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すべて想いどおり  作者: 彩
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王城でのパーティーから2日後、私は正式に招待を受けお茶会に出席するため、再び王城へ出向いていた。

先日の会話から、私はてっきりアリスティア様からご招待頂くものだと思っていたが、今回のお茶会の主催者はアリスティア様ではなく、レオの姉でフォレセント王国第一王女のフィリアーネ様だった。

お茶会の会場に着くと、既にフィリアーネ様とアリスティア様のお姿があった。




「ご機嫌麗しゅうございます、フィリアーネ様、アリスティア様。お待たせしてしまい、大変申し訳ありません。」



「ごきげんよう、ローズ。今日は3人だけのお茶会なの。堅苦しいのはなしよ。まして貴女は将来の義妹、どうかお姉様と呼んでちょうだい?」



どこか悪戯っぽい笑顔を浮かべたフィリアーネ様が、私に席に座るように促しながらそうおっしゃった。

その笑顔は、さすが王族と言うべきか優雅さの裏側に確固たる意思を感じさせ、お美しい顔立ちも伴って、恐怖すら感じさせるものだった。



「お姉様……」



「ふふふ、義姉妹仲が良くて羨ましいですわ。是非、私も仲間に入れて頂きたいです。」



アリスティア様がふわりと笑い、フィリアーネ様と私を交互に見ながらとんでもないことを仰った。



「あら、もちろんアリスティア様にも私の義妹になって頂きたくてよ。」



お茶会が始まるや否や、私たちが義姉妹になるかのような冗談のような本気のような会話に、私は静かに微笑みながら内心焦っていた。



──── フィリアーネ様とアリスティア様が姉妹に?ということは、フィリアーネ様とファルファーレ様がご婚約なさるのかしら?でも、レオからは何も聞かされてないわ…



「ふふ、そんなに緊張しなくてもただのいつも通りのお茶会よローズ。」



「そうよ、ローズ嬢。ところでローズ嬢、私貴女に聞きたいことがあるの。先日のパーティーの件なのだけれど…」



──── 先日のパーティー…『春の宝石』アカリ・サンドラ伯爵令嬢のことかしら…やっぱり、あの時の説明じゃご納得いただけなかったのね…



「…アカリ・サンドラ伯爵令嬢のことでしょうか?」



確認のため尋ねてみると、予想外にもアリスティア様は首を横に振った。



「いいえ、違うわ。そうではなくて…いえ、違うわけではないのだけれど…」



「?」



よく分からないから返答に、答えに困っているとフィリアーネ様がはぁと溜め息をついた。



「ローズ、アリス様はレオと貴女が何故一緒に居なかったのかをお聞きになりたいのよ。レオどころか、アレクもアカリ嬢と一緒だったのでしょう?それにローズ、貴女オストン王国の王子殿下とダンスを踊っていたそうじゃない!私がちょっと休憩室に行っている間に!あー私も見たかったわ!」



「ふふふ、あれはなかなか見物でしたわお姉様。お見のがしになられたことは誠に勿体ない。」



──── え?見物?そんなに私たちのダンス下手だったかしら?しかもアリスティア様、さらりとお姉様呼び…



「あの、私のダンスにおかしなところでも?もしかして、王太子殿下の婚約者でありながら他国の王子とあの曲を踊るのはやはり問題がありましたでしょうか…?」



私は困惑しながらお二人に尋ねた。



「いいえ、オストン王国とは最近友好関係を築いたばかりだもの。彼の国の王子とフォレセント王国の王家に所縁ある貴女がダンスをしても何ら問題はないわ。」



「ええ、それにお二人のダンス姿とても素敵でしたわ。初めてとは思えないほど息もぴったりで見つめ合い踊る姿に誰もが溜め息をついたほどでしたわよ。」



「見つめ合ってなんて!…では何が見物だったのでしょう?」



「見物だったのは、貴女達ではなく他の者の反応よローズ。」



フィリアーネ様は、堪えられないと言うようにふふっと笑いながら仰った。



─── 他の物の反応?ますます意味が分からないわ。やっぱり、立場的に不味かったってことかしら?



よく分からないとうーん、と考えていると、突然アリスティア様から爆弾を投げ掛けられた。



「ローズ嬢は、その…オストン王国の王子殿下に恋をされたのですか?」



「え?」



あまりに予想外の質問に、内容を理解するのにしばらくかかってしまった。



「いえ、違うの!分かっているわ!私のような他国の者が、それもある程度立場のある者が、こんなことを軽々しく口に出してはいけないわ。でも…」



「アリス様…私はフォレセント王国王太子殿下の婚約者です。幼い頃から王となるレオを王妃として支え、この国と国民を導いて行くとことを誓い努力して参りました。彼とならそれが出来ると…その気持ちに変わりはありませんし、これからも変わることはありません。」



いい淀むアリスティア様を遮り、自分の気持ちをはっきりと告げた。

あの時感じた、レオとアレクと3人で…という気持ちに変わりはないし、あの時理解したお母様の言葉…

『側にいて支え合う時間を重ねれば、おのずと愛情が芽生えるものよ。』

その愛情は今も私の心のなかに暖かに灯っている。

それは、最近私を遠巻きにするレオとアレクの態度を目の当たりにしても変わることはない。



「私、先日お兄様に『横恋慕はだめよ』と言いました。」



「はい?ええ、そう仰っていましたわ?」



私の宣言のあとに、突然脈絡のないお話をされるアリスティア様を不思議に思い表情から読み取ろうとアリスティア様のお顔を覗き込みながら返事を返した。

アリスティア様は不安そうな表情で俯いていらっしゃったが、なにかを決意したように顔を上げ、私と目があった瞬間少し顔をしかめたかと思うと、直ぐに泣きそうな顔になり、とても小さな声で囁かれた。




「ごめんなさい、ローズ嬢…私…




…私……レオニード様をお慕い申し上げております。」








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