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召喚された神

巨大な砂時計が横を向き、重力に逆ら左右に砂が落ちるという異常でそれ以外何もない空間に二柱の神が過ごしていた。

時空又は次元の神『マキャリ=ロイス』戦の女神『レイティア=ロイス』遥か昔から人間を見守り、時には地上に降りて人間の手助けをする。そして助けた人間に付けられた名前。

神としてはかなり上位の存在だが、現在の世界は平和なため二人ともだらけていた。


「この、人のくせに何でこんな強いんだよ!」

「まあまあ、どうやら相手は世界一位らしいぞ。一番強い奴と戦えてよかったな」

「戦いってのは拳でどちらが強いか決める物だろ!あ!こいつ死体撃ちしやがった!…天罰落とそうかな」

「おっとそれをやると兄ちゃんも怒られちゃうからやめてね」


天罰を落とそうとする妹を止めつつ、俺は地上から持ってきたお菓子を頭に向かって放り投げると食べる。妹はコントローラーで画面に映る敵を殺し続けているがいつも同じ奴に殺され、かなり怒っていた。


「ふう…やめだやめ。兄貴、暇だし地上に降りて甘い物でも食べに行こうぜ」

「少し前にも食べに行っただろ。あまり地上に行き過ぎると観察者に驚かれるぞ」


すると空間に突然門が現れる。俺は誰か来たのか?と思ったが門を見るとその不安定さに驚いた。


「なんだあれ…」


中に入ってしまえば目的地に到着せず一生次元の狭間をさまよう事になってしまう可能性があるほどの不安定な門だった。

俺はその門に近づき、閉じようとしたが何故か閉じれない。明らかにヤバい門なのだが、何故かこの門の中に入りたいという欲求が自分の中にあった。


「なあレイティア、暇だしこの門の中に行ってみないか?」

「はあ?…いや、退屈しのぎにはいいかもしれねえな。最近はでかい戦いも無いし…俺らが居なくても困らないだろ」

「それもそうだな。俺はこのままで行くつもりだがレイティアはどうする?その人間の服装のまま行くか?」


妹は自分が着ているホットパンツとパーカーを見る。


「まあ、神器自体は俺の中にあるし大丈夫だろ。よし行こうぜ兄貴!」

「俺はまず持っていけないしな」


巨大な砂時計を見る。これを持っていくと世界の時空が歪み、同じ人間が二人居たり、何もない場所に突然木が現れてしまうため、そこにあった車などは貫通することになってしまう。


「よし、行くか」


数万年居なくても世界は変わらんだろ、と思いながら俺は門の中に入る。すると一瞬で辺りが暗くなり、体がどこかへと引っ張られる。光が見え始め、それにぶつかると俺はいつの間にか床の上で寝ていた。


「ここどこ~?それよりも妹は?」


上体を起こして周りを見渡すとローブを着ている人間達が円になって取り囲み俺を見て驚いていた。驚きと同時に彼らは希望を見るような目でこちらを見ていた。寝ていた地面を見るとそこには謎の魔法陣が。

すると人間の中からリーダーを思われる人間が現れた。

この人間は白いローブを着ており、髪はぼさぼさ、目の下には隈が出来ており必要最低限の睡眠すらとっていないのが見て分かった。


「この国は」


すると突然爆発に巻き込まれ、俺は何事も無く崩壊した建物の上に立っていた。外を見ると城壁から飛んできた無数の火の玉が街を破壊している最中だった。


妹が見たら喜びそうだな、と思いながら俺は自分の力を使った。

途端時間が止まると巻き戻り、建物が崩壊する前に戻ってきた。


「この国は」


近くで爆発が起き建物が半壊する。その瓦礫に何人か下敷きになるが人間は話を続ける。


「この国は現在種族の存亡をかけた戦いをしているが、敵が強く全く太刀打ちが出来ない状況に置かれている。このままでは負けてしまう、そこで我々は一か八かに賭けて禁書に描かれている魔法陣を試し、こうして君を召喚した訳だ。元の世界に戻りたいと思うのなら我々に協力するしかないと思うけど…どうする?」


