邂逅Ⅰ
アイは中学2年生の春に夢を見る。夢の中で女の子に助けを求められるが手が届く前に夢が覚める。その日の下校時道中で女の子に再開し、さらにウムブラ(影)に襲われる。「ウムブラに対抗するために力を貸してほしい」と言われたアイはそれを承諾しルーシア(女の子)からチャームをもらいうけ魔法を授かり、ウムブラを退治する。
ルーシアは「ウムブラは人間の負の感情から生まれた存在であること、そのウムブラを束ねてこの世界を負の感情で覆うとしている者たちがいること、それに対抗する者たちがチャームを持つことができるもの達である」こと告げる。そして魔法が使えるようになったアイに再度力を貸してほしいと告げる。アイは「守りたい人たちがいるから」とルーシアの願いに応える。
夢を見ていた。
穏やかな空間。何もなくて、静かで、少しふわふわした感覚は水の中にいるようで...
私はそこに一人で佇んでいた。
不意に後ろから声が聞こえた。
振り向くとそこには同い年くらいの女の子が立っている。
街ならあまり目立たないかもしれないけれど、何も無いから黄色いワンピースがとても目を引いた。
女の子は困ったような、苦しそうな顔をしていて私に「助けて...」と言っていた。その声はとても小さくて、弱々しくてこの静かな空間じゃなかったら聞き取れなかったと思う。
私は女の子に手を伸ばして応えようとする。そして...
目が覚めると私は右腕を宙に伸ばしていた。
手のひらを確認するけど何も手の中にはない。
「またあの夢...」
体を起こして時計を見る。6:12。目覚まし時計のアラームが鳴る18分前。
ベッドから出てカーテンを開けて窓の外を見ると、日差しが入ってきて朝がやってきたことを伝えてくれる。
朝の支度をしながら私は夢に出てきた女の子に思いを馳せる。
夢を見るのはこれが初めてではない。ここ数日、私は何度も同じ夢を見ている。夢では決まってあの女の子が出てきて私に助けを求めている。私はその助けに応えようとして、毎回応える前に目を覚ます。
(あの子は誰なんだろう?なんで私に助けを求めているんだろう?)
いつも途中で目を覚ましてしまうからあの女の子のことも、何を助けてほしいのかもわからない。けれど、あの子のあの辛そうな表情を忘れられなくて次は応えてあげたいと毎回思う。毎回思ってできずにいる。
現実じゃないことに対して考えすぎかもしれないけれど、こう何度も同じ夢を見ていれば気になるし、なによりあの子を放っておくことはできないと思ってしまう。それはきっとあの子が今にも泣きそうな顔をしているせいだ。
本日の朝食はふんわりオムレツとレタスとトマトとキュウリのサラダ。ロールパン2つとコーヒー。私はまだコーヒーを嗜むことが難しいのでカフェオレ。
テレビを見ながら父カナメ、母メグミと朝食を摂る。これが夢野家の朝の様子。
2人は私よりも先に家を出るので、私は3人分の食器を洗いながら2人を見送る。
最後に家を出る私は鍵を締めて、ドアが開かないことを確認すると誰が聞いているわけでもないが「行ってきます」と告げ登校した。
登校中、温かな風に吹かれながら歩いていると、桜並木を見つけ春の訪れを感じる。私、夢野アイは今年の春から中学校2年生になり、市立桜宮中学校に通っている。
満開な桜を見ていると今年も温かな季節が来たことを実感し、自然の笑みがこぼれていた。
学校に到着し、教室の扉を開ける。自分の席に向かう途中で私は手前の席にいる親友に挨拶をする。
「おはよう、ミライ」
「おはよう、アイ」
ミライはニッと笑って私の挨拶に応えてくれる。それを見て今日も私の親友は元気なのを理解する。
「アイ、昨日のテレビ見た?××の」
ホームルームが始まるのは8:30〜。それまでミライと雑談をするのが、いつもの流れ。8:25には予鈴が鳴るのでそれを合図に雑談を切り上げて自分の席につく。そして、10分間のホームルームと授業を、迎える。
授業が終わり、部活に参加して18:00に下校する。今日は授業にも部活にも身が入らなかった。原因は理解している。「夢」のことだ。良くないとは思いつつも、やはり夢について考えてしまう。今もそう。
(今夜も見るのかな?今夜こそあの子と話ができるかな?)
そんなことを考えながら歩いていると、ふと「助けて」と女の子の声がした気がした。
驚いて下を向いていた顔は上を向き、意識が一気に現実に引き戻された。最初は考えながら歩いてるせいで幻聴が聞こえたのかと思った。
けれど、前を見るとそこには夢で何度も見た女の子が立っていた。
(うそ、なんでいるの?あの子は夢にいたはずなのに)
驚いてそんなことを思ったけれど、女の子が地面に座り込んだのを見て慌てて駆け寄る。
「大丈夫!?」
言いながら女の子の体を支えるように自分もしゃがみ込む。
女の子は夢の時と同じで辛そうな顔をしていて、私はどこが辛いのか女の子に聞く。
けれど、女の子は私の質問には応えてくれず顔を歪ませながら必死に訴えてきた。
「お願い、助けて...」
私が更に質問しようとすると、突如私達の左横からドンッと、大きな音が聞こえてきた。
驚いてそちらに視線を向けるとそこには見たことのない生き物たちと酷く冷たい目をした男性らしき人がいた。
男性なんだと思う。見慣れない風貌で異国の人のように見える。はっきりわかったのは、私達にとって良くない人だということ。
「追い詰めたぞ。さあ、お前には消えてもらおう。」
男性は感情の見えない表情で冷たくそう言った。
初めて作った作品なので基本的に日本語ガバガバです。
現代ファンタジー、恋愛、青春系です。