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すべて想いどおり  作者: 彩
7/22



「…え?」



あまりにも突然な、そしてあまりにも王公貴族という立場を無視した告白に、私の頭は一瞬で真っ白になった。



「もちろん!私はフォレセント王国の未来を邪魔するつもりなんてないわ!我が国から婚約を申し入れて横取りしたりするつもりもない!でも…でも、ローズ嬢にレオニード様とは他にお慕いしている方がいらっしゃるのなら…ただ私は、今だけは、全ての立場などを投げ出して、姉妹として話を聞いて欲しいだけなのです…」




最初は強く言葉を発しながら、だんだんと弱くなっていくその姿に、全ての立場などを投げ出してと言えるその想いに、同じ歳でありながらどこか幼さと強さを感じた。



「こんなこと言うつもりなど、ありませんでしたわ。本当よ。でも、ローズ嬢の心の中に他の人があるのならば、私の気持ちだけでも知っていて貰いたいと思ったの…」



いよいよ思考が追い付かない真っ白な頭に息苦しくなってきたとき、フィリアーネ様が穏やかな微笑みを称えながら、静かに語り始めた。



「存じ上げておりましたわ、アリス様。そして、ローズの気持ちも私は分かっているつもりよ。まぁ、ローズは自分のことをイマイチ理解していないようだけれど。」



「「───えっ??」」



「ローズ、貴女さっきから、え?しか言っていないわ。」



ふふふと笑いながらフィリアーネ様に指摘され、はっとした。



「大変なご無礼を…申し訳ございません。」



「良いのよ。それにアリス様、その様に心配なさらなくても、貴女の気持ちに気づいている者はきっと私以外に居ないわ。ローズだって気づいていなかったのだし。」



「…いつからご存知だったのでしょうか?」



「貴女が初めて我が国にいらした時からかしら?そして、その頃にはローズの気持ちも気づいていたわ。」



「私の気持ち?」



「ええ、王妃となりレオを支え国と国民を導きたい。アレクと一緒に。」



「ええ、そうですわ。ずっとそう心に誓って参りました。」



「ふふ、貴女って本当に賢いのに勿体ないわ…アリス様はもうお分かりなったでしょ?ローズの気持ちが。」



「…ええ、きっと。きっと、もっと前から気づいていましたけれど、今日確信致しましたわ。」



「どういうことでしょう…?アリス様…」



「ローズ様はオストン王国の王子殿下に恋をしたのではないと言うことですわ。」



「はぁ…まぁいいわローズ。でも、そうね。先日のパーティーで貴女がオストン王国の王子殿下に恋をしたと思った者は少なくないかも知れないわね。ところでローズ、貴女、レオの想い人を知っているのではなくて?」



「っっ!?」



さっきまでアリスティア様と私の気持ちについての話題だったはずなのに、特に私の気持ちについてはよく分からない解釈だったのに、突然レオの話になり、私は思わず息を飲んだ。

アリスティア様も、フィリアーネ様の予想もつかない発言に大変驚いた様子で私の方へ向き直った。



「フィリアーネ様は何でもお見通しなのですね…アリス様のことも、レオのことも、私が分からない私の気持ちとやらのことも…」



「そうね、ローズ…私はね、どうしても叶えたい夢があるの。そのために、この国の王女としてそれなりに努力してきたわ。それでも、こういう立場では自分の意思と関係のないところで、自分の将来が決まってしまうの…二人にもわかるでしょう?」



フィリアーネ様の言わんとすることは、痛いほど分かる。それはアリスティア様も当然同じで、それどころか二人は王女という私よりもさらに上の立場として通じるところも多いのだろう、アリスティア様は肯定の代わりに沈黙して俯いた。



「…フィリアーネ様の夢とはなんですか?もし、差し支えなければ、その…姉妹としてお伺いしたいです。」



「可愛いわねローズ、そう。私の願いはまさにそれよ。」



「それ?」



「ええ、言い換えればね。お茶会の始まりにも私言ったでしょう?貴女たちと姉妹になる、これが私の夢よ。」



「「姉妹に?」」



アリスティア様やレオ、私の気持ちには核心を突いてくるくせに、ご自分の『叶えたい夢』については核心に触れさせない。さすが王女様だわ──。



「そんな顔で物思いに更けるなんて、ローズのレッスンもまだまだね。」



くすくすと笑うフィリアーネ様は、お茶会の始まりの時のような悪戯な笑顔を浮かべていた。私は、はっと表情を取り繕うとアリスティア様の方へ向き直った。



「アリス様、その…アリス様のお気持ちを初めてお聞きして、私正直少し動揺しております。いえ、少しではなくとても。ただ、私も全ての立場などを投げ出してしまえるのならば、アリス様を応援して差し上げたいと思うと思います…ただ私は……それに私の立場でレオの想い人について、アリス様に語ることは出来ません。やはり私は貴族の、公爵家の娘として育ちました。この立場を自ら捨てるという選択ができないのです。申し訳ございません…」



「いいえ、謝らないでローズ嬢。私が悪かったのですから…あの、今日のことはこれまでにして、これからも友人としてお付き合いしてくれるかしら?」



「ええ、もちろんアリス様がよろしければ、ぜひ!」



「私の将来の妹たちは本当に可愛いわね!アリス様、ローズ、私にひとつ考えがあるのだけれど…」



フィリアーネ様の提案、それはアリスティア様も私も言葉を失うほどの名案であり妙案だった。



──── もし、フィリアーネ様の想いどおりに事が動いたとしたならば…私は初めて国の未来とは切り離して自分の将来を想い描き、興奮と不安で、お茶会の日の夜はなかなか寝付く事が出来なかった。




-----



──── この頃からかしら、歯車が狂い出したのは…

いいえ、歯車は本当に狂ったのかしら…



ゴクン

強制的に水が喉へ流し込まれる。



─── 最後に水分を摂ったのはいつかしら?


もっと欲しい…と手を伸ばした途端、私はまた痛くも甘い疼きの中へ引きずり込まれた。





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