俺は立ち上がると自分達の倍はあると思う身長を見て人間はぎょっとしていた。


「なんだろう…実は俺は戦いが専門じゃないし。人間よりは力が強いだけで戦闘も全くできないよ」


するとその言葉を聞いた人間達が絶望した表情を見せる。


「でもさ、俺を召喚できたんだからもう一回誰かを召喚すればいいんじゃない?」

「…無理、この禁術は前提として大量の魔力が必要になる。召喚しようとする頃にはこの国は滅んでいるだろうね」

「…俺の魔力じゃダメ?」

「…ダメ」

「そっかぁ~」


俺は俺なりに人間を救う事が出来ないか考えた。そして考えた結果ある名案を思いついた。


「じゃあこの世界線は捨てて別の世界線に行こうか!何回も説明を受けるのは面倒だから…そうだなぁ君を眷属にするね」

「は?」


人間を持ち上げると顔に近づける。


「あ…ああ!」


力の一部を見た人間を地面に優しく起き、力が適応するかしないか見守っていた。


「さあ、壊れるか壊れず眷属になるか、どっちだ!?」


しばらくすると人間は周りをきょろきょろと見渡し、俺を見ると恍惚の表情で俺を見て来た。


「おめでとう。どうやら君は適性が高かったみたいだ!最初は力の制御が出来ず別の世界線が見えてると思うけど時期に慣れてくると思うから大丈夫だよ。じゃあ、行こうか」


手を差し伸ばすと彼女は返事をして手を取った。

遠くからこちらに向かって飛んでくる火球を見ながら、俺達は別の世界線へと飛んだ。

別の世界線にやって来た俺達、丁度今の状況を話終わるところへ戻って来れたらしい。

彼女は辺りを見回すとこちらを見て笑顔になった。俺も無い顔で笑顔を作ると魔法陣から退く。


「おい、もう一度やるぞ」


そう言うと部下と思われる人間達がお互いの顔を見合わせた。


「は?」

「一回でもギリギリだったんですよ!?この短時間に召喚を行ったら死人が出ますよ!?」

「うるさい!こっちは国が滅びかけてんだぞ!?やるぞおら!!ここで召喚が出来たら死んだとしても英雄として称えられるし気にすんな!!」


すると彼女は部下から禁書と思われる本を部下から奪い取るように手にすると、詠唱を始めた。


「連続なんて奇跡起こる筈がない…」


部下達はそう言っていたが、建物が揺れても集中して詠唱をする姿を見て彼らも無言で詠唱をやり始めた。しばらくすると人間達が一人、また一人と倒れ始める。

最後に数人になると魔法陣が光り始め、そこには自分の身長程ある大剣を抱えた大柄な騎士が立っていた。

鼻血を出していた彼女は白いローブで鼻を拭き、彼にこの国の状況を説明し始めた。

すると彼は一言


『敵はどこだ?』


と呟いた。彼女は敵は外に行けば分かると伝えると彼はものすごいスピードで外へ出て行ってしまった。


「見た感じ人間だったし、勝てるのかね?」


様子を見に行くために彼女の肩に手を置くと空間を歪め、城壁の上に現れる。

城壁に居た弓兵が突然現れた俺達に驚く。城壁を見ると至る所が崩れており、中には戦意を失ってその場にうずくまる人間も居た。


下を覗き込むとどうやら召喚された人間が丁度城壁から出るところらしく、馬に乗って単身敵に突っ込もうとしていた。

すると一人の弓兵が呟く。


「…もしかして召喚者様じゃないか!?」


その一人の弓兵の言葉に全員が彼に注目する。戦意を失っていた兵士も恐る恐る顔を上げて彼を見る。相手も突っ込んでくる敵の姿が分かったのか列を入れ替える。盾と剣を持った物が前に出るとその後ろに弓を持った敵が矢を放つ。

