Fの一族
「貴族は 確かに自分の事ばかり考えるが、平民は貴族を妬む事しか考えていない。」
埃ばかりで、建付けの悪い扉の前に立つ
「はぁ~~~~~~…」
人生で5番目に大きな溜め息が出た
ギシギシガタガタ
開きにくい扉を無理やり開けると
そこには、無駄に広い広い教室が広がる
読者の諸君は、そちらの世界でいうところの大学の講堂をイメージして貰えれば良いと思う。
第四の壁の隅より失礼した…
そして、そこに2名の生徒 兼 戦乙女が座っていた
たった、2人…
1人は一番前の正面の席で、1人は私から見て右後方の席 肘を付き 窓の外を見ている。
これで全員では無いはずだが、まず部隊として人員まで不足している…
お先真っ暗だ…
「上官殿に敬礼ッ!!!!!」
最前列の娘が大声で立ち上がり敬礼する
なるほど、礼儀はしっかりしているようだ
「貴様も起立しないか!レーテリオン!!」
私をここまで案内してくれた者が、代わりに怒ってくれる
このまま、彼が指導官になってくれないだろうか…?
そして、気の強そうな戦乙女は何食わぬ顔で外を見ている
最悪だ…、嫌だ こんな女、部下に命令を聞かせてアレコレ指示するまでの関係を構築する事に
神経と時間を使うなど…
そこそこの部隊を、そこそこに命令して武勲を立てたいだけだ…
そこそこの強さの魔物を狩るでもいい、そこそこ迷惑な ならず者を懲らしめるでもいい
あんな面倒そうな田舎女騎士の好感度を上げて、指揮して何になるというのか…
私もどちらかといえば田舎の出だが
(適当な戦争地域にでも送り込んで、戦死して貰った方が都合が…しかし、武勲に傷が…)
自分でも最低だとわかっている思考実験をするが、自己嫌悪するだけで終わる
「フェリア、君は着席していい」
「はっ!」
すっと彼女は座る
フェリアリア=フォン=フィーラリア
さすがは、Fの一族と言われる
フィーラリア家の出身だ。
騎士家系でいえば、名門に数えられるフィーラの一族は
我が国でも伝統と格式高い名家
礼儀はしっかりしてるし、命令も素直に聞いてくれそうだ
それが、なぜここにいるのか?
調べによると、かなりのポンコツという情報が入っている
シンプルに名門に使えない奴が生まれたのパターン
これは、これで困る…
命令しても使えない味方は、敵に勝る
全世界共通の格言だ
出席してるのは、このFのポンコツと印象最悪のレーテのみ
「他の者は?」
「はっ!遅刻が2名!謹慎者1名!怪我人が3名!脱走者1名!任務で遠征中が2名であります!!」
聞かなかった事にしよう
「レーテリオンくん、こちらへ」
彼女はツンとしている
その100倍くらい、こっちはツンツンしたいわ!
「急に来た私が気に喰わないんだろう?
ひとつ勝負しないか?」
彼女は少し、こちらに意識を向けた
「私の御付きの騎士がいる、君たちの先輩みたいな者だ それと勝負して君が勝ったら私は出ていくよ」
「貴族様!ここで、賭け事は…!!」
すまないな、案内役の兵士を静止する目線を送る
「お前の騎士が勝ったら?」
口は利けるみたいで安心した
「そうだな、一段だけ前の席に降りて来なさい それと…今日の昼食のパンを君の分貰おう」
いいぜ
女はニヤリとして立ち上がる
(まだ戦乙女にすらなれてない、見習いが 現実を教えてやるわ)
「外に行こう、”おい出て来ていいぞ”」
どこからともなく、謎の女騎士が姿を現す
「ど、どこから…!?」
私にとっては謎でも何でもない訳だが、相変わらず気持ち悪い奴だ…
「騎士というより、最果ての東の地でいうところの”忍”のようですが 剣は使えますので」
まぁ、暇潰しにはなるだろ
続く←