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伯爵になってしまった前世普通の一般人は、持ち主に身体を返したい  作者: 天川


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4:婚約者とのお茶会

 さて、本日はコチェールが言っていたように、アンクさんの婚約者……

 エディーさんとのお茶会がある日になる


 そして、昨日ガチガチに緊張していた私はというと…


(全然緊張が抜けてない……落ち着け私、

 前世でも何回かお客さんの前で演劇したことあるでしょ…!)


 昨日から緊張が抜けておらず、夜もあまり眠れていなかった


 エディーさんとのお茶会の時間は、もうすぐ。

 未だに緊張が抜けていない私は、何回も深呼吸をしていく


「伯爵様、準備は大丈夫ですか?」


「……あぁ、問題ない」


 コチェールに聞かれ、私はアンクさんモードで答える。

 他の使用人達には、まだ私が別人であることをバラしていないので、

 コチェールと二人きりの時以外は、私はアンクさんを演じると二人で

 決めていたのだ


 そして、意を決して離れに向かうと…

 エメラルドのような綺麗な緑色の瞳と、トパーズのように煌めく、オレンジ色の

 髪を持つ人…エディーさんが、既に席に座って待っていた


(綺麗……)


 まるで天使や聖女のような可憐さと気高い美しさに、

 同性ながら思わず見惚れてしまう


(こんな綺麗な人が世の中にいたんだ……ここ異世界だけど……)


 そんな風に思っていると、エディーさんが立ち上がり、

 綺麗なカーテンシーをする


「ご機嫌よう、アンク様。本日はお忙しい中、(わたくし)の招待に応じてくださり、

 ありがとうございます」


「あ、あぁ……こちらこそ、わざわざ招待してくれたことに感謝する」


 エディーさんに挨拶をされ、こちらも挨拶をする


 エディーさんは私の正体を見抜いている可能性が高いけど……

 エディーさんが私を見抜いているとは限らないので、

 ちゃんとバレるまではアンクさん風に振る舞うことにしていた


「ふふ。では、早速お茶会を初めましょうか。コチェール、紅茶を……

 いえ。せっかくアンク様が来てくださったのですから、コーヒーを淹れて

 ちょうだい」


「かしこまりました」


 そう言い、コチェールが手際よくコーヒーを淹れていく。

 ちなみにコーヒーはアンクさんの好物だ


(ん、美味しい…!私もコーヒー好きだから、よく淹れてもらうけど…

 今日のコーヒーはいつもと違う味だ)


 エディーさんと共に、淹れられたコーヒーを一口飲むと、

 上品な香りと香ばしい味が広がる


(正直、コチェールの淹れるコーヒー美味しいから、

 淹れ方を教えて欲しいんだけどなぁ…

 いやまあ、残念なことに淹れる機会がないんだけどね)


