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耳を澄まして

作者: ごはん

窓の外には、静かな雨が降っていた。大学四年の拓也は、就職活動の結果を待ちながら、手元のスマートフォンで何度も同じニュースサイトを開いていた。通知も、面接のメールも、今日に限っては何も来ない。胸の奥がざわつく。


「自分は本当にこの道でいいのか…?」


思わずつぶやいた言葉は、部屋の壁に吸い込まれるように消えた。誰も答えてはくれない。だが、ふとイヤホンを手に取る。プレイリストの先頭にある曲は、学生時代によく聴いたジャズだった。軽やかなピアノの旋律が耳に届くと、胸の重さが少しずつ和らいでいく。


音楽は、拓也の心に問いを投げかける。

「不安や焦りを、今ここで感じる意味は何だろう?」

「結果だけが人生の価値を決めるのか?」


雨音とピアノのリズムが重なり、時間の感覚が少しずつ変わる。窓の外の雨粒が、光に反射して小さな世界を作る。それは、彼が知らなかった自分だけの宇宙のようだった。


「もしかしたら、答えは外にないのかもしれない…」


音楽を聴くたび、拓也は少しずつ心の声に耳を傾けるようになった。結果を急いで探すよりも、今感じている不安も、焦りも、自分の一部として受け入れることのほうが大切だと、音が教えてくれた。


雨がやみ、雲間から光が差し込む。拓也は立ち上がり、窓辺に近づいた。外の景色は変わっていないのに、彼の心は少し軽くなっていた。


イヤホンから流れるジャズのピアノが、静かに高鳴るドラムのリズムと重なった。その瞬間、心の奥でまるで小さな鐘が一つずつ鳴るように、明るい響きが広がる。まるで「大丈夫だよ」と囁くような柔らかなメロディが、未来への道筋をそっと照らしてくれる。


拓也は息を吐きながら、肩の力を抜いた。焦らなくても、答えは必ず見つかる。音楽が示す一つひとつの音のように、彼の歩みも少しずつ形を作っていくのだ。

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