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六人目『戦女神』 七人目『魔王』

 ユリファ達が魔法陣を使い、別の時空に穴をあける。俺がその穴を安定させるために門を作り出すと、いつものようにその中に入っていく。


「お!ここは…」


 遠くに巨大で横になった砂時計が置いてある。その近くでゲームをしながらのんびりとしている妹が居た。


「おーいレイティア!」

「兄貴か!?」


 妹は起き上がるとこちらに近づいてくる。


「兄貴、もしかして先に楽しんでたのか!?どんな世界だった!?」

「まあまあ、落ち着けって。一緒に行こうか」

「楽しみだな!兄貴!」


 妹と共に門をくぐる。そして戻ってくると妹が周りに居た人間に興味を示す。


「へーこいつらが兄貴の事呼んだんだ。相変わらず小さいな!」


 近くに居たユリファの頭を思いっきり撫でる。確かに俺達から見た人間は小さいと思う。俺は三メートル程、妹は二メートルはあった気がする。


「ユリファ、彼女は俺の妹の『レイティア・ロイス』だ。今の国の状況を話したら喜んで協力すると思うぞ」

「ほ、本当ですか?」


 ユリファは妹に現在の国の事について話す。

 話を聞いている妹がどんどんと笑顔になっていく。


「任せろ人の子!戦の神である俺が来たからにはもう負ける事は無いぞ!!」

「あ、ありがとうございます!」

「とりあえず全員に会わせるか」


 鍛練所に居る三人。モンド、えーちゃん、ボージャックに妹を合わせる。


「へー、いい戦士だね。俺は戦の神、よろしくな!」

「よろしくな。まさか神が二柱来るとはな!不思議な事もあるもんだ!!」

「よろしく…」

「…こいつも生物の匂いがしない、でも敵じゃないから大丈夫か」


 妹がモンドに近づき、肩を組む。


「良かったら俺の眷属にならないか?死んでも天の国で戦士として迎え入れてくれるぞ?」

「うーむ。魅力的な誘いだが、神ならば俺の闘いぶりを見てから判断してくれないか?」

「分かった。戦いも近いらしいしな!」


 すると遠くから息子が走ってくる。


「お父様!…おや?その方は?」

「父!?え?兄貴子供作ったの?」

「作った訳じゃないけど、息子が付いてきてね。ランダイこいつは俺の妹だ」

「…叔母様?」

「そうだ」

「お父様と同じで大きな方ですね」


 妹が屈んで息子の顔をまじまじと見る。


「うーん。戦士の器ではないけど…別の力を感じるな」

「息子は錬金術が得意でな、俺達が全く知らない知識を生み出している奴だ」

「へえ!それはすごいな。よろしくなランダイ」

「よろしくお願いします!叔母様!」


 そのまま手を出すとランダイも手を差し出し、握手をする。


「そうだお父様!僕の研究室が出来上がったんですよ!まあ、まだ素材が届いていないので錬金術は出来ませんけどね」

「もう出来上がったのか。それはいい知らせだな」


 すると鍛練所に料理人らしき人物が現れる。


「朝食の準備が出来ました、よろしければお集まりください」

「もうそんな時間か」


 食事へ向かう俺達。

 俺は椅子に座るだけで食事は出ない、というか必要ないと料理人に言っているので出る訳が何のだが…

 すると妹が出された食事を一口食べる。


「…美味しくはないな。いらないかな…モンド、食うか?」

「いいのか?ありがとう」


 皿を受け取り、妹の分も食べ始めるモンド。するとボージャックが妹に話しかけて来た。


「どうして食べない?」

「美味しくないから?まあ、食べなくても神だしな!生きれるから大丈夫!」

「ふーん」


『美味しくない』という言葉に少し反応していたが、食べなくてもいいと言った時。妹に対して無関心になった。

 最近俺にも話しかけてくれないため、恐らくだがボージャックはちゃんと飯を食べる奴が大好きなんじゃないかな?と思ってきた。


 朝食が終わる、前日のボージャックの件もあり朝食を残した者は一人も居なかった。

 その日は特に何もなく、一日が過ぎた。




「これで七人目。最後でいいのかな?」

「まあ、七人用意しろと言ってたのでとりあえずはいいんじゃないですか?」

「じゃあ行ってくるね」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 門を通りこちらの世界にやってくる。