 そんなことを思いながら、もう一口飲む


「さて、では本題に入りましょうか。

 伯爵様の中にいる、伯爵様とは異なるお方…『救世伯』様」


「ングフッ…!?」


 エディーさんにそう言われ、思わずむせてしまう。

 コチェールの予想通り、エディーさんは私の正体を既に見抜いていた。

 そこはまだいい。ただ、あの恥ずかしい通称で呼ばれるとは思いもよらず、

 飲んでいたコーヒーが変なところに入ってしまった


「…やはり、お気づきだったのですね」


「えぇ、勿論。

 …ところで、大丈夫ですか?救世伯様」


 エディーさんに気を使われ、目の前でむせてしまったことが恥ずかしく

 なりつつ、エディーさんにちゃんと挨拶をするために立ち上がる


「ケホッ、ケホッ…すみません、お見苦しいところを見せました。

 改めまして…はじめまして、エディー様。私は、梨々花と申します」


「はじめまして、リリカ様。アンク・クローヴェル伯爵の婚約者…

 エディー・ラティアと申します。どうぞ、よろしくお願いします」


 お互いに改めて席を立って挨拶をし、もう一度席に座る


「さ、せっかくだからコチェールも座りなさいな。あなたにも会話に

 混ざってほしいの」


「え、ですが、私は執事なので……」


「コチェールも座りなよ。立ったままだと疲れるだろうし、

 コチェールだけ立ってるのは私も落ち着かないから…」


「………わかりました」


 そう言って、コチェールは渋々椅子に座る。

 エディーさんはというと、私達の光景を見てクスッと笑っていた


「リリカ様は、コチェールともうそこまで仲がよろしいのですね。

 (わたくし)の目に、狂いはなかったというわけです」


「?エディー様、それはどういう……」


「もう少し気楽になさってください、リリカ様。

 (わたくし)のことは、気軽にエディーと呼んで構いませんので」


 貴族であるエディーさんを様付けで呼ぶと、

 エディーさんにそう言われてしまう


「いやいやいや、さすがにそれは……

 それに、私自身の身分は平民ですし…」


「身分が平民だとしても、(わたくし)は構わないのですが……

 そう仰るのなら、せめてあなたの呼びやすいように呼んでください」


「…ありがとうございます、エディーさん。

 それで、さっきのはどういう…というか、いつから気づいていたんですか?」


「遠目で最初見た時から、です。最初はアンク様に“よくないもの”が

 取り憑いたのかと思い、魔法で消滅させようかと思いましたが……

 善良な魂だと思いましたので、様子を見ることにしたのです。

 そうして様子を見ていたら、リリカ様が『救世伯』と呼ばれている噂を

 耳にしまして。そこで、コチェールに(わたくし)の招待状を預けたのです。

 コチェールなら、リリカ様の正体と本心を見抜き…

 リリカ様が本当に善良なら、きっと親しくなると思いまして」


「そ、そうだったんですね……

 でも、魔法で私の魂を消滅させれたのなら、なぜしなかったんですか?

 その、アンク伯爵を取り戻すには手っ取り早い方法だと思うのですけど……」


 魔法で消滅、という単語を聞き、

 少し恐ろしさを感じつつも、エディーさんに質問をする


(わたくし)の白魔法は、悪しき霊を浄化することに長けています。

 なので、ただの人の魂に(わたくし)の魔法を使用した場合…どうしても効き目に違いが

 出てしまうのです。それに…仮に(わたくし)が魂を消し去る魔法を扱えたとしても、

 さすがに無辜の魂を消し去ってまで、アンク様を取り戻すことは

 いたしませんよ。なので、安心してください。リリカ様」


 エディーさんの言葉を聞き、少し安堵する。

 さすがに魂を消滅と聞いた時に、少し怖くなってしまったのだ


「さて、今度はあなたの番ですよ。

 (わたくし)、あなたのことが聞きたくてご招待したので」


 エディーさんが場を仕切り直すために手を軽く叩き、

 私に話を振る


「…わかりました。エディーさんにもお話ししますね」


 そして私は、コチェールにも話したことを、エディーさんに話すことにした


「まあ、異世界……成程、道理であまり見ない魂の形だったわけですね。

 ……それにしても、18歳だなんて…あなたが最期に成したことは、

 たしかに未来ある子を守った、素晴らしいことです。ですが…あなたも未来ある

 若者の一人だったことを、どうか忘れないでください」


「エディーさん…ありがとうございます」


 私を思ってくれているエディーさんに、お礼を言う


(コチェールもそうだっけど…エディーさん達が、異世界人で故人の私のことを

 ここまで思ってくれていて、本当に嬉しいな)


「…それで、エディー様。できればリリカ様の魂を保ったまま、

 伯爵様の魂を元に戻す方法について…なにか、ご存知でしょうか…?

 もしご存知なら、教えていただきたいのです」


(え、コチェール…?)


 突然言い出したコチェールの言葉に、少し驚く


(まさか、アンクさんに身体を返した後の私を考えてくれるなんて…)


 そんなことを考えていると、エディーさんが申し訳なさそうな表情で答え始める


「ごめんなさい、さすがに別の魂を保ったまま戻す方法については、

 (わたくし)も知らないの」


「…そうですか」


 コチェールはエディーさんの返答を聞き、表情を少し暗くしていた


(私はもう死んでるんだから、二人ともそんなに気にしなくていいのに……)


