく、カーロの仕業でしょう。
わざわざリリカ様達の前に現れて、言葉を紡いだだけなんて、
彼らしくもありませんし……なにより、カーロなら納得がいきます。
彼なら、例えユースティア神殿の物でも、
魔力障害による妨害ができる可能性が高いです。
……とりあえず、屋敷全体が魔力障害に包まれていないか確認しましょう。
彼ならやりかねません」
そうして、私達は時間をかけ、
屋敷全体を魔道具片手にチェックしていった
「とりあえず見終わりましたが……
結局、あの転送魔道具以外に魔力障害はありませんでしたね……」
「……まあ、転送魔道具以外何も無くてよかったって
喜びたいとこだけど…今一番行きたいのユースティア神殿なんだよねー…
…しょうがない、前みたいに直接行こう。それなら多分まだ行けるだろうし」
「いえ、それが……先程魔道具を使い調べたところ、
行く道が土砂崩れで塞がっておりまして……」
「OMG!!物理的にも行けなーい!!」
唯一残っていた手段も無くなってしまい、
私は思わず、頭を抱えながら叫んでしまう
「だ、ダメ元で手紙を出しましょう!
もしかしたら届くかもしれません!
あまり期待はできませんが!!」
「そ、そうだね!!さすがにアンクさ…
じゃなくて、アンク伯爵が信頼してる所だったら、
何事もなく手紙を届けてくれるはず!!多分!!
時間はかかっちゃうけどもうこの際しょうがないってことで!!
やらないよりかはマシ!!」
そういうことで、私は急いでユースティア神殿……
ティタに向けた手紙を用意する
勿論、内容はサロンで起きたことと、
相談というか、判断を仰ぎたいということを綴った
「とりあえず、これをいつものとこに持ってって、
届けるようにお願いしに行こう」
「あ、その前に、秘宝を使ったアンク様の魔力を
紙に込めておいたほうがいいと思います。
秘宝を使ったアンク様の魔法は、カーロの妨害や魔法に
対抗できますから。
……その、勿論、リリカ様がよろしければ、ですが」
たしかに、秘宝を使った際のアンクさんの魔力は、
黒魔法の悪い効果すら焼ける。それを手紙に込めておけば、
誰かが妨害したとしても、問題なくティタへ渡るだろう
……ただし、あの痛みに耐えなきゃいけないけど
エディーもそれを心配してくれているのだろう。
私を見る顔は、心配そのものの表情だった
「…心配してくれてありがとう。
でも大丈夫、やるよ。今は非常事態だし、
一瞬だけなら全然耐えれると思うから!」
エディーにそう笑いかけ、
紙に手をかざす。そして目を閉じ、
心の中で詠唱をする
(クローヴェルに伝わりし秘宝よ。我が声に応え力を解放せよ!)
瞬間、バチバチッと身体中を焼くような痛みが流れる
「いッ…!!」
私は痛みに歯を食いしばりながら、早く終わらせるため、
迅速に紙に魔力を込める
「よし、できた…!!」
「ありがとうございます。
これである程度の妨害は、アンク様の魔力で
焼き払えるはずです」
ちなみに、紙はちゃんと特注の紙を
使っているので、紙が過剰魔力&過剰火力で燃える心配はない。
ありがとう過去のアンクさん、ありがとう今も特注で作ってくれる方々…
「それじゃあ、なるべく早く届けるためにも、早速行こうか」
そして、私達は早速手紙を出しに行くため、郵便局がある場所…
王都に向かうことにした