放たれた矢は黒い塊として彼に襲い掛かる。しかし彼は剣を素早く切り払うと矢の勢いが殺され、地面に落ちる。

そしてそのまま列に突っ込んだ彼は自分の数倍は体格がありそうな敵を盾ごと吹き飛ばした。


それを見た弓兵は歓声を上げる、自分も彼の戦いぶりを見ていると城壁から無数の人間が出ていくのが見えた。それを見た指揮官らしき人間が叫ぶ。


「弓兵!!今すぐ武器を取って城壁に並べ!!」


先程まで戦意が無かった人間が各々に武器を再び取って命令に従い動き始める。

城壁の上が慌ただしくなり始めながらも俺は彼の様子をずっと見ていた。

敵に囲まれないように工夫しながら敵と戦っている、人間にしてはかなり素晴らしい能力を持っている。

妹が見たらすぐに眷属にしたがりそうな程素晴らしい戦士だなと思っていると、先程城壁から出て行った騎兵が先に敵にぶつかり後続の歩兵達が再び敵にぶつかる。


体格が大きい敵、一体に対して数人で相手をする。それでも何十回も刺さなければ殺せないのに対して相手は薙ぎ払うだけで人間は空高く吹き飛ばせる。

だが、そんな敵を相手にしても人間達からは絶望という感情を読み取る事は出来なかった。全員が死力で敵と対峙する。

だがそんな彼らでも押され始め、城壁にどんどんと近づいてくるのが目に見えて分かる。


「さすがに無理だったかな?」


まあ、人間にしては良く戦っただろう。そう思い俺は眷属の肩に手を置いて別の世界線へ行こうとする。それを察した眷属は俺を見て言う。


「人間を信じてあげてください」


すると城壁に居た指揮官が杖を持った人間に指示を出す。その指示を受けた人間は杖を上に掲げ、その先端に火の玉を作り上げると上空に打ち上げた。

それはある程度の高さまで行くと大きな破裂音を出して消えた。


その音を聞いた兵士達は一斉に後ろに下がり始めた。例の騎士は楽しくて仕方がないのかいつの間にか馬から降りて敵をなぎ倒していた。

ある程度歩兵が下がると弓兵が敵に向かって矢を放つ。敵の装備は軽装だったので矢が刺さる刺さる。もし矢を突破したとしても、迎撃の準備が完璧にできている兵士達によって殺されて行く。

しばらくすると敵側から笛のような音が聞こえ、その音を聞いた敵は一目散に逃げていく。

それを見た兵士達は大きな歓声を上げた、お互いに抱き合う兵士や緊張が無くなり地面に倒れる兵士、涙を流しながら喜ぶ兵士も居た。


あの騎士は敵の死体で座り、休憩を取っているように見えた。

俺は空間を歪め、彼の所に向かうと返り血で染まった騎士はこちらに気付いて声をかけて来た。


「楽しいな…俺はデカい戦争が好きだ、決闘も好きだ。だが、勝ち続けていたらいつの間にか俺に挑もうとするやつは全く居なくなった。金も名誉も地位も女も全て手に入れた俺に残されたものは戦いだった。その戦いが無くなり、空を見上げのんびりしていた時に門が現れた。その門は俺を呼んでいるようで入ったらこの世界に来たって訳だ…ありがとうな、この世界に呼んでくれて」


「まあ、俺も呼ばれた方だったが…君が楽しんでくれたのならよかった。さあ、帰ろう」


俺は彼の手を取ると城壁前に飛んだ。


「人間はこういうのが好きと聞いたことがあってね。さあ行っておいで」


城壁の前にはこちらを見る兵士達。騎士が城壁の前に歩き始めると一つ、また一つ歓声が上がり彼が壁の向こうに行くと大地を揺るがすほどの歓声になっていた。


「召喚者様!!召喚者様!!」

「万歳!!召喚者様万歳!!」

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