 そんなことを思っていると、エディーさんが口を開く


「……ですが、かの神殿であれば、少なくともリリカ様の望み……

 アンク様に身体を返すことはできると思います」


「本当ですか!?」


 エディーさんから身体を返せると聞き、思わず大きい声を出してしまう。

 仕事の合間合間に色々調べていたが、なかなか見つからなかったので、

 返せる方法を知れるというなら、私にとってありがたかった


「はい、ユースティア神殿であれば…可能かと。

 かの場所は多くの白魔法使いが働いてる場所ですし、なにより…

 秩序の神ユースティアによる、魂などを対象にした裁判所がありますので。

 魂に関しては、おそらく一番詳しいはずです」


「ユースティア神殿…」


 名前だけは、アンクさんの記憶で聞いたことがある。

 たしか、この領地と王国の丁度狭間ら辺の山のほうにある、黒魔法の効果の

 浄化や魔導書の管理をしていたりする場所だったはずだ


 それから、秩序の神ユースティア。

 ユースティアは秩序の神の名の通り、この世界の秩序を司る神であり、

 世界の均衡…要はバランスをとるための裁判をする、裁判長でもあるらしい


「ただ…ユースティア神殿は余程のことがない限り、部外者の出入りは

 禁止している場所です。一応、秩序の神ユースティアを祀る神殿でもあるので、

 祈りを捧げる際の入場は許可されていますが…」


「そうでもない一般の客は難しい、と」


 まあ、納得はできる。部外者の出入りを禁止しないと、

 白魔法目当ての貴族がこぞってやって来るだろうし…


「ですが、リリカ様の状態であれば…おそらく、ユースティア神殿も入場を

 許可するかと。人の身体に他の人間の魂が入り込んでいるのは、

 本来よくないことですから」


「…なにか、悪影響があったりするんですか?」


 エディーさんの言葉を聞き、なにか悪影響がないか気になってしまい、

 質問をする。もし私の存在のせいで、アンクさんに悪影響が出ていたら大変だ


「えぇ。本来、当たり前ですが一つの身体につき、魂は一つしかありません。

 一応、二つ以上の魂があっても、受け入れられはしますが…無理に

 受け入れると、その分負担が大きいのです。そしてそれは、入ってきた

 魂のほうも同じです。ですので、無理に受け入れてしまうと、

 お互いの魂が疲弊してしまうのです。なので悪霊と化した魂は、

 その疲弊を防ぐために、元々ある魂を追い出そうとするのです」


「疲弊、ですか…」


 おそらくこれは、エディーさんの実体験だろう。

 アンクさんの記憶の中でエディーさんが言っていたが、

 白魔法を使う際に自分の身体に入り込んできたりしていたらしいし…


「幸い、リリカ様とアンク様はお互いの魂の相性がいいのか、お二人の魂は

 疲弊していませんが…っ、それでも見てもらったほうがよろしいかと」


「よかった…というか、アンク伯爵の魂って、一応この身体の中に

 あったんですね……」


 私がエディーさんの言葉に安堵していると、

 エディーさんの表情が少し苦しそうになっていた


「エディーさん?大丈夫ですか?」


「っ、エディー様!こちらを!」


 エディーさんに気にかけて声をかけると、

 コチェールは焦った表情で、ハンカチをエディーさんに渡した


「ごめ…ゲホッ、ゲホッゴホッ…!!」


「エディーさん!?」


 エディーさんが急に血を吐き出し始め、慌ててエディーさんに寄りかかる


「ケホッ…大丈夫、いつものことです」


 コチェールから受け取ったハンカチで口元を拭いながら、エディーさんが

 微笑む。だが、顔色がどう見てもよくなかった


「今のって……呪いの影響、ですよね…?」


「えぇ……はい」


 アンクさんの記憶で見ていたから、知ってはいたけど…

 いざこうして目の前で実際に見ると、とても辛そうだった


「…リリカ様、手段はなんでもいいので、あなたの…

 アンク様の魔力を流し込んでくれませんか?

 アンク様の魔力は…呪いを焼いてくれますので」


「わ、わかりました!魔力はどれぐらい必要ですか?」


「いつもなら、適量でいいのですけど……

 申し訳ありませんが、今回は多めにお願いします」


「わかりました!コチェール、水持ってきて!」


「はい!」


 そして私は、コチェールが急いで持ってきてくれた水に魔力を注いでいく


 アンクさんの使える魔法は、黒魔法と炎魔法だが、

 アンクさんはクローヴェル家の秘宝……使用者の魔法威力を増大させる魔道具の効果で、あらゆる魔を…それこそ黒魔法の呪いすら燃やせる炎魔法を使うことが

 できる


 ただ、勿論この魔法を使うにはそれ相応の代償がある。

 アンクさんの場合は、炎に焼かれる痛みに耐えなければならなかった


「いッ……!」


「リリカ様…!」


 そしてそれは当然、アンクさんの身体を使っている私も、耐える必要があった


(死ぬほど痛い…っ、だけど…)


「大、丈夫です……!!これくらい、耐えれます…!!

 エディーさんは気にせず、ご自分に必要な魔力量になったら

 言ってください…!」


(私はもうとっくに死んでるんだ!今更、これくらい…!

 それに…アンクさんは毎回これに耐えてたんだから、私も耐えてみせる…!)


