イケメン男子は分からない
朝起きると窓からは朝日が俺の顔に照りつけていた。
相変わらず朝は忌々しいし、仕事が始まるし、良いことないな…何で朝って起きなきゃいけないんでしょう?
俺は思考を巡らせ起床フェーズから二度寝フェーズへ移行する。
すると、ドア外側の階段からドタドタ音が聞こえるではないか。
……俺は寝るぞ。絶対寝るぞ。地球が5回滅んでも寝るぞ。
と、思ったものの直ぐ寝ることは出来ない体質なのでドタドタ聞こえる音の正体がドアを開くまであと何秒かかるか予想してみよう。俺の予想はあと2秒だと思う。
はい、いーち…にー…さーん……あれ?予想が外れた……だと!?いや!今は準備をしているんだ。我が妹は『どうやって起こそう?お腹ダイブは前にやったから……お腹ブロー?』とか考えているに違いない!……お腹ブローやだなぁ…
そんなことを考えていると部屋のドアが開かれる。
「ボンジョルノ、お兄」
「グッモロン、イオちゃん」
「む、私の朝の外国語おはようを返すとは…お兄、やるね」
「昨日のネットニュースを見ておいて良かったと心から思ったね。さすがスウェーデン語」
スウェーデン語に感謝。今日学校行ったらこの挨拶しよう。あっでも俺おはようしか知らないや。
イオちゃんの外国語おはようを華麗に返した俺は朝食をとるためにリビングに行くともう食卓に料理が並んではあーりませんか。さすが妹。俺とは真逆。
俺はテーブルに座り、白米とおかずを交互に食べながら、テレビを見る。ちょうどテレビには昨日話したクソイケメン、五条翔の両親が映っていた。
教員情報にあった父親だろう。議員とか言ってたな…演説とか俺には出来んわ。
朝食を食べ終わった頃、まだ出勤には時間があるためモモノを撫でながら過ごしていると、イオちゃんは素早く支度をしていた。
「まだ時間あるけど今日何かあるん?」
「今日は日直なのです。だから早く行くのです」
日直なぁ~。うちの学校日直の仕事多いからなぁ。
しかし、教師のほうが多いんだよ。もちろん適当には出来ないからしっかりやらないといけないけどな……俺適当にやってるけど注意されたことないからね。優秀な証拠だ。たまに他の先生から呆れ顔されることが多くなったけど関係ないな。うん。
自己納得しているとイオちゃんはもういなかった。もう行ったの早くない?俺ちゃん嫌われた?反抗期なの?
まぁいいや、俺も出勤しよう。そう思い、椅子から腰をあげる。身支度をし、玄関に行くとモモノがにゃんにゃん鳴いていた。そういえば、モモノが鳴くと悪い事が起こりやすかったなぁ。と思いながら俺は玄関を出た。
学校へ通勤中坂を上りながら疲れている自分を見て歳って辛いなぁと思う孤識氏27歳。
少し休憩しようと思っていると、モモノの鳴き声予言が当たった。最悪だな。
「孤識先生。おはようございます。」
超イケメンオーラを漂わした五条翔が爽やかスマイルで話しかけてきた。
俺だけが知ってるルートだと思ったのに…
「………おはよう」
めんどくさいという意味を込めた間がある挨拶にも五条はそのままスルーし続けて言う。
「ところで、先生は友情ってご存じですか?」
なんだこの野郎…ケンカ売ってんのか?
それとも知らないで聞いてくるただのド天然か?
俺は少しイラッとしながら答える。
「知るか。少なくともそんな水に浸したら破ける薄い紙みたいな情は知らない。」
俺の返答に五条はお得意な笑顔で続ける。
「習字紙ですか…なるほど」
一人納得したように頷くと
「先生の考え方は面白いですね」
……こいつは苦手だ。俺の先輩を思い出す。独特の言い回し、何かを知ったような顔、ひどく似ている。
「そういえば、知ってますか?その水に浸しても耐える紙があるのを。」
「………何が言いたい?」
俺が聞き返すと五条は
「どちらでもありますよ。委員会のことも、神埼さんのことも」
その言葉からはいつもの五条とは違う雰囲気を感じた。
そして、その言葉の意味も分かってしまう。モモノの予言マジで効果あるな。黒猫と同じくらいだわ~。
そう思っていると後ろから同じクラスの柴野剛也が声をかける。
「翔…と、えーと、孤識先生おはようございます!」
今俺の名前一瞬忘れたな、こいつ。
まぁいいけど。俺、窓際教師だし、いいもん!
……やっぱキメぇ……
自分の思想で傷ついていると
「それでは、先生。また。」
もう会いたくねぇ、丁寧に地雷回避していくイケメンオレ、キライ。
はぁ……また問題が増えたよ。イオちゃん助けて。
職員室に着くと神埼のクラス担任が近寄ってきた。
「孤識先生。少しいいかな?」
少しいいかな…じゃないんだよなぁ。それって断れないように出来てる言葉の一種ですからね?
断ったら気まずくなって頼めないようになるルート分岐ですからね?
心でツッコミながら俺は「いいですよ」と了承する。
「すいませんが今日は神埼休みでね。これを五条君に渡して欲しいのですよ」
「はぁ…何故僕に?」
「昨日、五条君と話しているのを見ましてね。それでお願いできないかと」
……この人ただ話していたからで渡し物頼むのか。どっかのモブ三人衆が一人にイジメしても『じゃれてましたー』で見逃す人かよ。
断ると面倒だし、受けるかぁ。
「分かりました。渡しときます。」
そう言うと「じゃあ、お願いね」と残し去っていった。
要は面倒事押し付けて帰りてぇだけじゃねぇか、やだわー社会ってやだわー。
…でも珍しいな。神埼が休むなんて、まぁ休みたいときもあるよな。ちなみに俺は年中休みたい。
昼休み。昼食を買って食べようとしたとき、ふと、先の頼み事を思い出す。
行きたくないが、放課後俺が五条を探していたなんて事が広がったら俺の生活に支障が出る。
という訳で2ー4の教室に行くと、松原先生から聞いた委員会グループが教室にいた。
うわぁ…あの中に入るのやだよ…俺。
陽キャの塊だよ。朝の親友ポジションの柴野と…残りの二人は………いつ見たっけ?名前が覚え出せないなぁ~。
そして二人のうちの一人の男子生徒が一瞬だけ五条を睨んだ気がしたんだか…気のせいか。
ん?そういえばこの4人のことどこで知ったんだっけ?松原先生の出席簿からだよな…あっ…松原先生担任じゃん。松原先生に渡せば良かったじゃん。
俺が渡さないでいい方法を思いついたところで俺は松原先生を探しに行った。




