【掌編小説】私だけの
早川キャスターが凛とした姿で夕方の雨を伝える。
彼は巷で大人気の『イケメン気象予報士』だ。
「はふぁぁ……ただいまぁ」
気だるそうに欠伸をしながら、背中を丸めて靴を脱ぐ。
イケメン気象予報士のもう一つの姿。
私だけが知っている姿。
「おかえり。もうすぐご飯できるよ。先にお風呂入る?」
「んー。はいるー」
ワックスでしっかりとセットされた髪。
ふわふわサラサラと揺れる髪。
どっちも好き。
「うまそぉ。いただきまーす」
ハキハキと話す声。
のんびり話す声。
どっちも好き。
夫が二人いるような、少しだけ背徳的な気分なのは、私だけの秘密。