「っ…わかり、ました。

 ……お願いします、リリカ様」


 それから、数秒魔力を注ぎ続け…


「…もう大丈夫です、リリカ様」


「はぁ、はぁ……ホントに、大丈夫ですか…?」


 痛みや疲労で息を切らしながら、私はエディーさんに問いかける


「えぇ、充分です。リリカ様なら既にご存知でしょうが…

 (わたくし)、あまり嘘は好まないので」


 たしかに、エディーさんは嘘を好まない。

 それに、魔力を注ぎすぎると色々危ないので、

 私は流していた魔力を止めた


「リリカ様、火傷に効く傷薬をお持ちしました」


「あ、ありがとう。コチェール…助かるよ」


 秘宝を使った影響で少し火傷をした両手に、コチェールが傷薬を塗っていく。

 先程のはあくまで魔力だけだから、この程度で済んだが…

 魔物討伐なんかでこの炎魔法を使えば、その痛みは今のよりも数倍のはずだ


(私目線だと、さすがに痛みは無かったけど…アンクさんは、

 これを耐えてたんだよね…?耐えれるのは凄いけど、もう少し自分を

 大切にしてほしいな…)


 アンクさんの身体には、未だに治っていない火傷の跡や傷跡が沢山ある。

 アンクさんは今までそれだけ無茶をしていたし、同時に色んな人を人知れず

 助けていたのだ


(一応、魔を焼くほどの炎魔法は、あくまで秘宝を使わないといけないから、

 普通の炎魔法を使う分には問題ないんだけど……アンクさんはこっちをよく

 使っていたからなぁ…身体を返した後は、あまりこれを使わないでいてほしいな)


 そんなことを考えていると、丁度傷薬が塗り終わったところだった


「リリカ様、塗り終わりました」


「ありがとう、コチェール。

 …あれ?エディーさん、まだ飲んでいないんですか?」


 エディーさんが水を見ながら首を傾げてるのを見て、気になって声をかける


「あ…すみません。少し、水から不思議な魔力を感じまして」


「不思議な魔力?」


「はい。悪いものではないようですが…」


「エディー様、少し失礼します」


 そう言い、コチェールが水を別のコップに少し移し、口に含む


「……これは、白魔法の魔力…?」


「え、白魔法????」


 突然出てきた謎の白魔法に、頭がはてなで埋まる


「白魔法って…使い手が少ないんだよね…?

 エディーさんは使える様子じゃなかったし、なんで急に……」


「リリカ様の仰る通りです。それに、伯爵様は白魔法を使えないはず。

 いったい、なぜ…」


 二人して不審に思っていると、エディーさんが口を開く


「…おそらく、リリカ様自身の魔力でしょうね。

 口に含んでみてわかりましたが、リリカ様の魂と同じ気配がします」


「私自身の、魔力???」


(エディーさんがそう言うならそうなんだろうけど……私の????)


 エディーさんにそう言われ、私の頭が更にはてなで埋まっていく


「これは、魂を見ることのできる(わたくし)だからこそわかることですが…

 魔法の適正は、その人の肉体と魂によります。

 …普通は魂と肉体は一致しているので、知ったところでという話なのですが……

 どうやら肉体に別の魂が入ると、その魂自身の適正魔法も扱えるようですね」


「は、はぇ……というか、私って魔法の適正あったんだ……」


「…知らなかったのですか?」


「だって私の世界、魔法は架空の存在だし…」


「「え」」


 エディーさんの言葉に答えると、二人が驚いた表情をする


「魔法が架空の存在ということは…リリカ様は生前、魔法無しで生活を…?」


「してたね」


 私がコチェールにそう言うと、二人とも呆然としてしまった


(まあ、魔法が当たり前の世界だから、しょうがない…のかな)


「それで、エディーさん。身体はどうですか?

