応えたい
(何が起きているのかわからない。これは夢?現実?)
目の前で起きていることを理解することができずに、私は困惑する。夢で見ていた女の子が現実に現れ、さらにその女の子を襲おうとしているであろう生き物たちと男性。
(この子が私に助けを求めていたのは、これのこと?)
だとしたら私には女の子を助けてあげられない。だって、私にはこの人たちを退ける力を持っていない。どうすれば女の子を助けてあげられるのかもわからない。けれど、このまま何もできず女の子を見捨てることはしたくない。
どうしたら良いかわからず、男性と生き物に恐怖していると、
「追い詰めたぞ。さあ、お前には消えてもらおう。」
男性は感情の見えない表情で私達に冷たくそう告げた。いや、多分本当は私のことは眼中になく、女の子一人に向けて言ったのだと思う。その言葉に合わせて生き物たちは私と女の子に近づいてくる。
生き物たちがジリジリと距離を詰めてくる中、私はとっさに女の子の前に出て女の子をかばう。意味はないかもしれない。でも、この子が傷つくのはいやだ!そんな思いで私は必死に「ダメ!!」と叫んだ。
するとなぜか生き物たちは、私に触れる直前で勢いよく後ろへふっ飛ばされた。よくわからないが壁のようなものにぶつかって弾き飛ばされたように見えた。
そして、私の後ろから強い光が見えた。
困惑しながら振り向くと女の子が手にしてるピンク色のチャームが光り輝いていた。
「何!?」
男性もこの状況が理解できていないようで困惑しているようだった。生き物たちは光り輝くチャームを見るとジリジリと後へ下がっていく。
女の子は両手で持ったチャームを私に向け「お願い、力を貸して」と言ってきた。
状況についてはまったく理解できていない。私にこの子を助けてあげることができるのかもわからない。それでも、この子を放っておきたくない!助けたい!
そんな強い思いから私はチャームに手を伸ばした。
「うん!」
力強く頷きチャームに触れるとさらに強く光り輝いて、私はその光に包まれていた。そして光が収まると私の姿は変わり、「力」を手にしていた。
光が収まると私の姿は変わっていた。ロリータファッションのように見えるが、それよりは動きやすさが重視されているような服装だった。
何が起きたのかわからず困惑していると、男性は声を荒げた。
「ありえない!この世界にチャームの適合者など存在しないはずだ!」
男性は信じられないものを見ているような、否定するような視線を向けてきたが、女の子はそれに構うことなく、私に告げてきた。
「手を前に出して。光が輝くのをイメージして」
私は困惑しながらも女の子の言われたとおりに両手を前に出す。
(光が輝くってさっきみたいなのかな?)
思いながらもイメージをする。すると何かが掌に集まる感覚におそわれる。驚き、手を戻しそうになるが女の子の凛とした声で留まる。
「恐れないで、あなたならできる」
戻しかけた腕をしっかり伸ばし、手を大きく広げてイメージし直す。
何かが集まる感覚がだんだん強くなるにつれてそれは光り輝いていく。
そして、女の子が「今よ!前に押し出して!」と叫ぶのに合わせて私は力いっぱい光を前に押し出した。
押し出された光は勢いよく前に出て生き物たちを包みこんでいく。そして、光が収まり消えると生き物たちも消えていた。
(消えた...。今の私がやったんだよね?これっていったい...?)
状況がつかめずに再び困惑していると、男性の歪んだ顔が視界に入った。
「おのれ!次は二人まとめて排除させてもらう!!」
男性はそう吐き捨ててスッと瞬間移動するみたいにその場から姿を消した。
(とりあえず、終わったんだよね?)
男性も生き物たちもいなくなり脅威が過ぎたのであろうと考えていると、女の子が私に歩み寄り微笑んでいた。
「助けてくれてありがとう」
女の子のその言葉と表情でようやく私も安堵することができた。そして、女の子の笑顔を見れたこと、役に立つことができたことを理解して私は満面の笑みで「どういたしまして」と女の子に言った。