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監主と拘束服

この物語は架空世界のものです

人間の瞳と言うのは急な光にあうと瞳孔が収縮する。


そんな理由で、僕の視界は真っ白だった。当然だ。何年も日の光を浴びていない人間なら、少しの光でも過剰に反応する。


この原因が魔光…魔法で起こした光なのか、ランプや蝋燭なのか、−…日光、なのか…僕には解らないけれど、とにかく僕には明るすぎるようだった。


涙が出る。


拘束衣のままでは眼を拭うこともできず、僕はそのまま声の主へと顔を向けた。


「誰ですか?」


眼を瞑り、涙を流したまま僕は問うた。恥ずかしいとは思わない。囚人なんてこんなものだ。


「チェクム監獄総監主のヒトヤ・ロウだ。最初にここについての説明をした者だよ。…って覚えてないか。6年も昔だからな」


6年!僕が投獄されてからまだそれだけしか(・・・・・・)経っていないのか。


何もすることがないと時間は長くなるというが、まさかこれ程とは。


「お前ももう16歳か。早いものだな」


僕とは正反対な考え。普通なら6年と聞けばこんな反応を示すのだろう。


に、しても相変わらず囚人に向かってやけに親しげに話してくる。


最初に来たときもこの調子で、当時十歳だった僕は驚いたものだ。


少しおかしくないとこの仕事は勤まらないんだな、と失礼なことを考えていると、ようやく光に眼が慣れたのか、ぼんやりと景色が見えてきた。


ここは監主の部屋らしい。大きな本棚と奇妙な置物が部屋の隅に鎮座していて、部屋の中心に書類に埋もれた机が置いてある。その後ろに、椅子にもたれたロウさんがこちらを見ている。


赤毛をばさばさと立て笑っている姿はとても監獄の監主のは見えない。せいぜい町の気のいいチンピラ程度だ。


だがバカにすることなかれ。チェルカ監獄は国で一番大きく、もっとも重大な罪を犯したものだけが集められる中央監獄。


上級魔法習得、対魔術用体術、剣術などの厳しい試験を乗り越え監主にまで上り詰めたのだからただ者ではない。


今の僕など片手で鎮圧されてしまうだろう。


そんなことを考えているとロウさんが話しかけてきた。


「あいかわらず死んだような目してんな、美人が台無しだぞ」


「いや、僕男なのでその台詞はどうかと。それに目の生き生きした囚人はあまりお目にかかれないんじゃないですかね・・・」


久しぶりの会話がこれか。


ここで僕の容姿に触れてみよう


僕は七年前黒髪を肩で切りそろえたような髪に黒い瞳だった。となると今もそうだろう。あ、部屋の隅に鏡が置いてある。


七年ぶりに鏡で自分の姿を確認する。


変わらない黒髪黒目。日に当たらなかった肌は青白く、七年物の髪とあいまって幽鬼のようだ。


・・・言われてみれば女に見えなくも無い・・・というか女・・・?いや、髪のせいだろう。そうに違いない。


少し現実逃避を交えつつ視線をロウさんに戻す。


「ところで今日は何故ここに呼んだんですか?」


「・・・・・・」


露骨に目をそらされてしまった。


「あのー・・・?」


「あ・・・えっと、な」


「もしかしてまた実験台ですか?いいですよ。今日は魔術実験ですか?それとも投薬?」


「うーん・・・まあ実験といえば実験なんだが」


やけに歯切れが悪い。なんだろうか。


「いや、来たほうが早い。行こうか」


どこへ、と言う前にロウさんは歩き出していたので、僕はあわてて着いて行った。

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