 白魔法の魔力があるってことは、効き目はいいと思うんですけど…」


 私がそう聞くと、エディーさんがハッとした表情になる


「そういえば…痛みがありません。呪いはまだ残っている感覚がしますが…

 それでも、これは異常です。アンク様の魔力では…消えはしますが、じわじわと

 痛みが残っていましたから…」


「よかった…エディーさんの調子が良くなったならなによりです」


 エディーさんの言葉に安堵する。私も小さい頃は病弱だったから、

 エディーさんが元気そうになって本当によかった


「はい。本当にありがとうございます、リリカ様」


「いえいえ。お役に立てたならよかったです」


「しかし、そうなると…なおさらユースティア神殿に行ったほうがよろしいかと。

 肉体との…アンク様の適正魔法と一致せずにこの効力なら、本来のリリカ様の

 魔法は、かなり効果が高いということですから」


「そうなんですか?」


「はい。これほどまでなら、ユースティア神殿で使い方や、一応アンク様への

 身体の影響を聞いた方がいいでしょう。それから…本当に信用できる者以外、

 白魔法は絶対に使ってはなりません。国王に知られてしまえば、あらゆる理由を

 付けて…最悪、王宮に縛り付けるでしょうから」


 エディーさんが、真剣な表情で私に語りかける。

 実際に酷い目に合ったエディーさんだからこそ、なによりも説得力があった


「き、気をつけます……」


「はい、気をつけてください。

 …あら、もうこんな時間ですね。今日は色々とありがとうございました、

 リリカ様」


「いえ、こちらこそありがとうございました」


 エディーさんの言葉に、私もお礼を言う。

 そして、少し勇気を出して、私はエディーさんにお願いをすることにした


「あの、エディーさん。不敬を承知でお願いがあるんですけど…」


「なんでしょうか?」


「ユースティア神殿に行く時に、説明役として…魂とか白魔法に詳しい

 エディーさんにも付き添って欲しいと思ってまして。

 …どうでしょうか?駄目ですか?」


「…いえ、問題ありません。同行が許されるなら、喜んで。

 (わたくし)も、ユースティア神殿で呪いを見てもらいたいですから。

 それから、リリカ様を不敬罪なんかにはしませんよ」


「ありがとうございます!」


 エディーさんの返事に、お礼を言う。

 ただここで、ある疑問が浮かんできた


「あれ?でも、ユースティア神殿を知っていたなら、

 エディーさんはなぜ神殿に行っていないんですか?呪いがあるなら、

 見てくれそうですけど…」


「…最初に言ったように、ユースティア神殿は余程のことがない限り、

 部外者の出入りは禁止している場所です。ですので、ただ“呪われている”

 だけでは、入る許可は降りません。黒魔法に蝕まれてると嘘をつき、

 こぞって入りたがる者が多いですから。一応、現地まで行けば、神殿に張られた

 結界で呪われているかがわかるらしく、対処もしてくれるようですが…

 生憎、この身体なので遠出はできなくて……ですが、今なら話は別です。

 アンク様の復讐も終わり、仕事が落ち着いてきている今なら…

 (わたくし)も心置きなく、ユースティア神殿に向かえます。まあ、その…

 道中、かなりお手数をお掛けすると思いますが……

 それでもよろしいのであれば、是非同行させてください」


「全然大丈夫ですよ。それで、行ける日っていうと……」


(わたくし)は社交界にあまり出ず、普段からここにいますので…リリカ様の

『伯爵』としての仕事が少ない日で構いませんよ」


「だそうだけど…コチェール、空いてる日っていつ?」


 エディーさんの言葉を聞き、コチェールに仕事のスケジュールを聞く。

 アンクさんが一番頼りにしている執事ということで、

 仕事のスケジュールも、コチェールが管理のサポートをしているのだ


「そうですね……ユースティア神殿への移動日数を考えると、月末でしょうか。

 丁度そこなら、数日間空きができますし…今のうちに書類仕事を全て

 終わらせてしまえば、数日空きにしても問題ありません」


「てことはつまり、また社畜…じゃなかった、仕事の日々が始まるんだね……」


 前回の仕事地獄思い出してしまい、思わず少し遠い目になってしまう


「リリカ様の仕事量を減らしましょうか?」


 私の表情を見たからか、コチェールが気遣ってそう言ってくれる。けど…


「ううん、大丈夫。たしかに大変だけど……きゅ、救世伯として、ちゃんと仕事はやりたいもん。だから、頑張るよ」


 恥ずかしいが、コチェールやエディーさんが“私”のことを『救世伯』

 と認めてくれている以上、私としても…アンクさんの身体を借りているから

 じゃなくて、この領地を支える『救世伯』として、みんなの期待に応えたかった


「ふふ、リリカ様は素晴らしいですわね。わたくしも、書類仕事を手伝わせて

 もらいます。ですので、一緒に頑張りましょうね。リリカ様」


「え、手伝ってくれるんですか?」


(わたくし)、計算などは得意でして。(わたくし)も連れて行ってもらう以上、

 (わたくし)もあなたに貢献するべきでしょう。それに…リリカ様は(わたくし)にとって

 ようやくできた、初めてのお友達のような存在です。

 …なので、是非手伝わせてください」


「…わかりました。それじゃあ、お手伝いお願いします。エディーさん」


「えぇ、任せてください。

 …それでは、本日はここで。お二人とも、お仕事頑張りましょうね」


 そうして、エディーさんとのお茶会が終了し、その場は解散となった。

 そして次の日から、早速私達の仕事が始まり……


 いよいよ、ユースティア神殿へと向かう日がやってきたのだった

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