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色鬼

作者: 芋姫

2月3日の日。


公園でみんなで遊ぼうとしていた時のこと。「いーれーてっ」と言う可愛らしい声がして、僕らが振り返ると、知らない子がにこにこしながら立っていた。


いい子そうなので僕らは仲間に入れてあげる事にした。「なにして遊ぶ?」さっそく僕のいちばんの仲良しの子が言うと、「えーとね」という僕と他の子達をさえぎるように、その子が満面の笑顔で言った。


『色鬼。』


鬼はその子がやると言うが、僕らはべつに問題もないために承諾した。


そして僕らの鬼ごっこが始まった。

****************************************************



始まって30分くらいかな。


10人ほどいた僕の友達は全滅した。 みんな文字通り、その子に食べられてしまったから。


最後の友達が彼の口の中に吸い込まれていくのを見ながら、僕も少し覚悟を決めた。


本物の鬼のような顔になったその子が大口を開けると、突風が巻き起こり次々と逃げきれなかった友達が口の中に吸い込まれて丸呑みにされるという寸法だった。


・・友達は吸い込まれる瞬間に僕にメッセージをくれた。

《あとは頼んだぜ》


唇の動きで僕はそれを理解した。

心に誓う。


おまえの無念、必ず晴らすぜ。


「さて。」舌なめずりをして、その子、おっと・・じゃねえな。「鬼」が俺を見ながら言う。


「なかなかやるじゃあねえか。」


「いいからさっさと次のお題を出しな。」俺も鬼を睨みながら言う。


「ククク・・・では。」


俺は身構える。


鬼は一拍おいてから言った。 『透明。』


***************************************************************************************************


「ば、ばかな、ばかな・・・!」


「・・・・・。」


数分後、悔しそうな顔の鬼が砂のようにさらさらと、目の前で崩れ落ちていくのを俺は見ていた。


あのあと、お題を出した瞬間に鬼の体はその場で崩れ始めた。


何が起こったのか初めはわからなかったが、だんだんつかめてきた。


「透明」それは目には見えない。


目に見えないその色は、どこにもない。

どこにもないから、「どこにでも」存在している。

おそらくそういう理屈だろうか?



・・・・・・・・・・・・・・・




やがて、鬼は完全に消えた。


その場にできた小さな砂の山は、急にひゅうっと吹いてきた2月の寒風によって巻き上げられて、そのまま空気の中へ運ばれていった。


助かった。ほっと胸をなでおろしたとき。


「あ、○○君」


急に呼ばれたので振り向くと、みんながいた。


「みんな・・・」


誰もケガなどしておらず、遊び始めた時と何ら変わらない様子であった。


しかしだ。


「なんか、急にまっくらになっちゃって。」「なんだったんだろうね?さっきの」


・・・みんな、何も覚えていないようだ。さっきまで鬼に食べられていたのに。


「あれっ、そういえばあの子は?」 友達のひとりが言った。


「あー、ほんとだ、鬼がいなーい。」


僕がおもわず口を開きかけた時だった。ポンと肩をたたかれたので、また振り返ると親友がいた。

彼は渋い顔をしながら黙って首を振った。


俺はうなずいた。


・・・ああ、そうだな。覚えていない方が良い、ってことも世の中にはあるよな。


たしかにそうだ。 お前の言うとおりだぜ。


これは俺たちだけの秘密だ。



「さあ、しーらない。帰ったんじゃない?それよりさ、寒くなってきちゃったから、おうちでゲームしよー。」


と、僕は言った。






















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― 新着の感想 ―
狐につままれたような鬼の物語でしたね。 私の小学生時代では『色つき鬼ごっこ』と呼んでいました。  懐かしさと怖さとが交差する作品をありがとうございます。
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