 どうやら地下牢に出たらしく、いくつもの囚人が収監されていた。


「…そこに誰か…居るの?」


 話しかけてくる幼い少女の声、俺はその牢に近づくと鎖に繋がれ、力なくうなだれている角が片方折れた少女が居た。


「いるよ」

「そう…この気配、もしかして神様?」

「へー、分かるんだ」

「昔禁書を使って冥王様に会ったことがあってね…その時の気配に似てたから…ところで神様が何でこんなところに来たの?」

「そうだねぇ…君が一番強そうだし決まり!」


 牢の前に立つと鉄柵を握り、引っ張って破壊する。そして鎖を破壊すると彼女を担ぎ上げて門に行こうとする。

 しかし目の前に衛兵が現れ、こちらに剣を抜く。


「貴様!魔王の配下か!?」

「配下?通りすがりの神様だよ。君達はこんなところで命を捨てるべきじゃないと思うんだけどね」


 フードを脱ぎ、衛兵にすべての真理を見せる。

 衛兵がこちらを見て震えはじめると、俺はフードを被る。


「じゃあね。耐えられたら俺の事をみんなに伝えてね」


 震える衛兵に別れを告げると俺は門の中に入った。そしてまた世界に戻ってくる。


「ふ~。最後の召喚者は中々強そうなんじゃないかな?治療、お願いね」

「ひどい傷…分かりました!!」


 ユリファ達に少女を渡すと彼女を連れてすぐにこの場所から出て行った。

 俺は息子に捕まり、しばらく一緒に錬金術の事を聞いていた。


「ここをこうして沸騰させたお湯に入れると…じゃーん!」


 ランダイが厚い布手袋で掴んだボウルの中には粘土の高そうな黒い水が入っていた。


「これは?」

「これはですね、液体金属って言います!何かに活用できそうなんですけど…僕の力が半端なせいでただの液体のままなんですよね。でも、この世界ならもしかしたら…」


 すると錬金室に一人の少女が入って来た。包帯をぐるぐる巻きにしてこちらに近づいてくると俺の横に座った。


「マキャリさん。助けてくださってありがとうございます。そのままあそこに居たら処刑されるところでした!」

「傷はもういいのかい?」

「はい!私は自己再生ができますからこの包帯ももういりません」


 そう言いながら頭や腕に巻かれた包帯を取ると、腕に付いていた鎖の跡が無くなっていた。


「ほら!直ってますよね!角は折れたら直りませんけどね…」


 そう言いながら悲しそうに角を触れる。


「でも、命があるだけましですよね!あ、申し遅れましたが私はユーゾン・ライラスって言います!前の世界で魔王やってました。これからよろしくお願いしますね!」


 元気よく自己紹介をするユーゾン。俺達も彼女に自己紹介をすると声を聞きつけたユリファが扉を開いた。


「ユーゾン!!安静にしてろって言っただろ!」

「自己再生できるって言ったじゃないですか!!何ですかあの回復魔法!カスみたいな治癒速度じゃないですか!」

「お前の世界の話をするな!ならお前が私達に魔法を教えてくれよ」

「やりますよ!マキャリさんに命を救われた御恩がありますから、その位やらせていただきますよ!!」


 そう言うとユーゾンとユリファは怒りながら部屋から出て行った。


「あの二人は仲良くなるな」

「ええ、とっても仲良くなると思います」


 廊下から聞こえてくる声にほっこりする。

面白いと思っていただければ幸いです。

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